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2019年1月29日 (火)

近江の旅 (二)

 目的地について書く前に,ツアー名「櫟野寺33年に一度の大開帳と白洲正子が愛した近江の仏像 2日間」にある白洲正子について少し.
 白洲正子は著書の数だけは多い随筆家である.その作品の特徴を Wikipedia【白洲正子】は次のように書いている.
 
白洲の作風は用語の定義など微妙な問題は曖昧にぼかす、論理的な根拠は示さずに直感で自己流の解釈を示す、厳密な解釈は避け結論は出さずに有耶無耶に終わるなど、あくまで評論家の作風であり学者の筆法とは異なる。
 
 この評言は的を射ている.言い換えると,白洲正子という女は知識に欠ける上に,「用語の定義」などを調べて書くという誠実さがない.直感で自己流の解釈=ただの思い付き,厳密な解釈は避ける=論理性欠如,結論は出さずに有耶無耶に終わる=自分が何を書いているか途中でわからなくなってしまう,のである.思いつきでものを書く人は他にもいるが,白洲正子の場合は嘘を平気で書くので困る.近江の仏像について白洲正子は色々と虚言を弄していて,これを信じている人がいる.その嘘の悪質さに関しては,彼女の随筆集『近江山河抄』を例にして,別稿で後述する.
 Wikipedia には《小林秀雄の薫陶を受け 》たと書いてあるが,直感で自己流の解釈をする点で小林秀雄に似ている.いわば劣化版の小林秀雄である.しかるに一部に熱心なファンのいることが情けない.
 
[観音寺]
 ツアー一行が最初に訪れたのは観音寺である.山号は伊富貴山で本尊は十一面千手観音である.観音寺は通称で,正式名は観音護国寺という. 
 この寺の本尊はさして有名というわけでもないが,脇に鎮座している伝教大師座像のほうが知られているかも。そしてその像よりも,石田三成の逸話 (↓) で有名だ.

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 三成水汲みの井戸は寺の惣門を入って境内の左側の隅っこにあるので,うっかりすると見落とすかも知れない.井戸を後ろにして石段を進むと重文の本堂と鐘楼がある.創建は古いが,現在の本堂などは江戸時代に再建されたものだという.
 
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 上の写真は本堂.屋根が傾いているように見えるが,写真の写り具合でそのように見えるのではなく,実際に傾いている.木造本堂はかなり傷みが進んでおり,後世に残ることは難しいかも知れない.三成の「三碗の才」はフィクションだという説があり,たぶんそうだろうなあと私は思うが,しかし観音寺が三成所縁の寺であることは確かだろうから,残念ではある.
 
[石道寺]
 私たちのバスは米原市から北上して長浜市に入り,石道寺の近くの駐車場に着いた.寺には駐車場はない.バスを降りて人家もない里の小径を歩いて行く.木々の葉が色づくにはまだ少し早いようだったが,それでも道端には秋の花が微かな風に揺れていた.
 
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 低い山の麓,小高くなったところに己高山石道寺と彫った石柱が立ち,その向こうに無住の石道寺はあった.寺とはいうものの大き目のお堂との印象だ.ここから紅葉の名所の鶏足寺に回るのが,近江の寺院巡り一つのコースとの話であったが,今回のツアーでは時間がとれなくてそれは省略.
 
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 石道寺を有名にしているのは,本尊の木造十一面観音立像である.一般の参詣客は撮影禁止なので私は写真を持っていないが,その画像があるリンク先を御覧頂きたい.小さな画像からでも,この観音さまの優しさがこちらに伝わってくるようだ.
 今の若い人は読まないだろうが,私が中学から高校くらいの頃,井上靖は読者層が全世代にわたる人気作家だった.大学入試の現代文にもよく出題されたから,いわゆる「敦煌」「楼蘭」などの西域小説や長編「あすなろ物語」,自伝的作品「しろばんば」あたりは高校生の必読書だった.その井上靖の「星と祭」は昭和四十六年の新聞連載小説であったが,その中でこのお寺の観音様は《観音さまと言うより、美人が一人立っている 》と描かれた.
 
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「星と祭」 は長らく絶版になっているため,昨年末に長浜市の有志の人々が復刊プロジェクトを立ち上げたと報道された.まあしかし,古書は豊富に流通しているし,Kindle版もあるので,この作品を読むのには復刊を待つ必要はなかろう.

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