« 林先生がまたまた大嘘を | トップページ | 「もち」と「団子」 »

2018年12月23日 (日)

駅弁の地方区 vs 全国区

 waiwai さんのブログに郡山駅の駅弁「海苔のりべん」の記事があった.   
 この弁当は,テレビ番組で紹介されたことから人気が沸騰し,東京駅構内の駅弁屋「祭」で,一時は入荷即完売の状態であったらしい.ブログの掲載写真を見ると,いかにも素朴な弁当である.
 首都圏の業者なら,米飯部分をもっと小さくし,おかずは,仕切りを増やして玉子焼き,焼き魚,煮物などいくつかに区分して詰めるのではなかろうか.海苔のりべんはそれを一ヶ所に詰め込んでいるところが,何気なく東北の心意気を表して潔い.ヾ(--;) 強引だな.
 そういうわけで,私は未食である「海苔のりべん」を唐突に食べてみたくなり,電気工作の部品を秋葉原で調達したいということもあり,昨日,東京駅に出かけた.駅弁屋「祭」到着は午前十時前.
 ところが駅弁屋「祭」の駅弁陳列台には,「先月末で海苔のりべんは販売終了いたしました」と書かれたポップが置かれていた.秋シーズンが終わって,冬の商品入れ替えで海苔のりべんは定番落ちしたらしい.駅弁屋「祭」で販売されている全国区有名駅弁の中には不動のロングセラーもあるが,ローカル駅弁の競争は激しいのだろう.海苔のりべんは,これから郡山駅や福島県内のローカル駅でしか買って食べることのできないレアものになるわけであるが,もちろんそれが駅弁本来の姿であるわけで,ネットで「海苔弁当の最高峰」とまでいわれた海苔のりべんの健闘を祈る.
 とはいえ終売にガッカリしたのは確かで,もうひと月早く来ればよかったなあ.そう思ったが,何も買わずに帰るのは業腹なので,店内満杯の客のあいだを泳ぎながら,売り場をぐるっと回ってみた.
 街中の持ち帰り弁当と駅弁の違いはなんだろう.駅弁の やらずぶったくり コスパの悪さは歴然としている.駅弁は,販売コストと 法外な 必要な利益を確保するために,各地のブランド食材のイメージをフル活用しているわけだが,例えば「○○牛」をうたってはいるが,実際に食べてみればわかるように,料理屋の実店舗で食べることのできる銘柄肉に比較すると,どうしようもない品質なのである.
 品質よりもブランドイメージに頼る駅弁は,どうしても肉に偏重せざるを得ない.そして中心価格帯を千円とする,見た目の茶色い弁当になってしまう.
 持ち帰り弁当はといえば,こちらは主たる購入者が若い人だから,胃袋満足度が高い揚げ物をメインに据えることになり,これも同様に茶色い弁当になる.
 以上のことはデータなしで書いているのでただの私見だが,駅弁の銘柄肉 (地鶏を含む) vs 持ち帰り弁当の揚げ物という構図はそれほど的を外していないように思う.
 
 さて,駅弁屋「祭」の棚の中で,高価格帯の弁当の一つに「大人の休日弁当」がある.これはJR東日本の「大人の休日倶楽部」ブランドで,日本ばし大増 が製造販売しているものだ.日本ばし大増は,JR東日本の飲食事業子会社で,大昔は日本食堂といった.
 で,手に入れ損ねた海苔のりべんの代替に,これを買って昼飯に食べてみることにした.価格は海苔のりべんの二倍で,盛り付けは少しばかり上品にしてあるところが差異といえばいえる.
 
20181222a
 
20181222b
20181223d
 
 画像だけでは 何が詰められているか皆目わからないので,弁当に同封の品書きをスキャンして上に示す.
 これが料理屋さんの品書きならばまことに結構な内容なのであるが,しかし実際にはどの料理も小さな一口大 (それぞれの大きさは,金柑や小粒の黒豆からお察し頂きたい) のもので,羊頭狗肉も甚だしいと言わざるを得ない.
 特にどうしようもない品が一の重の「はじかみ」である.おそらくこれは,生産者に特注して作ったものだろう.露地でもハウスでも,どうやったらこんなに細い「はじかみ」を作ることができるのだろう.普通の太さの「はじかみ」ではなぜいけないのか.矮化するためにプランターで栽培 (「はじかみ」専門生産者のサイトによると,土ではなく川砂に種生姜を植えるといいのだそうだ) するのか水耕栽培するのかは知らぬが,いずれにせよ私は,グリコのプリッツよりも細い「はじかみ」を生まれて初めて口にした.w
 次に酷いのは,同じく一の重の「焼あん肝」だ.生臭くてまずい,の一言である.作ったやつには,自分で味見してみろ言いたい.
 一の重では,「鰤バター醤油焼」がそこら辺の弁当屋の幕の内弁当レベルに到達していたが,あとは,有頭海老煮と揚げ物三品は,いずれもバッサバサであった.「玉子焼」はいかにも業務用の製品であるが,コンビニ弁当の水準には達していた.w
 二の重では「煮物~芋煮風~」に使われた牛バラクズ肉が酷かった.こうしてみると,酷くないものを挙げるのが難しい.w
 イクラを飾った白飯は及第点だが,量が二口しかない.エネルギーの表示はないが,弁当全体でも,たぶんかなり低く抑えられている.その意味では「大人の休日弁当 ~冬~」の名にふさわしい 寒々とした 大人の一食であるといえよう.
 実は,この「大人の休日弁当」の貧相な内容を,私は以前から承知していた.なぜそんなものを買ったのかと問われれば,このブログで弁当現物の画像を示し,ディスるためだと申し上げたい.ヾ(--;)
 下に原材料表示を示すが,この弁当と同じ二千円を払うなら,例えば東海道線大船駅界隈の飯屋で,食品添加物不使用の豪勢な「焼き魚のランチコース」を食べることができるのだ.それと比較すれば, この駅弁の やらずぶったくり コスパの悪さは,駅弁屋「祭」の中で群を抜いている.
 冬の旅では,うまいものを食いたいものだ.これから東北新幹線に乗って一人旅にでようという御同輩には,「大人の休日弁当 ~冬~」を東京駅で買われぬよう衷心からアドバイス申し上げたい.
 
20181223c

 
 ところで,角ハイボールを二本買って新幹線車中の人となるのであれば,東海道線大船駅の弁当屋である大船軒 (JR東日本系列業者) が「祭」で販売している「特製おつまみ弁当 祭」はどうなんだろうと,以前から気になっていたので,これも買ってみた.夕飯用である.
 
20181222d
 
 中身は下の画像.
 
20181222e
 
 弁当の内容を下に示す.
20181223a_4
 原材料表示も示す.
 
20181223b
 
 私は食品添加物を容認する者であるが,それは必要最低限の保存性向上に資する添加物に限る.だが上の原材料表示に書かれた添加物には,見た目上の付加価値など,消費者の利益ではなく製造者側の論理で使用されているものが多い.
 この原材料表示を見て私は,車窓に流れ去る景色を心に映しながら飲むハイボールの酒肴には,奇をてらわずにナッツくらいがいいのかも知れないと思ったことである.
 
20181223e

|

« 林先生がまたまた大嘘を | トップページ | 「もち」と「団子」 »

食品の話題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 駅弁の地方区 vs 全国区:

« 林先生がまたまた大嘘を | トップページ | 「もち」と「団子」 »