お箸の国の人なのに (二)
岩村暢子さんの著書『残念和食にもワケがある 写真で見るニッポンの食卓の今』に書かれているが,今の若い人たちは丼物が好きだそうである.
ここでいう丼は,昔からある天丼,親子丼,玉子丼,カツ丼などではなく,白飯の上におかずを載せたもの全般を指す.
その一例に「納豆丼」がある.これがどんなものかというと,丼に飯を盛り,その上に普通に掻きまわして調味した納豆を,飯が見えないくらいにどっさり載せる.普通の人が納豆を食べるときは,飯の上に一パックの納豆全部を載せたりはせず,御飯の白いところが見えるくらいの量の納豆を載せ,一口ずつ箸先に納豆と飯を載せて口に運ぶが,そうではなく「納豆丼」にすれば,丼の縁に口をつけて,がつがつ掻っ込んでもいいような気分になるのだろう.
この方法を用いれば,何でも丼にすることができる.冷蔵庫に入っているウインナソーセージを袋から出し,丼飯の上にどっさり載せれば「ウインナ丼」 (これは昨日,私が考案した) のできあがりという具合である.
「ウインナ丼」はあんまりだと自分でも思うが,それよりほんの少しマシな程度の「丼物」はクックパッドにたくさんあり,「のっけ丼」と呼ばれる一つのジャンルを形成している.
例えば「かぼちゃの葉っぱののっけ丼」には《かぼちゃの葉っぱと目玉焼きで簡単な一食になります 》とキャプションが付いている.
上の「かぼちゃの葉っぱののっけ丼 」はまだ料理というものの痕跡を残しているが,「温泉卵のキャベツのっけもり丼!」は,昔からの丼物の概念を木端微塵に粉砕する快作である.
作り方は《温泉卵をかってきて、わり、キャベツを刻んでのせ!温泉卵をのせ、ミニトマトをのせたら、できあがり! 》で,コツ・ポイントは《なしです! 》だ.もしもこれにコツがあったら,私は驚いて腰を抜かすだろう.
そして「このレシピの生い立ち」は《頭がいたいので、これで簡単にしました! 》である.w
なぜ女性たちがこの手の「のっけ丼」を一所懸命に考案するかというと,《頭がいたいので、これで簡単に 》するという理由だけでなく,箸をうまく使えなくても,丼の縁に口をつけて掻っ込んで食えるからだと私は睨んでいる.そしてこの「のっけ丼症候群」が更に亢進すると,「のっけ丼」をスプーンで食うことになる.そうすれば子育て中のママは,自分はもちろん,箸がちゃんと使えない幼稚園児や小学生の我が子たちにスプーンで食事をさせることができる.食卓上や床のあちこちに食べ物をこぼされてイライラせずに済むのだ.
こうして箸を持てない世代が再生産されていくのである.w
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