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2018年10月 4日 (木)

つきじ治作流作法 (更新)

 昨日の話の続き.
 私のような年寄り世代の者は,子どもの頃に「敷居を踏んではいけない」と躾けられた.
 昔は日本人のあいだにそのようなコンセンサスができていたのであるし,今でも茶道や華道の習い事をする人たちはその種の作法を身に着けていると思うが,ワンルームマンションとか,あるいは和室のないマンションに住んでいる若い人たちは,そもそも「敷居を踏んではいけない」なんて作法は知らないかも知れない.

 この「敷居を踏んではいけない」は,古くからある作法である.小笠原流礼法三十一世宗家の小笠原清忠氏によると,これは木造家屋の構造を大切にするということが真意であるという.(《畳の縁は本当に踏んではいけないのか?》) 
 引用した文中で小笠原清忠氏が説く「家屋の構造云々」という説の当否はともかくとして,この作法「敷居を踏んではいけない」を心得ておかないと,室内へ進む動作が美しくなく,日本家屋の他家を訪問した際に恥をかくことになるのは間違いない.

 それでついでのことに,玄関の作法を解説する動画があるかと思って調べてみた.
 すると東京では有名な高級料亭「つきじ治作」が《やさしいお作法 1 靴をぬぐとき 》と《やさしいお作法 2 敷居を踏まない 》と題した動画を公開していることがわかった.「つきじ治作」は,先日放送が終了したテレビ東京『和風総本家』が十年にわたって番組収録を行ったことで知られる料亭である.(近く『二代目 和風総本家』が放送スタートする)

 まず《やさしいお作法 2 敷居を踏まない》に下の場面がある.(これは引用のために YouTube の画面をハードコピーしてトリミングした画像であり,ダウンロードした動画データの違法な加工はしていない)
 
20181004e

 上の場面は玄関の三和土から靴脱ぎ石で靴を脱ぎ,次いで式台に上がろうという場面である.
 動画のキャプションに《お宅へ訪問~お部屋までの道のり》とあるが,この玄関は明らかに一般住宅の玄関ではない.男性の左後ろに暖簾の掛かった通路のようなものがあるところをみると,ここは料理屋である.暖簾の向こう側は,たぶん客の送迎を担当している従業員の控えている部屋で,そこには下駄箱があると思われる.私は「つきじ治作」で飯を食ったことはないから知らぬが,「つきじ治作」の玄関かも知れない.
 さて画像の男性は今,靴脱ぎ石の上に立っている.このあと,男性は式台に上がるが,本来はその時,式台に膝をついて脱いだ靴を揃えるのが,一般家庭を訪問する時の作法である.しかし男性はずんずんと進んで行ってしまう.これは《お宅へ訪問》ではなく,料理屋に上がる際のやり方である.脱いだ靴は下足番の従業員が下駄箱に運んでいってくれるからだ.
 動画のシーンとキャプションが食い違っているのに放置されているのは,「つきじ治作」側が動画制作を業者に丸投げし,出来上がった動画を監修していないからだろう.また,ネットに上げられたこの動画を,経営者も従業員も,誰も見ていないことが明らかである.

 ところでこの動画には不可解な点がある.下の画像中に描きいれた左側の↓に紳士靴が写っているのだが,そこは式台からは手が届かない.靴は右足側が通路にはみ出ている.脱いだ靴を揃えて玄関下座に置く時は,もっと式台に近い位置になるはずだ.
 また,その靴は男性が履いていた靴ではない.なんとなれば,男性は靴脱ぎ石で靴を脱いで,そのまま先に進んで行ったからである.
 一体これは誰の靴なのであろうか.そして通路にはみ出して置かれているのはなぜなのだろうか.
 さらに,右側の斜め下向き矢印の先に移り込んでいるものは何か.よく見ると,従業員が履く木のサンダル (通称「ベランダサンダル」という.大昔は旅館のトイレなどでも使われたので,「便所サンダル」とも呼ばれたが,現在はゴム製の通称「ベンサン」に駆逐されてしまった w) のようにみえる.その位置に 便所 サンダルなんぞを置くから,紳士靴が通路側に置かれてしまうのである.
 
20181004f
 
 さて次の問題点を指摘する.
 上の画像を見れば明らかだが,紳士靴と 便所 サンダルが置かれている辺りが玄関下座である.そしてその対面が玄関上座だ.
 
20181004b
 上の画像は,《やさしいお作法 1 靴をぬぐとき》から撮ったハードコピーである.この場面の左端に写っているものを下の画像に示す.
 
20181004h
 
 やはり 便所 サンダルにしか見えぬ.w
 それはともかく,モデルの男性は靴脱ぎ石の上で靴を脱ぎ,次に式台の上で膝をつき,その靴の向きを正す動作を行う.それが下の画像だ.
 
20181004b_2
しかしこの場面には,トンデモナイものが写っている.下の画像に↓で示す.
 
20181004c_2
 
 ここに乱雑に置かれているのは,女将や中居が客を送迎する時に履く草履と思われる.しかもそこは玄関上座だ.別段高級店でなくても,経営者がきちんとしている店では,下座 (この場面では 便所 サンダルが置かれている位置) に小さな従業員用の下駄箱があり,そこにしまわれていることが多い.
 ともあれ,作法を説く動画に, 便所 サンダルや向きの乱れた草履が写り込んでいるのはいただけない.というか,そもそも客商売の料亭が,作法を説くという,所謂「上から目線」な態度はいかがなものか.どうしてもエラソーに作法を説きたいのであれば,まず玄関をきれいに片づけてから撮影し,専門家の監修を受けてからネットに上げるべきだ.玄関の整理整頓は作法以前の問題である.

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