« 『歴史ヒストリア』の誤謬 | トップページ | 渡世人の飯椀 (一) »

2018年10月11日 (木)

フェイク報道

 昨日 (10/10) の日本テレビ『ザ!世界仰天ニュース』で《死者8人...住宅地でまかれた猛毒ガスの真実 》で,松本サリン事件の再現ビデオ映像が放送された.
 その中で,土谷正実元死刑囚がサリン合成の実験をする場面があったが,これは誤解を招く映像だった.
 下の画像で,土谷正実役の俳優が両手を差し込んでいる箱のようなものは,化学実験室なら必ず設置されているドラフトチャンバーと呼ばれる実験室用設備機器である.
 しかし,この設備ではサリンは作れないのである.サリンの合成実験は,完全に湿度ゼロの乾燥した雰囲気下で行う必要があり,そのためにはグローブボックスという設備を使用する.これはどの化学実験室にもあるというものではないが,市販はされていて,非常に特殊な設備というわけではないから,これを保有している大学や企業の実験室でロケさせてもらえばよかったのだ.
 
20181010a
 
 松本サリン事件発生の当時,警察やメディアは我が国の合成化学の権威者であった森謙治先生 (当時は東大農学部教授) を取材し,森先生からどのような実験室設備が必要であるかという情報を得て (森先生がテレビ局のインタビューに答える場面の報道を私は見た) おきながら,その情報を無視し,あたかもサリンを一般民家で製造できるかのごとき嘘報道の方向に突っ走った.
 あの時,警察が,森先生の説明を理解し,グローブボックスのメーカーのルートを調べ,その設備の購入者を捜査していれば,河野義行さんを犯人扱いすることはなかったのである.
 今回の『ザ!世界仰天ニュース』は,その時の教訓 (=サリン製造は特別な設備を必要とする) を全く理解せず,再び虚偽情報を日本中に拡散してしまった.
 この括弧付き「再現」ビデオは,松本サリン事件に関する基本的な事実の調査をせずに制作されたことが明らかである.従って《死者8人...住宅地でまかれた猛毒ガスの真実 》全体の信用性が疑われるのである.

|

« 『歴史ヒストリア』の誤謬 | トップページ | 渡世人の飯椀 (一) »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: フェイク報道:

« 『歴史ヒストリア』の誤謬 | トップページ | 渡世人の飯椀 (一) »