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2018年8月21日 (火)

盂蘭盆

 先週の『チコちゃんに叱られる!』からもう一つ話題を.
 MCのチコちゃんがゲスト回答者の浅野ゆう子さんに「お盆の盆てなに?」と質問したが,浅野さんは答えられなかった.
 私のような年寄りは「お盆」の語源を知っていても,一世代若い浅野さんくらいになると御存知なくても仕方あるまい.もちろん盂蘭盆会の「盆」に由来しているというのが正解だが,それでは盂蘭盆会とは何か.
 盂蘭盆会は,釈迦の筆頭弟子だった目連とその母親である青堤女の物語に由来する,ということは知ってはいたが,記憶が曖昧な部分もあったので,この際だから詳しく調べてみた.
 すると意外なことが判明した.
 まずは『チコちゃんに叱られる!』の解説だが,これは Wikipedia【目連】に書かれていることを,そっくりそのまま『まんが日本昔ばなし』風の静止画に描いたもので,ナレーションは清水ミチコさんが市原悦子さんのモノマネでやった.(いつもながらの芸達者ぶりに感心したが,余談ながら彼女が浅野ゆう子さんと同年の生まれであることは,この稿を書いたおかげて初めて知った)

 で,その Wikipedia【目連】の解説はどのようなものかというと,下記の通り.

目連と盂蘭盆
下記に記す盂蘭盆の逸話により、目連が日本におけるお盆及び盆踊りなどの行事の創始者として受け取られている。
目連がある日、先に亡くなった実母である青提女が天上界に生まれ変わっているかを確認すべく、母の居場所を天眼で観察したところ、青提女は天上界どころか餓鬼界
(*ブログ筆者註) に堕し地獄のような逆さ吊りの責め苦に遭っていた。驚いて供物を捧げたところ供物は炎を上げて燃え尽きてしまい、困り果てた目連は釈迦に相談する。釈迦は亡者救済の秘法(一説には施餓鬼の秘法)を目連に伝授し、目連は教えに従って法を施すとたちまちのうちに母親は地獄から浮かび上がり、歓喜の舞を踊りながら昇天した。
 (*ブログ筆者註) この引用文中に「餓鬼界」とあるが,十界の一つとして数えるときは餓鬼界といい,六道の一つとして数えるときは餓鬼道と呼ぶ)

 私の持っていた知識もこの程度のものであったが,よく考えると不思議な話である.
 なぜなら,釈迦の十大弟子のうちでも長老格である目連の母親が,なぜに餓鬼道なんぞに堕ちたのかが,この説明では不明だ.
 それを調べたら,青提女は吝嗇だったから,と説明するウェブページが多数見つかった.しかしその説明の細部が,寺院や宗派によって少しずつ違っているのである.
 ほとんどは青提女は餓鬼道に堕ちたとする中で,地獄に堕したのだと出典を示さずに変形甚だしく書いている宗派もあったくらいだ.
 その一つ一つについて比較検討することは,私は仏教に詳しいわけでもないので避ける.しかし,どうしてそんな事態になったのかを想像するに,まずインドから中国に仏教が伝来した後,インドの仏典『餓鬼事経』を基にして偽経である『盂蘭盆経』が書かれた.(『盂蘭盆経』以前に,目連の伝説が発生していたのかも知れない)
 こうして一旦は底本たるべき『盂蘭盆経』が成立すると,これを基に,自宗派に都合のよい説話や異本が生じたことは充分に考えられる.
 例えば,文永八年に日蓮が執筆した「四条金吾殿御書」あるいは「盂蘭盆由来御書」と呼ばれる文書は,目連伝説を法華経にかなり引き寄せて変形させたものと考えられる.
 このような変形が日本仏教各派で行われた結果,「お盆とは何か」については,Wikipedia【目連】のような漠然とした解説しかできなくなったのであろう.
 
 ちなみに,上記の「四条金吾殿御書」にあるように,日蓮宗では目連は法華経により成仏したとしているらしいが,チベット大蔵経や漢訳仏典では,目連は外道に殺されたことになっているようだ.殺された理由は,六道輪廻の中で犯した罪業の報いであるという.十大弟子目連は今も六道の輪廻のうちにあるのだろうか.
 さらにちなみに,奈良の興福寺には国宝の「目犍連像」がある.これは奈良に行けば見るべき像の一つ.

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