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2018年8月11日 (土)

半田付け プルプル感はいけません

 昔話をする.
 小学生の頃,父親の同僚で,趣味でラジオやテレビを製作する人が近所に住んでいた.私はその人のお宅に行っては,電気回路の初歩を教えてもらったり,ラジオの組み立てを見せてもらったりした.
 その当時は真空管が実用部品とされていた最後の時期にあたり,半田付けに使う半田ゴテは消費電力が60Wくらいの大きいもので,銅製のコテ先は銃弾のような形をしていた.
 話は少し横に逸れるが,この銃弾型のコテ先は,実は電気回路の配線だけでなく,簡単な板金工作にも適しているのだが,真空管ラジオとか真空管アンプの製作にだけに使うのであれば,ヤスリで削って加工してから使うのが普通だった.どんな形に削るのかは機会があればお見せしたいが,これはまあ滅びた伝統技術だ.今は秋葉原に行けば使いやすい形状で温度調節もできる高性能の半田ゴテが簡単に手に入る.
 さて程なくして真空管の時代が終わり,半導体の全盛期を迎えると,半田付けのやり方はすっかり変わってしまった.熱に弱い半導体をダメにしないように半田ゴテの消費電力は30~40W程度に小さくなり,小型化し,プリント基板の配線に便利なようにコテ先の形状は細い棒状になったのだった.(上級者が愛用する先端が尖ったものもある)

 一昨日,テレビ番組『プレバト!』で,半田付けのシーンが放送された.
 名人フジモンが次の句を詠んだのである.

短夜や 付録ラジオの半田付け

20180811a

 このシーンはイメージ映像であるから,プリント基板がラジオのそれでないのは構わない.しかし,映っている半田ゴテがイケナイ.これは板金工作もできる消費電力の大きいものだ.しかも,出演した子役の少年は,一度も半田付けをした経験がないとみえて,デタラメなことをしている.これは半田付けではない.プリント基板の上で無意味に半田を融かしているに過ぎない.
 このシーンを撮影したスタッフも半田付けという作業を一度も見たことがないのだろう.だが,見たことがないなら,ネットを探せばいくらでも資料画像がみつかるのに,それをしないというのはどういうことなんだろう.

 しかしもっとダメなのは,夏井先生の評言だ.
 この句から「半田のプルプル感」と言ったのだ.

20180811b

 真空管ラジオだろうがプリント基板の電子回路工作だろうが,半田付けは可及的に少量の半田しか使ってはいけない.
 融けた半田がプルプルするくらいに盛ってしまうのは,通称「イモ半田」といい,半田付けのやり方の初歩すら知らぬ者がやってしまう大失敗なのである.
 すなわち夏井先生は半田付けの実際を見たことがないに違いない.見たことがないのは無理からぬことであるが,ならばなぜネットで資料を探して勉強しないのか.夏井先生の「半田のプルプル感」は,自分が見たこともないことを,さも知っているかのように語っているわけで,つまりこの言葉にはリアリティというものが全くない.これは俳句批評遊びである.

 いやあ『プレバト!』は毎週毎週,ツッコミ所満載で,最上のエンタメ番組であるなあ.
 ちなみに半田付けの動画で楽しいのはコレ

(上の画像は録画データを加工したものではなく,引用に供するためにテレビ画面をカメラで撮影し,それをトリミングしたものである) 

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