« 橋本忍逝く | トップページ | FF XIV »

2018年7月25日 (水)

肴は炙っただけの烏賊

 小料理屋と居酒屋の境目はどこにあるか.
 Wikipedia【居酒屋】には次の記述がある.

呼び方
 1人または2人の少人数で運営し、あまり大きくない店舗 (しばしばカウンター席のみ) で営業している店は「小料理屋」と呼ばれることもある。特に、料理に凝ったものを用意している場合にこの名称が用いられる。

 小料理屋,つまり《料理に凝ったものを用意している》店には二種類あって,割烹や寿司屋できちんと修行した主人が,会席料理水準の一品料理を安価に提供している場合が一つ.もう一つは,その地方の郷土料理や,料理下手には決して作れないレベルの家庭料理,すなわちいわゆる「お袋の味」を食わせてくれる店である.
 前者のイメージは,さして広くない店内に白木のカウター席があり,カウンターの向こうの料理人は清潔な白衣と白い帽子を着用している.料理人はカウンターの外には出ず,接客は和服の上品な女将が行う.割烹が食事を提供するのに対して,小料理屋は酒の肴を主な献立にしている.
 後者の典型は,美人の女将さんが一人で切り盛りしている店である.女将のイメージは篠ひろ子,あるいは倍賞千恵子である.従って,いつもカウンターに一人しかいない常連客は藤竜也か高倉健ということになる.
 ちなみに小料理屋の女将は女優だった時の高樹沙耶のはまり役であるが,しかし警視庁の特命係である杉下右京の元の妻でありながら,常連客に大麻を斡旋しそうなところが怖い.
 また髪型をきりりとアップに整えれば八代亜紀の女将はアリだが,肴は烏賊の一夜干しを炙るくらいしかできないと思われる.しかし彼女はどちらかといえば小料理屋よりも新宿の場末のバーホステスが相応しいだろう.この八代亜紀からもう一歩場末側に寄ると青江三奈だが,こうなるともう業種が違うとしかいえない.
 余談だが,昭和四十八年 (1973年),大学を出たばかりで若かった私は,同年の生まれである八代亜紀が大好きであった.亜紀が私のことをどう思っていたかわからないが,私は彼女を愛していた.この年に「なみだ恋」の大ヒットで世に出た亜紀を,こんなにかわいらしいひとがこの世で他にいるだろうかとまで思った.八代亜紀に会ったことはないが.w
 同じく昭和四十八年,私は横浜の神奈川県民ホールへ,高校生の頃からファンだった青江三奈の歌謡ショーを見に行った.大ホールは満席で,舞台の青江三奈はもこの世のひととも思われぬ妖艶さであった.三奈が私のことをどう思って (以下同文)
 閑話休題
 冒頭の,小料理屋と居酒屋の境目だが,要するに料理の質ということになる.「居酒屋メニュー」という言葉があるほどで,これは業務用食品を多用する和民あたりの献立を思い浮かべて頂ければよい.

 さて,食べログの常連投稿者で,藤沢とか鎌倉の店のレポートを多数書いている「湘南の宇宙」という人がいる.この人が「ふじさわ厨房  紗紗」という店を激賞していたので,先日,ジムの帰りに寄ってみた.場所は以前から知っていたのである.
 時刻は夕方の五時過ぎ.引き戸を開けて入ると,既に四人の客がいた.
 店の内装は,殺風景なガランとした感じであった.前述の「上品な女将がやっている小料理屋」の範疇には決して属さない居酒屋そのものという店構えであった.
 私は入口から奥に伸びたカウンターの,その奥のほうの椅子に腰を掛け,置かれていた品書きを手に取って眺めたが,書かれていたのは「居酒屋メニュー」ばかりだった.しかも,そのうちのかなりのものが抹消線で消されていた.
 品書きに肴はあったが,酒は何があるのか,全く書いてない.料亭,割烹ならそれで通用するが,居酒屋は酒が売り物だから,どんな酒がいくらなのか品書きに書いていない店はダメである.この時点で,「湘南の宇宙」氏がどう言おうと,これはダメだと私は思った.
 カウンターの中にいたTシャツを着た女将,というか飲み屋のおばさんは,私に「お飲み物は?」とかの一言も言わずに,先に来ていた常連と思しい客と話をしていた.初めての客を歓迎していないのがあからさまだった.
 さりとて来たばかりで席を立つわけにもいかず,仕方なく「ハイボールはありますか?」と訊ねると彼女は「チタですけどいいですか」と答えた.
 チタって何だ,と思ったが,はいと私は答えた.
 彼女が手に取ったボトルを見ると,ラベルに「知多」と書かれていた.
 私は国産ウイスキーに疎い.あとで調べたらそれはサントリーのハイボール用ウイスキー「知多」だった.
 ここで前置きから本題に移る.
 Amazon に掲載されている「知多」の商品紹介 (文責はサントリー) から一部を引用する.

■サントリーウイスキー「知多」とは
「軽やかな風」をイメージしたグレーンウイスキー
サントリーウイスキー「知多」は、愛知県にある知多蒸溜所で生まれたグレーンウイスキーのみをブレンドしてつくられるウイスキーです。
……》
 
 グレーンウイスキーと書くと如何にももっともらしいが,つまりは連続式蒸留法で製造するエチルアルコールに加水した焼酎甲類である.これを樽で貯蔵することにより着色したものをサントリーは「グレーン原酒」と呼ぶらしい.

 しかるに驚いたことには,「知多」は,米国の食文化において重要な地位を占め,同様の手法で製造されるバーボンウイスキーよりもずっと高いのである.
 サントリーは長らく大衆酒である「角瓶」のハイボールを,テレビCМで消費者に広告宣伝してきた.それを高価格帯に誘導しようというわけだろう.
 それでも,バーボンのワイルドターキーのように,炭酸水で割っても,炭酸に負けない強い個性のウイスキーなら文句はないが,「ふじさわ厨房 紗紗」の知多ハイボールは薄くて,そこら辺の居酒屋チェーンで出される角ハイボールと大差ない色付き清涼飲料水だった.

 ここで本題から「ふじさわ厨房 紗紗」の話に戻る.
 私はハイボールを注文したあと,続けてメカブと烏賊の一夜干しを頼んだ.しかしTシャツのおばさんは先客との雑談に興じていて,小鉢に盛り付けるだけのメカブが出てきたのは注文から十五分後,焼くだけの一夜干しが届いたのは注文の三十分後であった.
 しかも烏賊の一夜干しは,何の飾りもあしらいもなく,切っただけのものが皿に乗っていた.腹の底が煮えくりかえりつつあった私は,酒はもう空になっていたが,一夜干しを黙々と食べて,「お勘定して」とTシャツおばさんに言った.
 この店は,酒がダメなら食い物も接客もダメなのであった.しかも勘定をしてもらって内訳を暗算したら,件の水っぽいハイボールは一杯千円なのであった.ヘレン・ケラーも裸足で逃げ出す四重苦である.結論を述べる.「ふじさわ厨房 紗紗」は,私が知る限り藤沢駅近辺で一番ダメな居酒屋であるといっていい.女将が美人なら高くて遅くても別に文句は言わないが.ヾ(--;)

|

« 橋本忍逝く | トップページ | FF XIV »

外食放浪記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 肴は炙っただけの烏賊:

« 橋本忍逝く | トップページ | FF XIV »