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2018年6月12日 (火)

オーロラソース考

 フジテレビ『ソレなら5分で出来ますよ。』(6/3 放送) に,南極料理人こと西村淳氏 (昭和二十七年生まれ) が出演して,タマネギをカットして有り合わせの味噌と混ぜるだけでできる「万能味噌ダレ」を紹介した.
 西村氏はこれを「オーロラソース」と名付けている.このソースをつける料理によって色々に変化するから極地の「オーロラ」なのだそうである.意味がよくわからぬが.
 
20180611a

20180611b
(以上の画像は,録画データを加工したものではなく,テレビ画面を撮影したデジカメデータをトリミングしたものである) 
 
 でも,西村氏は修行を積んだ料理の専門家ではないから御存知ないと思うが,昔からフランス料理に「オーロラソース」はあるのである.だから,フレンチのシェフがこの番組を観ていたら目をむいたことであろう.
 さて本来の「オーロラソース」がどんなものかというと,Wikipedia【オーロラソース】に次のように書かれている.
 
オーロラソース(仏: sauce aurore)は、ベシャメルソースに裏漉ししたトマト(もしくはトマトピューレ)とバターを加えたソースである。フランス料理で鶏卵料理や子牛肉、蒸した肉料理などに使われる。
フランス語で「オーロラ」aurore は曙、明け方の意。トマトのもたらすオレンジがかったピンク色の曙色にちなみオーロラソースと呼ばれる。

 
日本ではマヨネーズとトマトケチャップを1:1の割合で混ぜたソースもこの名で呼ばれることがある
 
 マヨネーズとトマトケチャップを混ぜた日本式「オーロラソース」は,本来の「オーロラソース」と色が似ているので「オーロラソース」と呼んだのだろう.簡単に作れるから洋食屋などで出されることが多い.
 この日本式「オーロラソース」は考案者が不明だが,誰が工夫したのかがわかっている「オーロラソース」がある.誰とは,あの周富徳氏である.
 
〈よく知られた周富徳流オーロラソースのレシピ〉
   マヨネーズ      1 カップ
   ケチャップ      大さじ 3
   コンデンスミルク   大さじ 3
   エバーミルク     大さじ 2
   ジン         小さじ 2
   塩&パセリみじん切り 少々
 
 ただしこの周さんの「オーロラソース」は,色が曙色だから「オーロラ」なのだという本来の意味が失われて,もう何がなんだか意味不明のものになってしまっている.
 
 そして意味不明といえば,私はうっすらと記憶しているのだが,昭和三十年代の小学校給食の献立に「オーロラソース」があったのである.
 アスペクト編集部編『なつかしの給食』((株)アスペクト,1997年) の p.22 に,「鯨のオーロラソース」という献立が記載されている.この一皿に付けられたキャプションは《オーロラソースは謎の味、他では食べた覚えがない。》だ.w
 同書 p.25 には「栄養士さんの思い出」が掲載されているので,それを引用する.
 
オーロラソースというのは、ウスターソースとケチャップを混ぜ合わせたものなんですが、ケチャップを使い始めた当初は、子どもたちに全然受けつけてもらえませんでした。それで、とんかつソースに入れたり、甘めの味噌を混ぜたりといろんな試行錯誤をしました。それでだんだん子どもたちも食べるようになってきて、ようやく慣れてきてくれたのが昭和40年代に入ってからのことだったでしょうか。》 (ブログ筆者註;「とんかつソースに」は「とんかつソースを」の誤植だろう)
 
 同書に記載されているレシピを下に示す.
 
〈昭和30年代における学校給食オーロラソースのレシピ〉
   甘味噌     大さじ 1
   砂糖      大さじ 1+1/3
   トマトケチャップ   大さじ 1+1/3
   うま味調味料     少々
   水          小さじ 1

 
 《オーロラソースというのは、ウスターソースとケチャップを混ぜ合わせたものなんですが 》という時点で既に曙色とは無縁のものになっているのであるが,さらにウスターソースが甘味噌に変化して《オーロラソースは謎の味、他では食べた覚えがない。》になったのである.
 
 上に列記したオーロラソースを,成立した時代順に並べると,(1) フランス料理のオーロラソース,(2) 昭和30年代の学校給食のオーロラソース,(3) 周富徳流オーロラソース,(4) 南極料理人流オーロラソース,ということになるだろう.Wikipedia に書かれている「日本式オーロラソース」の成立時期がわからないのだが,それをモディファイした「周富徳流オーロラソース」よりも古いことは確かである.
 
 ここで一つ不思議に思ったのは,私と年齢が近い西村淳氏は,(1) は御存知なくても,(2),(3) や「日本式オーロラソース」は知っていてもいいはずだが,どうして味噌ダレを「オーロラソース」にしたのだろう,ということ.味噌ダレの「オーロラソース」が「周富徳流オーロラソース」を知名度でしのぐことはまずあり得ない.今からでも別の名称にしたらいいと思う.
 
 私は西村氏の著書を一冊しか読んだことがないのだが,味噌ダレを敢えてオーロラソースと名付けた理由が他の本に書かれているのだろうか.(氏の会社はオーロラキッチンという名称であるところをみると,西村さんは何でもオーロラを冠するのかも知れない)

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