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2018年6月10日 (日)

孤独と寝たきり (補遺)

 私は,下重暁子『極上の孤独』は読んでいないし,買う気もないのだが,五木寛之『孤独のすすめ』は読んだ.
 五木寛之という作家に,大学生の頃から私は好感を持ってきた.穏やかな人格の人だと思っている.
 その五木寛之にして,『孤独のすすめ』では都会の独居老人や,崩壊した限界集落で暮らす老人たちのことは視界に入っていない.せいぜいが施設に入居できる資産あるいは収入がある階層の高齢者たちを対象に「孤独でも大丈夫」と言っているに過ぎない.
 
Photo  
上図は「平成28年版高齢社会白書」から引用した.
 
日経新聞記事《東京の高齢者世帯、44%が一人暮らし 20年後
 
 上に独居老人人口の将来推計 (内閣府発表の公的資料) と,日経新聞の記事を資料として掲げた.
 以前からNHKは孤独な老人たちの「セルフネグレクト」や孤独死などの問題を報道してきている.(《クローズアップ現代 高齢社会》 など)  
 
 しかし先日放送された『ガッテン』 (昨日の記事《孤独と寝たきり》参照) では,「孤独が寝たきり危険度を上げる」と言うだけで,寝たきりにならない対策として「スポーツ」をするとか「友達と食事に行っておしゃべりする」などを示して,ある種の無責任に陥っている.
 なぜなら,スポーツにも会食にもお金が必要なのである.都市の底辺で,数万円の年金しか収入がないために閉じこもっている孤独な老人にどうせよというのか.崩壊した限界集落でどんなスポーツをせよというのか.
 
 下重暁子『極上の孤独』には「孤独は成熟した人間だけが到達できる境地」「集団の中でほんとうの自分でいることは難しい」「孤独を味わえるのは選ばれし人」「孤独を知らない人に品はない」などと書かれているらしいが,彼女には高齢社会の現実が全く見えていないのだと思われる.

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