『母子草』ノート (6)
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滋賀県に伝わる「母子草」の名の謂れについて,中島千恵子氏が民俗学的方法で再話した民話『母子草』と,藤澤衞彦教授の伝承童話『母子草』の大きな相違点は,民話では主人公の少女を故郷に導くのが観音であるのに対し,童話では弁財天であることだ.
ここで考えられるのは,(1) 藤澤教授が伝承童話集に『母子草』を収めるに際して観音を弁財天に変更した,(2) 元々近江民話において観音版『母子草』と弁財天版『母子草』があり,中島氏は観音版を採集し,藤澤教授は弁財天版を下敷きにした,という二つの可能性である.
どちらであるかは今後の調査で明らかにするしかないが,一つの疑問点は,藤澤教授が残した資料がなぜ都下小金井市の旧武蔵野郷土館 (現江戸東京たてもの園) と駒場の日本近代文学館の二ヶ所に分けられたかということである.
そこで調べを進めると,武蔵野文化協会という団体があり,これがかつて藤澤教授から旧武蔵野郷土館に寄贈された資料『藤沢文庫』の目録を作成し,機関誌『武蔵野』(70巻第2号;1993年) に掲載したことがわかった.
武蔵野文化協会に,古いバックナンバーがあるかどうか問い合わせをしようと思って,所在地を調べたのだが,全くウェブ検索では出てこない.もしかすると代表者の個人宅が連絡先で,特に事務局を構えているわけではないのかも知れない.
では図書館はどうかというと,国会図書館サーチではヒットしないし,神奈川県立図書館にもない.
詰んだか,と思ったが,「日本の古本屋」で検索したら,運良く当該古書が二冊,別々の古本屋から出品されていた.そのうちの一冊を早速注文したのであるが,なかなかその本屋から返事がこない.仕事が遅いのか,在庫整理が悪くて出品はしているが実物はないのか.呆れて,別の本屋が出品していた一冊を注文しようとしたら,それは既に売れてしまっていた.こんなニッチな資料なのに,私以外に集めている人がいたようだ.古本との出会いは一期一会なのかも知れない.目録があるとないでは調査の手間が大違いなのに,がっかりである.
滋賀県に伝わる「母子草」の名の謂れについて,中島千恵子氏が民俗学的方法で再話した民話『母子草』と,藤澤衞彦教授の伝承童話『母子草』の大きな相違点は,民話では主人公の少女を故郷に導くのが観音であるのに対し,童話では弁財天であることだ.
ここで考えられるのは,(1) 藤澤教授が伝承童話集に『母子草』を収めるに際して観音を弁財天に変更した,(2) 元々近江民話において観音版『母子草』と弁財天版『母子草』があり,中島氏は観音版を採集し,藤澤教授は弁財天版を下敷きにした,という二つの可能性である.
どちらであるかは今後の調査で明らかにするしかないが,一つの疑問点は,藤澤教授が残した資料がなぜ都下小金井市の旧武蔵野郷土館 (現江戸東京たてもの園) と駒場の日本近代文学館の二ヶ所に分けられたかということである.
そこで調べを進めると,武蔵野文化協会という団体があり,これがかつて藤澤教授から旧武蔵野郷土館に寄贈された資料『藤沢文庫』の目録を作成し,機関誌『武蔵野』(70巻第2号;1993年) に掲載したことがわかった.
武蔵野文化協会に,古いバックナンバーがあるかどうか問い合わせをしようと思って,所在地を調べたのだが,全くウェブ検索では出てこない.もしかすると代表者の個人宅が連絡先で,特に事務局を構えているわけではないのかも知れない.
では図書館はどうかというと,国会図書館サーチではヒットしないし,神奈川県立図書館にもない.
詰んだか,と思ったが,「日本の古本屋」で検索したら,運良く当該古書が二冊,別々の古本屋から出品されていた.そのうちの一冊を早速注文したのであるが,なかなかその本屋から返事がこない.仕事が遅いのか,在庫整理が悪くて出品はしているが実物はないのか.呆れて,別の本屋が出品していた一冊を注文しようとしたら,それは既に売れてしまっていた.こんなニッチな資料なのに,私以外に集めている人がいたようだ.古本との出会いは一期一会なのかも知れない.目録があるとないでは調査の手間が大違いなのに,がっかりである.
しかし考えてみると,旧武蔵野郷土館に寄贈された資料『藤沢文庫』は,藤澤教授が蒐集した資料のうち,埼玉から東京,神奈川にわたる武蔵国の伝承に関わるものの可能性が高い.だとすると,近江の伝承に関する資料は含まれていないだろう.そのように考えて気を取り直した.これを世間では負け惜しみといい,学問的には合理化と呼ぶ.orz
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