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2018年5月19日 (土)

『母子草』ノート (3)

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 今日は神奈川県立図書館で,以下の三冊を閲覧,調査してきた.

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作品名      母子草ばなし
書籍名     『少年少女日本の民話・伝説 第3 近畿の巻』
著者       二反長半
出版社      偕成社
発行年      1963年
所在等特記事項  神奈川県立図書館蔵書.
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作品名      母子草
書籍名     『日本むかしばなし集』(少年少女世界むかしばなし全集 ; 10)
著者       奈街三郎,藤澤衛彦
出版社      宝文館
発行年      1960年
所在等特記事項  神奈川県立図書館蔵書.都立多摩図書館蔵書.
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作品名      母子草
書籍名     『ふるさとのはなし 7 近畿地方』
著者       浜田広介
出版社      さ・え・ら書房
発行年      1966年
所在等特記事項  神奈川県立図書館蔵書.横浜市中央図書館蔵書.
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 二反長半の「母子草ばなし」は,藤澤衛彦の原作を翻案したものとしてよかろう.
 二番目の『日本むかしばなし集』の「母子草」は,藤澤衛彦の原作に奈街三郎が手を入れたものかも知れないが,基本的に藤澤衛彦の原作に沿っている.

 三つ目の浜田広介『ふるさとのはなし 7 近畿地方』に収められた「母子草」は,二反長半作の「母子草ばなし」と同じ翻案ものと考えていいが,主人公の少女の名を「おちょう」としている点に特色がある.
 私がこれまでに調べた範囲では,少女の名が藤澤衛彦の原作と異なっているのは,この浜田広介の童話のみである.(ここでは「のみである」と書くが,昭和の童話作家たちの知的所有権に関する鈍感と乱暴には恐るべきものがあり,藤澤衛彦の「母子草」を剽窃した清水たみ子や奈街三郎の「母子草」と同様に,浜田広介作品のパクリを探せば出てくる可能性がある.清水や奈街のような連中がよくもまあ子供たちに「童話」を提供してきたものだと,私は天を仰ぐのみである)
 便宜的に,近江民話を童話化した藤澤衛彦の「母子草」を「二つ目の母子草の物語」,浜田広介の作品を「三つ目の母子草の物語」,二反長半の「母子草ばなし」を「四つ目の母子草の物語」と呼ぶことにし,連載本文でそれぞれを批評することにしたい.

 ちなみに『ふるさとのはなし 7 近畿地方』の所蔵図書館は,国会図書館サーチによると三重県立図書館,京都府立図書館,大阪府立中央図書館国際児童文学館,福島県立図書館であるが,個別に各地の図書館の蔵書検索をすると,国会図書館サーチではヒットしない図書館にも所蔵されていることがある (神奈川県立図書館はその一例である) ので,『ふるさとのはなし 7 近畿地方』全文を読んでみたいと思われる向きは,各地の図書館で蔵書検索していただきたい.

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