母子草 (七)
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前回記事《母子草 (六) 》 の末尾を再掲する.
《この「あとがき」のあとに,原話者および協力者二十七人が挙げられており,再話者二十一人 (中島千恵子氏の研究グループ) の氏名が列記されている.
以上の二冊からわかることは,以下の通り.
(1) 書籍名『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』の出版時点では,近江のハハコグサにまつわる民話の伝承者は湖北 (当時は東浅井郡虎姫町,後に長浜市に編入された) の田中敏郎氏であった.
(2) 書籍名『母子草』の出版までに原話者として田中敏郎氏の他に湖南 (大津市堅田町) の横山千代氏が加わったが,この書籍の出版時点では,両氏とも故人となっておられた.
(3) 湖北と湖南に伝わる民話であることが物語の筋書からもわかる.(後述)
(4) 故中島千恵子氏が遺したその他の重要なキーワードは「竹生島の妙音天女」である.
(5) 母子草の名にまつわる民話は滋賀県特有であり,他県に類話がない.(後述)
(6) 中島千恵子氏はこの民話の再話にあたって創作を加えていない.》
以上の二冊からわかることは,以下の通り.
(1) 書籍名『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』の出版時点では,近江のハハコグサにまつわる民話の伝承者は湖北 (当時は東浅井郡虎姫町,後に長浜市に編入された) の田中敏郎氏であった.
(2) 書籍名『母子草』の出版までに原話者として田中敏郎氏の他に湖南 (大津市堅田町) の横山千代氏が加わったが,この書籍の出版時点では,両氏とも故人となっておられた.
(3) 湖北と湖南に伝わる民話であることが物語の筋書からもわかる.(後述)
(4) 故中島千恵子氏が遺したその他の重要なキーワードは「竹生島の妙音天女」である.
(5) 母子草の名にまつわる民話は滋賀県特有であり,他県に類話がない.(後述)
(6) 中島千恵子氏はこの民話の再話にあたって創作を加えていない.》
上に中島氏の著書として『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』と絵本『母子草』を挙げたわけだが,中島氏が編集したその他の近江民話集に『近江の民話 日本の民話74』(中島千恵子編;未来社,1980年) があり,これには民話71編の他にわらべうたも収録されている.現在は絶版になっていて,古書は大変に高い値段がついているが,昨年秋に『[新版]日本の民話74 近江の民話』が出ているのを見つけたので Kindle 版を読んでみた.
すると,これには中島氏による再話『母子草』は収録されていないことがわかった.
以上,この本稿 (七) までに紹介した書籍を時系列に並べてみると以下の通りである.
以上,この本稿 (七) までに紹介した書籍を時系列に並べてみると以下の通りである.
発行年 書籍名 『母子草』の収録
1968年 『近江むかし話』 ×
1977年 『続 近江むかし話』 ×
1979年 『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』 ○
1980年 『日本の民話74 近江の民話』 ×
1992年 『母子草 滋賀の伝説シリーズ 3』 ○
1968年 『近江むかし話』 ×
1977年 『続 近江むかし話』 ×
1979年 『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』 ○
1980年 『日本の民話74 近江の民話』 ×
1992年 『母子草 滋賀の伝説シリーズ 3』 ○
滋賀県老人クラブ連合会が『近江むかし話』『続 近江むかし話』を編纂した時期,高齢の『母子草』原話伝承者はもう世を去っていたと考えられると既に述べた.
そして後に中島氏にこの民話を伝えた田中敏郎氏は,『近江むかし話』『続 近江むかし話』編纂事業が行われていた時期には,まだ老人クラブに所属するような年齢ではなかったので,再話の募集に応募しなかったのではないだろうか.
そして後に中島氏にこの民話を伝えた田中敏郎氏は,『近江むかし話』『続 近江むかし話』編纂事業が行われていた時期には,まだ老人クラブに所属するような年齢ではなかったので,再話の募集に応募しなかったのではないだろうか.
『続 近江むかし話』が出版された時期には,中島千恵子氏は田中敏郎氏から原話『母子草』を既に採集していた可能性がある.しかし老人クラブ連合会による『続 近江むかし話』編纂事業の趣旨が「老人が社会的役割を果たす」であるということに照らせば,自分が直接再話した『母子草』を『続 近江むかし話』に収録させるのは好ましくないと判断したのだろう.
そのような事情のもとに,翌々年,『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』に『母子草』が収録されたというのが私の推理なのだが,いかがであろうか.
『日本の民話74 近江の民話』に『母子草』が入っていないのは,前年の『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』に入っているから重複を避けたためであり,『母子草 滋賀の伝説シリーズ 3』の出版は,『ひともっこ山 湖の国にむかしむかし』の出版から十三年も経ったこともあり,幼年向きに書き直して絵本にしたのであろう.
さて次回は,中島版『母子草』のストーリーについて述べる.
(続く)
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