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2018年4月15日 (日)

白川郷と雪中立往生の旅 (五)

(前回の記事は《白川郷と雪中立往生の旅 (四)》)
 
 翌朝,朝食後にロビーに集まったのは,ツアー一行の三分の一ほどであった.大部分の参加者は朝一番の新幹線で帰ったのだった.
 クラブツーリズムの小旗を右手で掲げたN澤は,不通の国道158号に突っ込んで降りしきる雪の中でバスを立往生させた自分の責任を微塵も感じていないと思われる明るい笑顔で言った.
「それでは長野駅まで御案内しまーす」
 
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 ホテルを出ると雪は上がって銀世界だった.
 この日の朝,長野市内は氷点下だったらしく,積もった雪は凍って,靴に滑り止めを装着するほどではないが,しかし慎重に歩かないと転倒してしまいそうだった.
 後で確認したのだが,この日の前夜の雪は長野市では久しぶりの降雪だったという.
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 長野駅のコンコースで添乗員N澤は,残留した十人ほどのツアーメンバーを前にして
「それではこのツアーはここで解散とします.お疲れさまでしたー」
と言い,足取り軽く改札口の向こうに消えていった.
 この無能にして無責任な男は,最後まで「私の判断ミスで御迷惑をおかけしました」と言わなかった.
「私のことは嫌いでも,クラブツーリズムのことは嫌いにならないでください!」とでも言うかと思ったのだが,言わなかった.
 近畿日本ツーリストの一部門としてスタートしたクラブツーリズムが旅行代理店として独立し,ここまで大きくなったのは,経営者も社員も優秀だったからだろう.しかしどんな組織にも,「権限がありません」を口実にして仕事をしない,仕事のできない社員が,いつの間にか紛れ込んでくるのは避けがたい.ほぼ定説となっているのは,駄目社員は二割だという話だ.この説に,私は実感として同意する.
 この説をツアー添乗員に適用すると,ツアーに五回参加すると,一回はN澤みたいな無能無責任添乗員にぶち当たってしまうことになる.かなりの高率だと言わざるを得ない.
 旅行代理店によって色々だと思うが,クラブツーリズムの場合は,申込時点で希望しておけば,旅行前に添乗員が電話で連絡 (挨拶) をしてくれる設定のツアーがある.あるいはツアーの担当部署に電話で添乗員の名前を訊ねるかして,今後は事前に添乗員がN澤でないことを確認しておくことにする.海外旅行の場合,添乗員にでたらめな仕事をされて「延泊のホテル代と帰りの航空運賃はお客様各自の御負担となります」と言われたら困るからだ.
 この白川郷ツアーでは腹立たしい思いをしたが,これをもってクラブツーリズムのツアーを全否定する気はさらさらない.
 実はこの白川郷ツアーに参加する前に,クラブツーリズム催行の台湾ツアーを申し込んでいた.そのツアーの女性添乗員さんは語学堪能にして性格は明るく有能で,彼女が独身であったら,うちの息子の嫁にしたいと思ったくらいである.w
 というわけで,この旅行記はクラブツーリズムを非難するものではないことを記しておく.
 
[補遺]
 さてツアーが長野駅で解散したあと,私は善光寺に参詣することにした.
 実は私はこれまで長野市に一度も来たことがなく,仕事をリタイアしたあとずっと,この国に生まれたからには死ぬまでに一度は善光寺にお詣りしたいものだと思ってきたのである.
 もしかすると西日本での善光寺の知名度は高くないかも知れないのだが,東日本では江戸時代から「一生に一度は善光寺詣り」とまで言われた大名刹なのである.
 ひょんなことから長野市にやってきて,善光寺にお詣りすることになったは御仏のお導き,何かの御縁かも知れぬ.これを江戸時代から「牛に引かれて善光寺詣り」という.いわないか.
 白川郷ツアーでは無能添乗員のせいで一万五千円ほどの余分な出費を強いられてしまった.しかしこれとは別に善光寺詣りをしたとすれば,なにがしかのお金はかかるわけだから,まあ元は取れたと言えなくもない.
 
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 駅前の広場には鳩が寒そうに寄り集まってじっとしていた.広場には駅前バス停があり,そこの案内板を読んだら,suica を始めとする全国区のICカードは使えないと書かれていた.あとで調べると KURURU という長野市内のバス会社 (長野電鉄,アルピコ交通,市営バス) 共通のICカードがあるのだった.
 
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 この KURURU は交通系ICカードのネットワークに背を向けているため,コンビニなどでは使えない.バス以外に使い道のない単なるバスカードである.どうしてこんなものを作ったんだろう.観光客や市民へのサービスのことは念頭にないのだと思われる.
 
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 お詣りしたあと,寺域から参道 (仲見世通り) に出た所の角に「九九や旬粋」というしゃれたお店があり,その二階にカフェがあったので寄ってみた.
 
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 アールグレイをオーダーし,紅茶が運ばれてくるまで暫くの間,二階の窓から善光寺を眺めた.雪をかぶった建物や樹々はとても美しかった.
 長野市は北信濃だから雪国のイメージがあるけれど,カフエのマスターに訊いたら,長野市内ではこの冬は大雪は降っていないとのことだった.
 
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 カフェを出て仲見世通りを少し下ると蕎麦屋「かどの大丸」が店を構えていたので,ここで昼食を摂った.
 糖質制限中ではあるが,信州信濃の善光寺まで来て蕎麦を食わない法はないだろうと思ったのである.ところがこの店の天ぷら蕎麦は,天ぷらは上手に揚げられていたけれど,蕎麦そのものは大した出来ではなかったのが残念だった.これが善光寺門前の蕎麦の水準じゃないよね,と思ったことである.
(了)

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