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2018年3月25日 (日)

徳島 大塚国際美術館 (二)

 翌朝,ホテルをチェックアウトしてタクシーで徳島駅前へ.
 駅前バス停の運行表によれば,9:00に徳島バスの鳴門公園線に乗車すれば10:14に大塚国際美術館に着く.
 暫く待っているとバスがやってきた.私は右手に suica を持って中ドアからバスに乗り込んだが,そこに交通系ICカードをタッチする読取機がないことを知って軽く驚いた.つまりこのバスの運賃支払いは現金のみなのであった.
 suica など全国各地に普及した交通系ICカードの間に互換性ができたのは,もうかなり前の話だ.首都圏に住んでいると,今はもう電車やバスの運賃は言うに及ばず,私鉄系デパートでは弁当や惣菜に至るまで suica など交通系ICカードで買える.この利便性に慣れ切った私は,よもや suica が通用しないなんてことがあるとは思いもしなかった.
 
 バスが発車したあと車内前方にある運賃表示ディスプレイを見ていると,やがて大塚国際美術館前運賃として表示されたのは二百八十円だった.
 そこで財布にある小銭を勘定したら,二百七十円だった.あちゃー,である.
 運転席脇にある両替機は千円札のみ利用可能で,そして私の財布には数枚の万札はあったが,千円札が一枚もなかった.
 こうなったら大塚国際美術館前で降りずに終点まで行くしかない.そこにはバス会社の事務所があるだろうから,そこで万札を崩してもらえばいいだろう.そう考えたのだが,これが甘かった.終点に事務所なんぞはなく,ポツンと一軒あったのは,古い木造家屋の土産物店であった.バスはその店の前で折り返すのである.
 前ドアが開いたときに私はバスドライバーに事情を話し,そこの土産物屋で万札を崩してくるから,少し待って欲しいとお願いした.ドライバーは快く「いいよ」と言ってくれたが,「だけどこの店で,一万円札でお釣りがあるかなー」とも言った.そしたらどうしよう.
 ところがその店で袋入りの名産鳴門ワカメを買った私が「細かいのなくて一万円札なんですけど,いいですか?」と言うと,店主のお婆さんはニコニコと笑顔で「はいはい,いいですよ」と言い,釣銭を数えながら,ワカメの水洗いの仕方や料理方法まで教えてくれた.まことにありがたい.
 
 バスに戻り,千円札を両替機に入れて崩し,終点までの運賃を箱に投入しようとすると,ドライバーは美術館前までの運賃でいいよ,と言った.そして
「美術館前で降りるつもりだったんだろ? だったら美術館前まで送ってやるよ」
と言った.
 徳島のバスは時代遅れかも知れないが,運転手はとても親切なのであった.そして土産物屋のお婆さんも.
 以前,四国の遍路旅に関する本を読んでいたら,四国の人々には旅人に親切にすることを当たり前に思う気風があると書かれていた.四国はいいところだ.
 
 さて到着は遅れてしまったが何とか美術館に入館できた.
 そもそもこの大塚国際美術館は,世界中の名画のレプリカを美術陶板で製作し展示しているという他に類を見ない特異な美術館である.美術陶板は,デジタルデータを基に陶板上に釉薬で絵画を模写し,焼成して製作する.印刷物のレプリカのように同じものを多数作ることが可能ではなく,模写の仕上げは手仕事である.また,絵具の代わりに釉薬を用いるから,製作の際にリアルタイムで色調や質感を確認できない.従ってこれはもう職人芸だ.
 
 大塚国際美術館の設立の趣旨は,同美術館公式サイトのコンテンツ『一握りの砂』に書かれている. 私がこの連載の冒頭に
他にも多くの大企業が芸術文化活動を行っているが,その会社の本業を基盤にしているものは少ない.その少ない例の一つが大塚国際美術館だ
と書いたのはこの設立趣旨のことである.
 実に千点を超す実物大陶板レプリカが大小様々な展示室に掲げられている様は圧巻と言う他ない.団体客は代表的なレプリカの前だけを通り過ぎるようにして鑑賞していくが,私は一つ一つゆっくり観ていったので,正直なところを言えば閉館退出する時にはかなり疲れた.観残した作品も多いので,またいつか再訪したい.
 
[追記1]
 館内に昼食を摂ることのできるレストランは一つ (「レストラン・ガーデン」) しかないが,観光バスでやってくる団体客は館外にある他の食事処で食べるのであろう.このレストランは混んでいなくて,私は待たずに食べることができた.
 メニューは多くない.私が注文したのはワンプレートの料理にパンとグラスワインが付いた「最後の晩餐 1,800円」である.公式サイトのレストラン・ショップ案内には
ここでしか味わえない!名画にちなんだメニュー
 レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」をもとに、鯛や阿波黒毛和牛、わかめ、レンコン、金時芋など徳島の食材を使った当館オリジナルの晩餐メニューです

とある.晩餐メニューとはいうものの,このレストランの営業時間は午後三時半までである.従ってこの料理は,晩餐ランチというわけわからぬ逸品である.ちなみに,「最後の晩餐」なのはパンとワインだけであり,瀬戸内の鯛や阿波黒毛和牛,鳴門のわかめ,阿波のレンコンや金時芋をキリストが口にしたというエビデンスはないことを指摘しておく.
 
[追記2]
 ミュージアムショップには楽しいお土産がたくさん用意されている.公式サイトに載っていないが,私はホワイトボードとか冷蔵庫のドアに使うマグネットを買った.
 
20180325magnet

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