糖質制限食本・補遺(九)
前回の記事《糖質制限食本・補遺(八) 》では,「高齢者はコレステロール値が高いほうが健康長寿である」という新開氏の主張の根拠として,同氏が示したデータ『総コレステロールと寿命の関係』は,(1) 「寿命」として生存率を用いているが,生存率は健康とは無関係であるから,健康長寿に関する調査データとしてはそもそも不適当であること,(2) さらに,観察期間がわずか八年しかなく,健康長寿を云々するデータとしては余りにも短期間の調査資料であること,を挙げて批判した.
次に,新開氏の医師として研究者としての不誠実さを指摘する.
[C]
再度,《常識が変わる!シニア世代の食生活 あなたの親は大丈夫? 》にある《総コレステロール値と寿命の関係》というグラフを見てみよう.
既に述べたように,このデータは六十五歳以上の観察対象者を総コレステロール値が「高い人 (男 209以上;女 230以上)」「やや高い人 (男 185~208;女 207~229)」「やや低い人 (男 157~184;女 183~206)」「低い人 (男 156以下;女 182以下)」の四グループに分けて八年間追跡観察し,縦軸を累積生存率,横軸を追跡年数としてプロットしたものである.
下に《総コレステロール値と寿命の関係》を撮影した映像を再掲する.鮮明なグラフは《常識が変わる!シニア世代の食生活 あなたの親は大丈夫?》中の図を参照して頂きたい.
中学受験塾で有名な日能研が,電車内広告で私立中学の受験問題を紹介 (例えばこんな広告) しているが,それを模して書くと↓のような問題になる.
[問]
グラフ《総コレステロール値と寿命の関係》を見て,グラフに示されている内容として正しいものは次のいずれですか.
<A>
総コレステロールが「高い人」のグループは,観察開始後八年後の生存率が,「やや高い人」「やや低い人」「低い人」の三グループよりも高い.すなわち高齢者は総コレステロール値が高いほうが長寿である.
<B>
総コレステロールが「低い人」のグループは観察開始後八年間,七十三歳までに生存率の低下が見られるが,総コレステロールが「高い人」「やや高い人」「やや低い人」の三グループ間では,生存率の差はない.
新開氏の主張は<A>だが,もちろん正解は<B>である.これほど明解なデータであれば,有意差検定を行うまでもなく,総コレステロールが「高い人」「やや高い人」「やや低い人」の三グループ間で生存率の差はないとしてよい.
偏差値の高い中学を受験する生徒なら全員が正解するだろう.新開氏は,自分のデータを使った問題を間違ってどうする.(笑)
なぜ新開氏だけが不正解なのか.(爆)
たぶん新開氏の学力が中学生以下なのではない.
氏は「朝からテレビを見ているような視聴者には何を言ってもわかるまい」とナメているのである.
ところが,朝からテレビを見ているような老人 σ(^_^;) でも騙すのは簡単ではないのである.
(続く)
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