« Goodbye Brother | トップページ | ローソンのブランブレッド »

2017年9月 3日 (日)

糖質制限食本・補遺(八)

 前回の記事《糖質制限食本・補遺(七) 》の末尾を再掲する.

柴田「でも今まで,(私たちが) 若い頃は,コレステロールが高いと健康長寿じゃないって言われたわけでしょ? なんでそう急に変わるんですか?」
 新開「あ,そういう長い期間の追跡調査ってないんですよ実は」

 この新開氏の発言を聞いて柴田理恵さんは,しばし茫然とした.
 従来,学者や身の回りの医師たちが私たちに「コレステロール値が高いと健康長寿になれない」と説明してきたことが,実は全く何の根拠のないことだったと,新開氏が悪びれもせず平然と言い切ったからである.
 医師という職業に信頼感を持っている一般人であれば,誰だって新開氏の鉄面皮に茫然とするだろう.しかし医師にも色々ある.言うまでもなくほとんどの医師は誠実であるが,健康に係る研究分野には,ほとんどペテン師に近い者たちがいるのである.

 私は新開氏が「ほとんどペテン師」だと上に書いたが,それはどういうことか.
 《常識が変わる!シニア世代の食生活 あなたの親は大丈夫? 》の概要を載せているページの中に,《総コレステロール値と寿命の関係》というグラフがある.六十五歳以上の観察対象者を総コレステロール値が「高い人」「やや高い人」「やや低い人」「低い人」の四グループに分けて八年間追跡観察し,縦軸を累積生存率,横軸を追跡年数としてプロットしたものである.これは東京都健康長寿医療センター研究所が発行した『健康長寿新ガイドライン・エビデンスブック』(2017年) の p.4 にある図5を引用したものである.
 細かいところは上述のリンク先を見て頂きたいが,当日の放送画面を撮影してトリミングしたものを下に示す.

20170902a

 さて,新開氏が柴田理恵さんに,これまで医師や学者たちが「コレステロール値が高いと健康長寿になれない」と説明してきたことが,実は全く何の根拠のないことだったと語り,柴田さんが驚いて二の句を継げずにいると,慌てた若い局アナが場を取り繕うようにして次のように発言した.

局アナ「ただですね,新開さんが研究されたデータで,コレステロール値が高いというものが,高いほうがいいと証明されるものがあるんです.それがこの『総コレステロールと寿命の関係』なんです」

 この若い局アナは台本を読んでも,かわいそうに何のグラフやら理解ができなかったと見えて,説明がシドロモドロで《コレステロール値が高いというものが,高いほうがいいと証明されるものがあるんです》はまるで日本語になっていないが,それは生放送だから不問に付す.
 が,問題はそのグラフ『総コレステロールと寿命の関係』だ.
 新開氏は番組中で『総コレステロールと寿命の関係』を示しながら,高齢者はコレステロール値が高いほうが健康長寿なんですと語ったのだが,これは大嘘である.これを逐次解説しながら新開氏の詐欺師ぶりを明らかにしていく.

[A]
 まず,新開氏は,健康長寿の指標として累積生存率を用いているのだが,頭がおかしいのではないか.(生存率曲線については Wikipedia【生存率曲線】を参照のこと)
 つまり生存率が表現しているのは「まだ生きているかもう死んだか」だけである.健康という概念が入り込む余地はない.すなわち,認知症が進行していようが,末期のガンであろうが,生きている観察対象者は,生存しているほうにカウントされるのである.
 であるから,健康長寿の指標としては,生存率ではなく,「自立して生活している健康な人の割合」でなければならない.
 しかるに何故に新開氏は,健康とは無関係な生存率を指標にしておきながら,これが恰も健康長寿の指標であるかのように話をでっちあげたのか.
 実は『健康長寿新ガイドライン・エビデンスブック』は一般書店では入手できない書籍である.また購入する価値があるとは思えないので入手して子細に検討はしていないが,生存率を指標にした理由は,健康人の割合を指標にすると何か都合の悪い事実があきらかになってしまうからという理由が考えられる.

[B]
 次に,追跡観察期間の短さに関する疑問だ.
 『総コレステロールと寿命の関係』における観察開始は,対象者が六十五歳の時であるから,観察終了の八年後でもまだ七十三歳である.
 先月発表された2016年の日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳であるが,この数字も健康状態と無関係だという問題はあるものの,一般国民の感覚からすると,男は八十歳まで生きられれば人並みである.
 そして,長寿とは何歳のことですかと質問されれば,おそらくほとんどの男は九十歳と答えるだろう.百歳はとても叶わぬ望外のこととして,まためでたい長寿の九十歳は無理かも知れぬが,しかしせめて八十五までは生きたいなあ,生きられればいいなあと皆思っているだろう.
 しかるに新開氏の調査研究は,呆れたことに七十三歳までの観察しかしていないのである.七十三歳では,長寿を云々する以前の,入口にも達していないのである.
 柴田理恵さんには,これまで健康長寿と総コレステロールの関係に関する長期間にわたるデータはない (実はこれが大嘘.後述する) と言っておきながら,自分の研究はわずか八年しかやっていないのである.ペテン師の面目躍如とはこのことだ.
(続く)

|

« Goodbye Brother | トップページ | ローソンのブランブレッド »

続・晴耕雨読」カテゴリの記事

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/505081/65744796

この記事へのトラックバック一覧です: 糖質制限食本・補遺(八):

« Goodbye Brother | トップページ | ローソンのブランブレッド »