« 2017年8月 | トップページ

2017年9月

2017年9月22日 (金)

BCL 残照 (一)

 先日,使用済みで不要になったハードディスクが七台にもなってしまったので,秋葉原に行って破壊してもらうことにした.
 ハードディスクは,以前はソフマップあたりが有料で破壊処理していたのだが,最近は無料でやってくれる小さな店がある.幾つも破壊処理するとバカにできない費用になるので,無料サービスはありがたい.これからは何か買うときは,ソフマップではなくその店にしようと思う.
「何個ありますか」と感じの良い女性店員さんが訊くので「七個です.いつの間にかたまっちちゃうんですよね」と言うと,「ですよねー,この間は九つも持ってきたお客さんがいましたよー」と彼女は言った.

 破壊してもらったお礼を店員さんに言い,その店を出てすぐ近くのドスパラのパーツ店に行って驚いた.
 あれほど広かった店舗の面積が,見る影もなく大幅に縮小されていたのである.
 そして品揃えは全くもうだめになっていた.私は若い男の店員をつかまえて Windows10 のDSP について少し話をしたのだが,店員としての覇気がまるでなく,商品知識が少なくて頼りない.価格も高い.ドスパラって,もしかすると実店舗はもうダメなのかも.私もドスパラは通販を利用することが多いし.

 ドスパラの次は真空管屋を梯子した.
 買いたい球があるというわけではなく,美しい欧州の古典管を眺めるのは目の保養だからである.
 最後はラジオセンターの内田ラジオに足を向けた.
 真空管ラジオのパーツは,稀に未使用の美品が出ることがあり,そんな珍品を内田ラジオで発見したら,要不要にかかわらず買っておかねばならない.こういうものは一期一会だ.
 だが,先程のドスパラにも驚いたが,センターの二階から内田ラジオがなくなっていたので,もっと驚いた.
 あとで調べたら,内田ラジオは一年以上も前に閉店したらしい.秋葉原電気街で最も有名な店主であった内田夫人はどうされたのだろう.お元気ならよいが.
 しかし内田ラジオはなくなったが,その跡の空いたスペースに入っている新しい店は,内田ラジオと全く同じテイストの店だった.ラジオ用真空管もあるし穴開け加工済の五球スーパー用シャーシもある.内田ラジオが店名を変更したのだと言われれば信じてしまいそうだ.これなら当分は秋葉原をウロつく楽しみに困らない.よかったよかった.

 で,その店の棚を見ると,トリオの通信型受信機 9R-59  (参考までに他の人のサイトに掲載されている 9R-59 の取説を紹介させて頂く) が陳列されていた.真空管式通信型受信機が全盛期だった頃の名機である.
 その陳列品は外観がとてもきれいであった.店の人に確認はしなかったが,ひよっとしたらリストア済品かも知れない.この 9R-59 は私がラジオ少年だった頃の憧れの機種だったのだよねーと,思わず遠い目になった.
 値段は四万円以上するのだが,もしこれがリストア済だったとすると少し高いという気がしないでもない.この種の,もはや性能的に実用機とは言い難い受信機は,自分で修理してノスタルジーを楽しむところに価値があると思うからだ.
 私は「買います」と喉から出そうになるのをぐっと堪えて,次に内田ラジオの斜め向かいの店に入った.
 そこで私は,往年の松下製 BCL ラジオ"PROCEED 2600",型番 RF-2600 が棚の最上段に陳列されているのを見た.ポップに「S級美品 調整済」と書かれていた.
 TRIO 9R-59 の次が PROCEED 2600 ときたか.ボクシングに喩えれば,第三ラウンドが始まるや否や,顎に一発食らったあとにワンツーパンチでボディブローを打たれてマットに膝から崩れ落ちた気がした.
 松下の BCL ラジオはクーガー・シリーズの製品が余りにも有名だが,それとは別のブランドでプロシード・シリーズがあった.そのうちの PROCEED 2600 は,BCL 趣味が最盛期を過ぎた頃の傑作機である.(また他人の褌で恐縮だが,資料サイトを一つ御紹介する)
 ソニーのスカイセンサー ICF-5900 を例えば陸軍一式戦「隼」とすれば,松下のクーガー2200 (資料サイト) は海軍零式艦上戦闘機であり,そしてプロシード2600は BCL 時代の最後に本土防衛の任に就いた紫電改であった.
 高雄基地駐留帝国海軍第701飛行隊の生き残り,滝城太郎一飛曹は,松山343航空隊,通称「剣部隊」に編入され,紫電改に搭乗して国土防空に奮戦するが,終戦を目前にして特攻に出撃したのである.
 意味わかりませんか.そうですか.私もわかりません.

 ともあれ,かつてラジオ少年たちが深夜,海外への憧れを胸に各国からの日本語短波放送に耳を傾けた BCL の時代が終わり,我が国のアナログラジオ設計製造技術はこれ以後衰退の道を辿った.トランジスターラジオ・メイドインジャパンの昔日の栄光は今やソニー ICF-EX5MK2 ただ一機の上に残照するのみである.

 そんなことを考えながら私は,腹の底からふつふつと湧き上がる物欲に耐えつつ自問した.
 本当にこれが欲しいのか? インターネットが短波放送の命脈を絶ったのに,今更 BCL をして何の意味がある?

(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月21日 (木)

かわいそうな大磯の中学生 (二)

 昨日のテレビ報道その他によれば,神奈川県大磯町の中学校の給食に異物混入が多発している問題で,大磯町の中崎久雄町長は,原因が特定されるまでは給食業者を変更しない考えを示した.
 どういうことかというと,弁当給食の導入以来これまでに判明した異物混入事故は84件だが,弁当製造工場側が製造ラインでの混入を認めたのは15だけで,残りは責任を認めていないことが背景にある.
 生徒の保護者がSNSで発信した情報によると,ある教育委員会関係者は,異物混入は生徒による「ヤラセ」というかマッチポンプであるとの認識を持っているという.弁当業者には責任がない,悪いのは,自分たちが弁当に異物を入れておきながら騒ぎ立てている生徒たちだというわけだ.

 だが長年食品工場の衛生管理を指導してきた経験からして,弁当業者が責任を認めた15件の異物混入だけで,もう十分にこの業者は給食製造を受託する資格がないと私は断定する..
 東京には会社を相手に弁当を製造配達する業者が大変に多く激しい競争をしているが,一年半で15件も異物混入事故を起こしたら,全顧客が取引をやめるに違いないし,場合によっては保健所に届けるであろう.保健所の指導を受けたとか,営業停止を命令されたなどの評判が立てば,それで弁当屋商売は終わりである.

 ところが中崎久雄町長と教育委員会は,原因が特定されるまでは給食業者を変更しないという.
 原因が特定されるまで給食業者を変更しないという理由は,上に述べたように弁当への異物混入は生徒たちがやったことだと,町長と教育委員長が考えているからに他ならない.
 ここで異物混入の調査について簡単に説明しよう.
 食品会社に消費者から異物混入のクレームがあった場合,その消費者から届けられた混入異物の調査を行う.
 異物が金属や樹脂片などであれば,高度の分析設備と鑑定技術を有する機関があるので,そこに依頼して分析してもらう.
 虫の場合は,食品工場の衛生管理と指導を受託する民間会社が鑑定技術を有しているので,日頃から指導を受けているそれらの会社に頼んで鑑定してもらう.虫の場合は生きているときに混入したのか死んでから混入したのかが大変重要なので,普通は鑑定技術を持っている会社に依頼する.
 異物混入事故の件数のかなりの部分を占めるのは人の毛髪で,これの混入経路の調査はかなり難しい.なにしろ髪の毛一本ではできる分析あるいは調査がかなり限定されるからだ.
 教育委員会が持っている混入異物の資料をネットで見た限りでは,今後,大磯町や弁当業者たち食品衛生の素人が寄ってたかって調べても,異物の混入経路が判明するのは期待薄である.

 大磯町立中学校の弁当給食に混入した異物の混入原因を調査すると町長は言うが,これまでに工場側が認めた15件もの異物混入事故は,この業者には学校給食を受託する能力がないことを示している.
 業者に給食受託の能力がない.これが異物の混入原因に他ならない.調べるまでもなく明らかなのである.
 そして問題の解決方法は,この業者との契約を破棄することしかない.
 一部でつぶやかれているように,当該業者と中崎久雄町長の間には何らかの関係があるのではないか.そうでもなければ,異物混入原因が判明するまで,生徒の健康よりも業者との取引を優先するということの説明が困難である.
 町長が狙っているのは,時間稼ぎだろう.弁当業者との取引をそのまま継続して,騒ぎが沈静するのを待つつもりと思われる.

 昨日の記事には書かなかったが,実は綾瀬市にある弁当工場から大磯の中学校までの配送は,チルドではなく19℃以下の常温配送であるという.
 有体に言えば,弁当工場で異物混入を防止するのはたやすいことである.
 どうすればいいかは,教科書に書かれているくらいだし,勉強して書かれていることを実践すれば,異物混入は容易に根絶できるのである.なぜかというと「異物」は目に見えるからだ.
 ところが目に見えない「異物」があって,それはつまり食中毒菌などの病原微生物である.病原微生物の制御はなかなか難しい.
 難しいが,食品衛生の基本に忠実であれば,できないことではない.現に例えばコンビニ弁当を作っている業者などはきちんとやっている.
 しかるに件の業者は,異物混入を多発させる不潔な弁当屋のくせに,夏場に綾瀬から大磯まで弁当を常温配送するなどは信じがたい暴挙である.いい度胸をしているし,それを許している大磯町教育委員会には呆れて言う言葉もない.よくまあこの夏に中学校で集団食中毒が起きなかったものだと思う.幸運としか言いようがない.
 大磯町立中学校生徒の保護者の皆さんは,子供たちが食べている給食弁当の菌の数 (一般生菌数という) を調べたほうがいい.調べてくれる機関は保健所が紹介してくれるだろう.
 今日も明日も大磯の中学生たちは,愚かな町長のおかげで,食中毒の危険に毎日さらされているのだ.まことにかわいそうである.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月20日 (水)

かわいそうな大磯の中学生 (一)

 先日来,神奈川県大磯町が町立中学校二校に昨年一月から導入した配達弁当方式 (業者委託の米飯給食) の給食に,異物混入の多発と多量の食べ残しが出ている問題が,マスコミやネットで物議を醸している.

 関西の料亭経営者らが政府農水省と結託して我が国の食文化の伝統を歪曲し,日本の料理の観光資源化を目論んでカッコ付の「和食」をユネスコ無形文化遺産に登録して以来,国民栄養に関する見識のない各地の教育委員会で米飯給食が推進されている.
 私は学校給食で米飯を主食とすることに強い反対意見を持っているのだが,このブログ記事では米飯学校給食の是非は取り合えず論じないとしても,もし学校で米飯給食を行うならば,児童生徒の健康栄養に責任を持って米飯給食の提供を実施できるよう学校に衛生的な給食設備を作り,食品衛生の専門家を配置して実施する必要があると考える.パンのほうが米飯より衛生管理が行き届き易いためアウトソーシングが容易で,かつ献立の栄養設計もパン食のほうが容易であり,米飯給食はその逆だからである.

 しかし,なにしろ教育委員会という組織には学校給食に関する知識も見識もないらしく,実際には各地の低レベル (非衛生的) な給食弁当業者 (要するに非衛生的ということは委託費が安いということ) に丸投げをしているのが実情であるようだ.
 報道では,大磯町立中学校に給食弁当を導入するにあたっては,業者選定のために,同町教育委員会による競争入札が行われたという.
 しかし大磯町が,学校給食の弁当を委託製造する業者を競争入札で選定したということ自体が,同町教育委員会の頭のレベルの低さを示していると指摘せねばならない.
 集団給食業者の給食受託費と提供される給食の衛生度は,トレードオフの関係にある.
 つまり当然ながら厳しい衛生管理はコストを押し上げ,そのコストを下げるには業者の高い技術力が必要になるのだが,給食業者の技術力の水準を評価するには,受託費の競争入札は不適当なのである.給食業者を選定するに際しては,当該業者の食品衛生技術力をまず第一に考慮しなければいけない.これは集団給食の基礎だ.
 また,大磯町中学校の給食に異物混入が多発し,大量の食べ残しが発生していることをネットで告発した生徒保護者らがつぶやいたところによれば,大磯町から中学校給食を受託した給食業者 (大磯町から遠く離れた綾瀬市の「エンゼルフーズ」) の決定は,大磯町長の独断によるとの黒い噂がある.
 この噂は大磯町の町政の問題であるから,ここでは横に置いて触れないことにするが,そもそも大磯町の中学校に学校給食が導入される当初から問題含みであったらしい.

 給食業者の問題はそれとして,報道によれば,大磯町の中学校給食は献立作成を教育委員会にいる栄養士が担当しているらしい.
 しかし栄養士というのは管理栄養士と異なり,修業年限二年乃至四年の栄養士養成施設を単位取得卒業すれば都道府県知事の免許を受けてなれるのである.管理栄養士が,管理栄養士修業年限四年の管理栄養士養成施設を卒業して管理栄養士国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受けた者であるのに比較すると,成長期の子供たちの食事設計を担当させるにはいささか心許ない.
 案の定,その担当者は何か心得違いをしているようで,学校給食なのに病院給食のような減塩献立を作成しているのだそうだ.
 それがために生徒たちからは「まずい」と酷評され,これが大量の残飯が発生する理由の一つになっているとのことである.
 私がテレビで見たある日の中学校給食弁当は,テレビカメラがアップした映像は実に情けない貧相なものであった.
 おかず入れの容器に,いわし団子 (つみれ) が二つほど入ったカレー汁が少量 (カレースプーンに三杯くらいか) 入れてあり,これが「主菜」らしい.副菜として大豆の煮豆がやはり少し.あとは野菜のお浸しか和え物のように見えるものがこれまた少し.
 飯は弁当箱に白飯が詰め込んである.おかずは少ないのに米飯だけは量が多い.
 おかずも飯も,弁当業者が綾瀬市にあり,大磯まで配達するまでに冷たくなっているという.しかも減塩だ.
 私が報道画面を見て思ったのは,昭和三十年代の私の小学校時代の学校給食より貧相なこんな昼飯を,今の子供たちが喜んで食うわけがないということだった.
 しかも,大磯町の中学校の給食弁当は,まずくて栄養的に貧相なだけではない.異物が混入しているのである.中学生徒の保護者の声 (SNS) によると,これが大量の残飯が発生する理由の二つ目であるという.

 この問題を報じた今日の朝日新聞デジタルの記事《髪の毛・小バエ…異物混入84件 給食食べ残し問題 》に次のような箇所がある.(←数日でリンク切れになるが)

町は、味や冷たさのほか、異物混入による不信感も食べ残しの一因とみている。全員協議会では、議員から「異物の心配がある給食を今後も子どもたちに食べさせるのか」、「製造業者を代えるべきだ」との批判が相次いだ。野島健二教育長は「混入防止のため委託業者にすべての弁当を写真撮影させ、衛生管理を徹底させる」と  (町議会全員協議会において <←ブログ筆者註>) 述べた。

 作った全部の弁当の写真を撮影することが,どうして衛生管理の徹底につながるのか.
 ひょっとしたらこの教育長,馬鹿ではないか.こんな教育長だから生徒たちに異物入りのまずい弁当を食わせることになったのである.大磯町の中学校給食弁当を巡る事態はさらに混乱を深めるであろう.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月17日 (日)

糖質制限食本・補遺(十二)

 前回の記事《2017年9月11日 糖質制限食本・補遺(十一) 》の末尾を再掲する.

「悪玉コレステロール→動脈硬化」説を世間に広めた張本人はインチキ医者の他にもいて,それは食品業界である.とりわけ健康志向の商品やサプリメントを製造販売している会社が酷い.
 現在では一般向け百科事典にも《以前は悪玉コレステロールとも呼ばれたが、現在では否定されている》と書かれているにもかかわらず,未だにこんな嘘八百を書きまくっている食品会社がある.元食品企業にいた者として,平然と消費者をたぶらかすこの会社には恥を知れと言いたい.

 昭和の終わり頃,低密度リポタンパク質すなわち LDL を「悪玉コレステロール」,高密度リポタンパク質すなわち HDL を「善玉コレステロール」と呼んで,私たちの体の血漿 (血液を遠心分離した上澄の液体;この上澄にリポタンパク質が含まれている) 中の各種リポタンパク質を二種類に単純化して分類し,このうちの「悪玉コレステロール」が動脈硬化の原因であるという虚説を似非医者や無責任な食品企業が広めた.

 そもそもリポタンパク質は,コレステロールを構成成分として含んでいるだけであり,コレステロールとは別物なのである.
 しかるに似非医者や悪質無責任な食品企業は無知無学であるから,リポタンパク質とコレステロールを混同してしまった.
 さらにその上に彼らは,LDL が動脈硬化の原因だなどとしたものだから,リポタンパク質と健康に関する私たちの理解は大きく混乱したのであった.

 この混乱は現在でも尾を引いていて,勉強不足の開業医や,知ったかぶりな一般人のブログに「コレステロールは生体を構成する大切な成分ですから,善玉も悪玉もありません」などと一見するともっともらしいことが書かれているのを目にすることが多いが,しかしこの文章自体が,彼らが細胞 (の膜構造) に含まれているコレステロールと,血漿リポタンパク質を混同していることを示しているのだ.この混同はかなり根深く浸透しており,もはや取り返しがつかないかも知れないと思われる.

 さてコレステロールとリポタンパク質とを混同する誤りの主たる原因は,測定法に対する無理解にあったと思われる.
 血漿リポタンパク質の測定法 (分析法) は,臨床検査技師にとっては基礎知識中の基礎知識であるが,その一方で,医師でも理解していない人がいる.間違った健康知識を書きまくっている一般人のブログなんかは言うまでもない.

 リポタンパク質の測定法の原理は大雑把に言うと,表面に親水性タンパク質が存在する球状構造をしているリポタンパク質 (表面には親水性タンパク質の他にコレステロールの持つ水酸基も露出しているが,内部には,脂肪酸とエステル結合した"コレステロールエステル"と,トリアシルグリセロール <つまり脂肪> がある) に,ある種の界面活性剤を作用させると,リポタンパク質の構造が破壊されて,中に含まれているコレステロールおよびコレステロールエステルが酵素反応を受ける状態になる (この状態を一般にミセル化コレステロールと呼んでいる) ことを応用する分析方法である.

 ミセル化コレステロール状態のコレステロールエステルは,これを分解する酵素であるコレステロールエステラーゼと反応させて脂肪酸を分解除去し,コレステロールにする.
 このコレステロールと,リポタンパク質中に元から存在したコレステロールに対して,コレステロールを酸化する酵素であるコレステロールオキシダーゼを作用させる.
 この酵素反応により過酸化水素が生じるので,この過酸化水素に発色試薬を加えて呈色反応を起こし,吸光度を測定して定量する.(過酸化水素の定量法は種々あるので詳しい説明は省略する)
 これが血漿中リポタンパク質の測定原理であるが,つまり,血漿中のリポタンパク質の量 (実際には濃度;例えば HDL の濃度) をコレステロールの量 (実際には濃度;例えば HDL-コレステロールの濃度) で表現しているわけだ.

 では,実際の血漿中のリポタンパク質は HDL 他の混合物であるから,これをどうやって区別して測定するかが次に問題となる.
 これまたブログのレベルでは詳しい説明を省略せざるを得ないが,種々の分離手段 (超遠心法,電気泳動法,ゲルろ過HPLC法など) で各リポタンパク質を分離し,それぞれに含まれるコレステロールを分析すればよい.しかし簡便性と費用の点から,実際には上に述べたコレステロール分析の際に,複数の界面活性剤を巧妙に用いて HDL と LDL を区別して測定する方法が開発されて測定キットが販売されている.

 以上が血漿リポタンパク質の測定方法であるが,これにより測定される HDL-コレステロール と LDL-コレステロールの意味はよしとして,では総コレステロールとは何か.
 次にそれを説明する.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月12日 (火)

見よ昭和の底力

 私の居住地域では,msnに掲載されている天気予報 (提供 Foreca) によると今日は曇り時々晴れであったはずで,しかも本日13:30現在も「晴れ降水確率20%」となっているが,窓の外は土砂降りである.
 天気予報って,外れても謝らずに素知らぬ顔ができるから,仕事の品質がいつまでも向上しない.ま,いい商売だなあと思う.

 それはさておき,少し前に,私んちの台所でコバエ (分類不明,体長約1mm) が大発生し,冷蔵庫の中でも繁殖を始めてしまったという記事を書いた.
 冷蔵庫の中は,清掃を行うことで繁殖を止めることができた (巣はみつからなかったが).
 だがキッチンの中で飛び回っているやつはどこで増えているのかわからない.
 シンク回りもゴミ箱も清掃したがだめである.
 かくなる上は,衛生害虫の発生源を絶つという食品衛生の基本を暫し横に置いて,対症療法を行うことにした.
 用意した資材は「KINCHO コバエがポットン 置くタイプ」と「カモ井の <吊るすだけ> 」の二つ.
 キッチンの棚の下から「カモ井の <吊るすだけ>」を下げ,そのすぐ下に「KINCHO コバエがポットン 置くタイプ」を二個置いた.
(「KINCHO コバエがポットン 置くタイプ」は,アマゾンの購入者レビューで「臭すぎる」「全く捕れない」「がっかり」「詐欺」と破滅的な評価を獲得した商品で,そのせいか現在はニューモデルが登場している)

 私の観察によると,件のコバエは「KINCHO コバエがポットン 置くタイプ」に誘引はされるらしく,コバエたちはその周囲を楽し気に飛び回ってはいたが,中に入ろうとはしなかった.
 我ときてあそべや親のないコバエ
 なんだそれは.
 しかし飛び回っているうちに「カモ井の <吊るすだけ>」に粘着され,短い生涯を終えてしまうのであった.
 おもしろうて やがてかなしきコバエかな
 なんだそれは.

20170912kobae

 上の画像が「カモ井の <吊るすだけ>」の状況である.
 直下に置いた「KINCHO コバエがポットン 置くタイプ」にはわずか一匹が捕獲されていただけであった.
 この様子では,「コバエがポットン」の改良型も期待しないほうがよいとの私の結論である.

 それに比べると「カモ井の <吊るすだけ>」のコバエ捕獲力は驚くべきである.昭和三十年代,どこの庶民の家の天井からもぶら下がっていたカモ井の「ハイトリ紙」は,今も最強のハエ捕りツールなのであった.
 カモ井加工紙は,少女たち御用達のカワイイ「マスキングテープ」を作っていることで知られているが,同社の創業アイテム「ハイトリ紙」が健在であることを皆さんと共に喜びたい.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月11日 (月)

糖質制限食本・補遺(十一)

 前回の記事《糖質制限食本・補遺(十) 》の末尾を再掲する.

そういう強面の一般老人の目から見て,東京都健康長寿医療センター研究所で指導的立場の地位に就いている新開省二氏のコレステロールに関する知識レベルは,実にお粗末の一言に尽きる.
 そのお粗末振りを示すためには,そもそもの話から始めねばならない.
 そもそも総コレステロールとは何か.

 そもそも総コレステロールとは何か.
 自然学の専門家 (研究者,技術者,文筆家など) が学術用語を一般の人に対して用いる際に,不正確な言い換えを行うことがある.
 日常語「コレステロール」はその身近な一例である.「体脂肪を燃焼 (この「燃焼」は比喩であって,科学の言葉ではない) させる」などもそうだ.
 正しい意味の「コレステロール」は化学の学術用語であり,ステロイドと称される大きな化合物群の,その中のステロールと呼ばれるサブグループに属する有機化合物の一種である.
 ステロールには多数の種類があるが,ステロールの基本的な骨格を下の図に示す.学生時代に有機化学を学んだ人には忘れられない構造だ.

350pxsterolsvg

 次にコレステロールの構造を立体化学 (ここでは特に説明の必要はないので省略) も含めて示す.これをすらすらと描けるのは大学とか企業で現在も化学に携わっている人だろう.
Cholesterol_with_numberingsvg

(上の二つの図はいずれも Wikipedia【ステロール】,同【コレステロール】 から引用したパブリックドメインの画像である)

 コレステロールという有機化合物についての説明はここまでとする.なぜなら,医師や私たち一般人が日常語でコレステロールと呼んでいるものは,実は別の物質だからである.
 その別の物質とは,リポタンパク質という.
 Wikipedia【リポタンパク質】から,まずリポタンパク質の概略説明を引用する.

リポタンパク質(リポたんぱくしつ、英語: Lipoprotein)は、脂質が血漿中に存在する様態で、脂質とアポタンパク質が結合したものである。
脂肪酸のような分極した分子を除き(遊離脂肪酸)、脂質を血漿中に安定に存在させるには、タンパク質(アポタンパク質と呼ぶ)と結合させる必要がある。リポタンパク質は、トリアシルグリセロール(トリグリセリド、中性脂肪)および、細胞の生命維持に不可欠なコレステロールを多く含む球状粒子である。カイロミクロン(キロミクロン)、超低密度リポタンパク質(英語版) (VLDL)、中間密度リポタンパク質(英語版) (IDL)、低密度リポタンパク質(英語版) (LDL) 、高密度リポタンパク質(英語版) (HDL) の各種類があり、比重が大きいほどアポリポタンパク質の割合が高く、逆に脂質の割合が低い。

 上の引用箇所にあるように,リポタンパク質には幾つかの種類があるが,その中でも私たちの疾病と健康に関して重要な意味を持つ低密度リポタンパク質 (LDL) について,同 Wikipedia【リポタンパク質】から引用する.
 下の引用部分では,重要なところを原文の文字色を変えて強調した.

低密度リポタンパク質(LDL)
1.019 - 1.063 g/mL のリポタンパク質で、直径は 22 nm 程度。
リポタンパク質の中でコレステロール含有量が最も多く、末梢組織にコレステロールを供給する。以前は悪玉コレステロールとも呼ばれたが、現在では否定されている。最新のACC/AHAガイドラインでは家族性高コレステロール血症の患者以外ではLDLの目標値を設定するエビデンスはないとされている。apo B-100やapo Eを認識するLDL受容体を介して主に肝臓に取り込まれ異化される。
LDL受容体欠損症は家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)とよばれ、特にホモ欠損症では総コレステロール値が600mg以上にもなり思春期にも虚血性心疾患など重篤な動脈硬化症に至る。
LDLが酸化・変性・糖化することによってLDL受容体への親和性を失う(酸化LDL)。その場合、スカベンジャー受容体などを経てマクロファージに取り込まれ、マクロファージの機能を変化させることにより動脈硬化症を発症すると考えられている。
最近ではスモールデンス(sd-LDL)と呼ばれるLDL受容体への親和性を失い、小粒子ゆえに血管壁に浸透しやすい種類のLDLが虚血性心疾患に関与していることもわかってきた。粒子径は25.5nm以下である。比重で分画した場合1.040 - 1.063のLDLに相当する。

 昔から開業医の中には,自分で何か研究したわけでもないのに,他人が発表した学術論文を読み,あちこちからかき集めたネタで大衆向けの健康ハウツー本を出版して金儲けを企む不心得者がいた.今でもテレビのエンタメ系情報番組には,その種の単なる開業医が「名医」とか「権威」などと肩書で登場してもっともらしい蘊蓄を垂れている.
 そういう連中が流行らせたのが「悪玉コレステロール」であった.
 私はもうすぐ四十歳になろうかという頃,高度不飽和脂肪酸を含む植物由来の複合脂質が血中脂質に与える影響を調べていたことがあって,当時読んだ専門書には,既に「悪玉コレステロール」という呼び方が不適切であると書かれていた.二十年以上前の話である.
 当時の最新知見では既に,動脈硬化の主因は LDL そのものではなく,《LDLが酸化・変性・糖化することによってLDL受容体への親和性を失う(酸化LDL)。その場合、スカベンジャー受容体などを経てマクロファージに取り込まれ、マクロファージの機能を変化させることにより動脈硬化症を発症する》とされていたのである.
 だから,テレビや大衆向けの本で「悪玉コレステロール→動脈硬化」説を滔々と垂れ流すインチキ医者を,研究者たちは苦々しく思っていたのである.
 「悪玉コレステロール→動脈硬化」説を世間に広めた張本人はインチキ医者の他にもいて,それは食品業界である.とりわけ健康志向の商品やサプリメントを製造販売している会社が酷い.
 現在では一般向け百科事典にも《以前は悪玉コレステロールとも呼ばれたが、現在では否定されている》と書かれているにもかかわらず,未だにこんな嘘八百を書きまくっている食品会社がある.元食品企業にいた者として,平然と消費者をたぶらかすこの会社には恥を知れと言いたい.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 7日 (木)

糖質制限食本・補遺(十)

 前回の記事《糖質制限食本・補遺(九) 》の末尾を再掲する.

なぜ新開氏だけが不正解なのか.(爆)
 たぶん新開氏の学力が中学生以下なのではない.
 氏は「朝からテレビを見ているような視聴者には何を言ってもわかるまい」とナメているのである.
 ところが,朝からテレビを見ているような老人
σ(^_^;) でも騙すのは簡単ではないのである.

 問題がコレステロールのことだから,健康診断の血液検査についての話から始める.
 下の画像は,私の血液検査 (血液以外の検査も含めて,一般には生化学検査という) 結果の一部をトリミングしたものである.

Kensa_results

 検査結果が基準値を外れていると,各検査項目の結果数値の横に"H"あるいは"L"と印字されたり,基準値範囲にあるか,あるいは基準値よりも低いか高いかが結果欄に"*"などで印字される様式が普通だ.
 私の例では,中性脂肪が基準値からわずかに高くて"H"が打たれていますなあ.しかしあとは基準値範囲内だ.(基準範囲内にあることと,正常であることとは別の話だが)

 二十代の若い男性は,健康診断の血液検査で何か問題を指摘されるなんてことはあまりないだろうから,コレステロールに関する医学知識はほとんどないだろう.
 しかしこれが中年期に差し掛かると,夜討ち朝駆けの仕事の疲労が貯まって運動どころではなくなり,連日連夜の飲酒喫煙カラオケの結果,血液検査結果の基準範囲外欄に"*"が一つ増え,二つ増え,痛風の発作に怯えつつ遂には十数キログラムの内臓脂肪を蓄積して立派なメタボおやじとなるのだ.

 しかし会社員という種類の人間は転んでもただでは起きぬ.二十四時間戦える (死語) 会社員として必須のスキルである自己啓発の徹底教育を受けているから,ただ茫然と事態の悪化を眺めているわけではない.
 生活習慣病とは何かについてきちんと勉強し,コレステロールについての正確な知識を身に着けるのである.
 その結果,そこら辺の開業医と対等に議論できるほどの知識レベルに到達した者も少なくない.ただし,生活習慣病について深く学んでも,自分の生活習慣の立て直しがまた別の話であることは言うまでもない.

 そういうわけで,現役の頃は歩く生活習慣病とまでいわれた団塊爺さんたちをコレステロールに関して騙すのはかなり大変なのである.
 そういう強面の一般老人の目から見て,東京都健康長寿医療センター研究所で指導的立場の地位に就いている新開省二氏のコレステロールに関する知識レベルは,実にお粗末の一言に尽きる.
 そのお粗末振りを示すためには,そもそもの話から始めねばならない.
 そもそも総コレステロールとは何か.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 6日 (水)

糖質制限食本・補遺(九)

 前回の記事《糖質制限食本・補遺(八) 》では,「高齢者はコレステロール値が高いほうが健康長寿である」という新開氏の主張の根拠として,同氏が示したデータ『総コレステロールと寿命の関係』は,(1) 「寿命」として生存率を用いているが,生存率は健康とは無関係であるから,健康長寿に関する調査データとしてはそもそも不適当であること,(2) さらに,観察期間がわずか八年しかなく,健康長寿を云々するデータとしては余りにも短期間の調査資料であること,を挙げて批判した.
 次に,新開氏の医師として研究者としての不誠実さを指摘する.

[C]
 再度,《常識が変わる!シニア世代の食生活 あなたの親は大丈夫? 》にある《総コレステロール値と寿命の関係》というグラフを見てみよう.
 既に述べたように,このデータは六十五歳以上の観察対象者を総コレステロール値が「高い人 (男 209以上;女 230以上)」「やや高い人 (男 185~208;女 207~229)」「やや低い人 (男 157~184;女 183~206)」「低い人 (男 156以下;女 182以下)」の四グループに分けて八年間追跡観察し,縦軸を累積生存率,横軸を追跡年数としてプロットしたものである.
 下に《総コレステロール値と寿命の関係》を撮影した映像を再掲する.鮮明なグラフは《常識が変わる!シニア世代の食生活 あなたの親は大丈夫?》中の図を参照して頂きたい.

20170902a

 中学受験塾で有名な日能研が,電車内広告で私立中学の受験問題を紹介 (例えばこんな広告) しているが,それを模して書くと↓のような問題になる.

[問]
 グラフ《総コレステロール値と寿命の関係》を見て,グラフに示されている内容として正しいものは次のいずれですか.
<A>
 総コレステロールが「高い人」のグループは,観察開始後八年後の生存率が,「やや高い人」「やや低い人」「低い人」の三グループよりも高い.すなわち高齢者は総コレステロール値が高いほうが長寿である.
<B>
 総コレステロールが「低い人」のグループは観察開始後八年間,七十三歳までに生存率の低下が見られるが,総コレステロールが「高い人」「やや高い人」「やや低い人」の三グループ間では,生存率の差はない.

 新開氏の主張は<A>だが,もちろん正解は<B>である.これほど明解なデータであれば,有意差検定を行うまでもなく,総コレステロールが「高い人」「やや高い人」「やや低い人」の三グループ間で生存率の差はないとしてよい.
 偏差値の高い中学を受験する生徒なら全員が正解するだろう.新開氏は,自分のデータを使った問題を間違ってどうする.(笑)

 なぜ新開氏だけが不正解なのか.(爆)
 たぶん新開氏の学力が中学生以下なのではない.
 氏は「朝からテレビを見ているような視聴者には何を言ってもわかるまい」とナメているのである.
 ところが,朝からテレビを見ているような老人 σ(^_^;) でも騙すのは簡単ではないのである.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 5日 (火)

お笑い検査漬け

 知人からおもしろい話を聞いた.
 先日,何となく目に痒みというか違和感があるので,もしかすると花粉症かと思い,藤沢駅の近くにある眼科に行ったのだそうだ.
 ネットで事前に調べたところでは若い女医一人でやっている眼科なのだが,入口を入ると受付窓口に三人もいて,看護師は少なくとも五,六人はいそうな雰囲気だったとのこと.
 で,診察の前になぜか視力検査と眼圧の検査をされた.
 そのあとで診察してもらって目薬をもらい,一週間後にまた来るようにとのことだった.

 一週間後に再診に行くとも再び視力検査と眼圧の検査があった.看護師に「先週やりました」と言うと,「先生の指示ですので…」と言った.
 診察の順番が来たので,眼科医に「なんで目が痒い症状なのに,毎回視力と眼圧の検査をするのですか」と問うと,視力が安定しているとわかったら頻度を下げますと言う.
 これでは答えになっていないし,納得できないからもうその眼科にはいかないと知人は言った.
 こういう医師がいるのでは,国の医療費を削減するのは,なかなか大変なことであるなあ.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ローソンのブランブレッド

 少し前の記事《2017年8月25日 ノーコンセプトのパン 》に,ローソンの「ブランブレッド」が,同コンビニのベーカリー製品一覧ページから削除され,定番から落ちたと書いた.その結果,ローソンのブラン系のパン製品中に,低糖質の商品は「ブランパン」 (二個入り,四個入りの二種類) だけになってしまった.

 低糖質ダイエット向けのパンはローソンが先鞭をつけたのであるが,これが好評だと見るやファミマが,ライザップとのコラボ製品で追随した.
 このファミマとライザップのコラボ商品群は,ただのパチモンに過ぎないにとどまらず,ブランパンというコンセプトを菓子パンの方向に引っ張っていった.
 ローソンの開発者は定見というものがないのであろう.愚かにもファミマに引きずられて,せっかく好評だった低糖質というコンセプトを捨ててブランアンパンだとかブランのスイーツなどという馬鹿なものを棚に並べるようになってしまった.

 以上が先日の記事の内容だった.
 今朝の四時前,いつものように家を出て,まだ暗い道をウォーキング開始.
 だらだら坂の坂道ウォーキング往復一時間 (休憩込) を終えての明け方,これもいつものようにローソンに立ち寄り,ブランパンを購入しようと,パンの棚の前に立った.
 すると,ブランパンの横に,ブランブレッドが二袋だけ置いてあるではないか.
「おお,ブランブレッドがある!」と私は驚き,ブランパン二個入りを一つとブランブレッド一つを持ってレジに行った.
 ブランブレッドの販売を再開したのかと思って,帰宅して早速ローソンのベーカリー一覧を見てみたが,ブランブレッドはない.これは一体どういうことだろう.地域限定のキャンペーンかマーケティング調査みたいなことだろうか.

 ブランブレッドを二袋とも買わなかったのは,私の他にも買いたい人がきっといるだろうと思ったからである.
 長年,食品会社で開発に携わってきた私が思うに,ローソンのブラン使用パンの中で,このブランブレッドが低糖質というコンセプトに最もよく合致した商品である.販売再開を望む.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 3日 (日)

糖質制限食本・補遺(八)

 前回の記事《糖質制限食本・補遺(七) 》の末尾を再掲する.

柴田「でも今まで,(私たちが) 若い頃は,コレステロールが高いと健康長寿じゃないって言われたわけでしょ? なんでそう急に変わるんですか?」
 新開「あ,そういう長い期間の追跡調査ってないんですよ実は」

 この新開氏の発言を聞いて柴田理恵さんは,しばし茫然とした.
 従来,学者や身の回りの医師たちが私たちに「コレステロール値が高いと健康長寿になれない」と説明してきたことが,実は全く何の根拠のないことだったと,新開氏が悪びれもせず平然と言い切ったからである.
 医師という職業に信頼感を持っている一般人であれば,誰だって新開氏の鉄面皮に茫然とするだろう.しかし医師にも色々ある.言うまでもなくほとんどの医師は誠実であるが,健康に係る研究分野には,ほとんどペテン師に近い者たちがいるのである.

 私は新開氏が「ほとんどペテン師」だと上に書いたが,それはどういうことか.
 《常識が変わる!シニア世代の食生活 あなたの親は大丈夫? 》の概要を載せているページの中に,《総コレステロール値と寿命の関係》というグラフがある.六十五歳以上の観察対象者を総コレステロール値が「高い人」「やや高い人」「やや低い人」「低い人」の四グループに分けて八年間追跡観察し,縦軸を累積生存率,横軸を追跡年数としてプロットしたものである.これは東京都健康長寿医療センター研究所が発行した『健康長寿新ガイドライン・エビデンスブック』(2017年) の p.4 にある図5を引用したものである.
 細かいところは上述のリンク先を見て頂きたいが,当日の放送画面を撮影してトリミングしたものを下に示す.

20170902a

 さて,新開氏が柴田理恵さんに,これまで医師や学者たちが「コレステロール値が高いと健康長寿になれない」と説明してきたことが,実は全く何の根拠のないことだったと語り,柴田さんが驚いて二の句を継げずにいると,慌てた若い局アナが場を取り繕うようにして次のように発言した.

局アナ「ただですね,新開さんが研究されたデータで,コレステロール値が高いというものが,高いほうがいいと証明されるものがあるんです.それがこの『総コレステロールと寿命の関係』なんです」

 この若い局アナは台本を読んでも,かわいそうに何のグラフやら理解ができなかったと見えて,説明がシドロモドロで《コレステロール値が高いというものが,高いほうがいいと証明されるものがあるんです》はまるで日本語になっていないが,それは生放送だから不問に付す.
 が,問題はそのグラフ『総コレステロールと寿命の関係』だ.
 新開氏は番組中で『総コレステロールと寿命の関係』を示しながら,高齢者はコレステロール値が高いほうが健康長寿なんですと語ったのだが,これは大嘘である.これを逐次解説しながら新開氏の詐欺師ぶりを明らかにしていく.

[A]
 まず,新開氏は,健康長寿の指標として累積生存率を用いているのだが,頭がおかしいのではないか.(生存率曲線については Wikipedia【生存率曲線】を参照のこと)
 つまり生存率が表現しているのは「まだ生きているかもう死んだか」だけである.健康という概念が入り込む余地はない.すなわち,認知症が進行していようが,末期のガンであろうが,生きている観察対象者は,生存しているほうにカウントされるのである.
 であるから,健康長寿の指標としては,生存率ではなく,「自立して生活している健康な人の割合」でなければならない.
 しかるに何故に新開氏は,健康とは無関係な生存率を指標にしておきながら,これが恰も健康長寿の指標であるかのように話をでっちあげたのか.
 実は『健康長寿新ガイドライン・エビデンスブック』は一般書店では入手できない書籍である.また購入する価値があるとは思えないので入手して子細に検討はしていないが,生存率を指標にした理由は,健康人の割合を指標にすると何か都合の悪い事実があきらかになってしまうからという理由が考えられる.

[B]
 次に,追跡観察期間の短さに関する疑問だ.
 『総コレステロールと寿命の関係』における観察開始は,対象者が六十五歳の時であるから,観察終了の八年後でもまだ七十三歳である.
 先月発表された2016年の日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳であるが,この数字も健康状態と無関係だという問題はあるものの,一般国民の感覚からすると,男は八十歳まで生きられれば人並みである.
 そして,長寿とは何歳のことですかと質問されれば,おそらくほとんどの男は九十歳と答えるだろう.百歳はとても叶わぬ望外のこととして,まためでたい長寿の九十歳は無理かも知れぬが,しかしせめて八十五までは生きたいなあ,生きられればいいなあと皆思っているだろう.
 しかるに新開氏の調査研究は,呆れたことに七十三歳までの観察しかしていないのである.七十三歳では,長寿を云々する以前の,入口にも達していないのである.
 柴田理恵さんには,これまで健康長寿と総コレステロールの関係に関する長期間にわたるデータはない (実はこれが大嘘.後述する) と言っておきながら,自分の研究はわずか八年しかやっていないのである.ペテン師の面目躍如とはこのことだ.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年9月 1日 (金)

Goodbye Brother

 先月,《2017年8月11日 一粒の理想を握りしめて 》の末尾に次のように書いた.

誰が言ったか忘れたが,映画批評というものは「読んだ人を映画館に出かけさせてナンボのもの」なんだそうだ.
 その意味で桜庭一樹はなかなかよい映画批評家であるかも知れない.これまでアメコミ映画をバカにしてきた私を,『ワンダーウーマン』を観に行く気にさせたからである.

 このように書いた通り,昨日,『ワンダーウーマン』を観てきた.
 私がシートを予約したこの日の最初の上映は 12:10 からで,満席のシアター内部には子供の姿は見当たらず,割と観客の年齢層は高めかなという印象だった.
 公開前には Wikipedia【ワンダーウーマン】に詳細な解説は書かれていなかったと思う.『ワンダーウーマン』は,目を皿のようにしてスクリーンを見つめなけりゃならぬ作品ではない娯楽映画だということもあって,私は予備知識なしで映画館に出かけたのだが,現在は,鑑賞後に作品を振り返るのに必要十分な記述がなされているので,あとでレビューを書くのにありがたい.

 さて桜庭一樹は,週刊文春に連載している映画評欄で

王女が成長して女王になる物語に必要なシーンとは、なんだ?
それは純粋だった主人公に「手を汚させる」ことなのだ。嫌悪していた悪に自ら染まり、血濡れてしまった手に、それでも残った一粒の理想を握りしめ、あなたも、わたしも、かつて王国を継いだ。


とレビューを書いた.
 だがこの桜庭一樹のレビューに感心して劇場に足を運んできた私は,映画のほんの導入部で,腰が抜けるほど驚き,二千五百円のエグゼクティブシートから転げ落ちたのであった.

 物語の始まりは神話世界である.
 神々の王ゼウスは,自らの姿に似せて,地上に人間を創造した.
 だが,ゼウスと最高位の女神たるヘラとの間の子である戦いと狂乱の神アレスは,人間を世界を穢すものとして憎み,これを滅ぼさんとしてゼウスに戦いを挑んだ.
 その最終決戦でゼウスは倒れ,アレスは何処かに姿を消した.
 今際の際にゼウスは,アレスの復活に備えてアマゾン族の女王ヒッポリタに「ゴッドキラー (神殺し)」を託した.そして来るべき戦いのその時まで,太平洋上の孤島セミッシラにバリアを施し,一族を島に秘匿温存した.(ただしギリシア神話においてアマゾン族は戦神アレスを祖にする一族であるから,これは映画独自の設定である)
 映画『ワンダーウーマン』第一作は,この「ゴッドキラー」を巡る物語である.

Amazonbattle

武装したアマゾン像
(
Wikipedia【アマゾーン】から引用;著作権料フリー画像である)

 さてセミッシラで王女として育てられた女王ヒッポリタの娘,ダイアナ・プリンス (かつてバリアを通り抜けてセミッシラを訪れ,アマゾン族を守るために命を落とした女性がいた.この女性の名,ダイアナ・トレバーを称えて王女はダイアナと名付けられた) は,ある日,たまたまバリアを飛行機で潜り抜け,不時着したアメリカ陸軍航空部のキャプテン,スティーブ・トレバーを救助し,彼から外部世界で起きている戦争すなわち第一次世界大戦のことを聞く.奇しくもスティーブ・トレバーはダイアナ・トレバーの息子であった.

 スティーブの語る世界大戦の話から,この戦争がアレスの仕業であると直感したダイアナは,人間世界を守るために,スティーブに同行して島を出ることにする.人間世界を守ること.それがゼウスから託されたアマゾン族の使命だからである.
 だが小さな船で島を出ようとしたダイアナは母ヒッポリタに見つかってしまう.
 外の世界へ旅立つダイアナに女王は言う.

母「行けば戻れなくなる」
ダイアナ「それでも世界を守りたいの」

 娘ダイアナが我が手元を去ることは神話時代からの定めであること,アレスとの決戦の時が来たことを承知していた女王は,静かに娘を見送る.

 ここまでがプロローグであるが,ここでダイアナはアマゾンの女王にはならないことが明示される.(「行けば戻れなくなる」)
 いやほんとに驚いた.桜庭一樹は『ワンダーウーマン』を《王女が成長して女王になる物語》と書いたが,ダイアナはアマゾンの女王にならないと物語の冒頭で明示されたのであるから,シートから転げ落ちずにいられようか.
 ではダイアナは成長して何者になるのか.
 それは作品を観て頂くのがよろしいからここには書かない.
 ただし物語のクライマックスで,アレスに勝利したダイアナの台詞が "Goodbye Brother" だったとだけ書いておこう.

 いずれにせよ,桜庭一樹がレビューに《それは純粋だった主人公に「手を汚させる」ことなのだ。嫌悪していた悪に自ら染まり、血濡れてしまった手に、それでも残った一粒の理想を握りしめ》とかなんとか,もっともらしく書いたのは,呆れたことに『ワンダーウーマン』のストーリーとは大違いの,全くの大嘘だったのである.
 桜庭は一体全体,試写室のスクリーンで何を見ていたのだ.居眠りこいていたのか.それとも頭が悪くて物語の進行が理解できなかったのか.
 頭が悪くてストーリーがわからなかったとすると,桜庭の小説が実につまらぬことと符合するから,たぶんそうなのであろう.にしてもだ.でっち上げの原稿を書いて原稿料を文春からせしめても,嘘でたらめであることはすぐにばれる.そういうやり方で世渡りするのは,物書きとして恥ずかしくはないのか.

 ま,三流作家のでたらめな映画レビューに騙されて私は『ワンダーウーマン』を観たのであるが,怪我の功名というか瓢箪から駒というか,結果論として映画『ワンダーウーマン』自体は一級の娯楽映画であると言っていいだろう.よかったよかった.
 ついでに言うと,主演のガル・ガドットがとてもいい.でもこの『ワンダーウーマン』で女優として色が着いてしまうとこれから大変かなと思う.エマ・ワトソンはハリポタでは少女だったから,成長した姿を違和感なく『美女と野獣』で見せてくれたけれどね.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年8月 | トップページ