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2017年8月29日 (火)

健康商売人

 東洋経済新報社は知名度の高い出版社である.
 Wikipedia【東洋経済新報社】には同社が発行している「週刊東洋経済」誌について《現在発行されている週刊誌の中では日本で最古だが、販売面では1位の『日経ビジネス』、2位の『週刊ダイヤモンド』に続く3位》とある.
 また同社の「会社四季報」は,メイン出版物の週刊東洋経済よりも有名かも知れない.
 その東洋経済新報社が運営しているネットメディア「東洋経済オンライン」を週刊文春 (8/9号) が取り上げて叩いた.

 件の記事は《『東洋経済オンライン』衝撃の内部告発 2億PVの実態は下ネタ中心で社内の士気は低下》で,私たちが「東洋経済オンライン」について漠然と「このメディアは,経済誌のフリをしているけど,掲載している記事はすごい品性下劣じゃね?」と感じていることを,正確に指摘したいい記事だった.

 ところが「東洋経済オンライン」編集部は,文春の記事について,事実と異なる創作された内容である,として同誌サイト上で反論した.
 「東洋経済オンライン」編集部の反論によると,同誌の記事は下ネタ中心ではないとして,その証拠に,今年七月のアクセス数一位と二位の記事は《外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」 》と《外国人が心底失望する「日本のホテル事情」 》と題した経済記事だったという.
 この二本の記事を書いたデービッド・アトキンソンという男は,どうやら安倍晋三のブレーンらしいのだが,もし上記の記事に書かれていることが安倍の観光経済論だとすれば,海外からの観光客になんか日本に来てくれなくて結構だと私は思った.
 これはしかし逆説的な言いようであって,デービッド・アトキンソンの日本に対する無知と傲慢があまりにもあからさまで,心底呆れたというのが事実である.
 どうしてこの愚劣な記事が「東洋経済オンライン」のアクセス数一位と二位になったかというと,msnがトップページに転載紹介したからに違いない.もしそうでなければ私はその記事を読まなかったし,多くの人も同様であったろう.
 で,三位以下の記事はどれもこれも堂々たる三流週刊誌ぶりで,ネットワーカーたちの評価は,東洋経済オンラインはエロとセクハラのメディアだとするのが大方のところである.

 さて本題.
 エロとセクハラ記事に隠れて目立たないが,同誌はフードファディズムの扇動者であり,また怪しげな健康情報記事にも手を伸ばしている.
 その一例として,昨年一月に青栁幸利・東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室長が執筆した《「1日1万歩で健康になる」は大きなウソだった 15年にわたる研究で"黄金律"が明らかに》を挙げる.
 青栁幸利氏は,『一日一万歩はやめなさい!--15年、5000人を超す調査でわかったスゴイ健康法』(2015/8/13,廣済堂健康人新書) など,オカルト健康本を書きまくっている人物である.

 信州大学大学院・能勢博教授の『いくつになっても自分で歩ける!「筋トレ」ウォーキング』(2015/4/2,青春新書プレイブックス) が出版され,一日一万歩には効果がないと書いているのを知るや,ただちに便乗して『一日一万歩はやめなさい!……』を出すあたりが,青栁幸利氏が研究者ではなく商売人であることを如実に示している.(笑)
 で,青栁幸利氏が『一日一万歩はやめなさい!……』でどんなことを言っているかというと,「一日一万歩は体に悪いが,一日八千歩は健康にいい」というのである.馬鹿かこいつは.

 私のような地方で少年時代を過ごした高齢者は,まわりに植物や昆虫,爬虫類などの生き物がたくさんいた.
 そんな生き物たちと近い距離で過ごした経験は,生き物というのは本当に多種多様なものなんだなあという世界観を私たちの心に育んだ.
 生き物は機械ではない.
 例えば,エジプトに向かって仲間がみんな飛び立ったというのに,一羽のツバメが広場に立つ王子像の頼みを受け入れ,命尽きるまで王子のもとにとどまった寓話を私たちは知っている.
 ツバメは,渡り鳥は,生き物だから,ある日突然,全個体に機械的に渡りのスイッチが入るのではない.もしかすると中には王子と共に過ごすことを選んだツバメもいただろう.生き物の多様性とはきっとそういうことだ.

Happy_prince
(Wikipedia【幸福な王子】から引用;パブリックドメインである)

 性差や年齢や,体重や筋力や,一人一人の個別の身体条件 (あるいは心も含めて) を一切捨象して,一万歩はだめだが八千歩はいいという感覚は,人間を生き物として見ていない.まるでシャキーンとスイッチが入ると別モードに切り替わるサイボーグか何かででもあるかのようだ.
 これは,例の「有酸素運動を始めてから二十分を経過すると脂肪燃焼モードのスイッチが入ります」という似非ダイエット理論に通じるものがある.

 私は詳しく知らぬが,東京都健康長寿医療センター研究所の室長ともなれば,相当な高給取りであると想像される.
 それがこの幼稚な本の著者なのである.
 小池知事は都議会の粛清が済んだのだから,次は豊洲にいい加減な仕事をした連中を始めとする無駄飯食らいの技官をなんとかするべきだろう.

 あ,余談だが小池知事といえば,宿敵を打倒したとたんに権力者の素顔を露わにして,征服した都庁の全職員にラジオ体操を強制するという無教養な振る舞いに出て世間の顰蹙をかった.ラジオ体操は東京オリンピックに向けての行動だという.ラジオ体操が五輪種目だったとは知らなかったが,そういう運動オンチの知事では東京都健康長寿医療センター研究所の粛清は無理かも.
 むしろここは一つ五輪開会式で,知事は長距離ランナーたちにメッセージを贈るといいだろう.一万歩は体に悪い,八千歩にしなさいと.

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