横浜中華街 山東
会社員時代の同期の男から,横浜辺りで昼飯を食おう (酒を飲もうという意味) とのメールがあった.
彼は東京が生活圏で,滅多に横浜まで来ることはない.横浜なら私に土地勘があるから店は私が選ぶことにし,ミシュランガイドの横浜・川崎・湘南版 (2015年) を探すと,安くてよい店として中華街の「山東」が掲載されていた.私には勝手知ったる横浜中華街であるが,「山東」に入るのは初めてなので,この店に決めて返信.
石川町北口改札で待ち合わせ,西門から善隣門へ抜け,中華街大通りを東へ歩く.聘珍樓の手前の薬局の角を左折すると「山東一号店」(本店) がある.その向こうに「山東二号店」があり,二号店のほうが店構えは大きい.
私たち二人のすぐ前を歩いていたグループ客が,ぞろぞろと一号店に入った.入口ドアから中を覘くと店はかなり狭く,グループ客で満杯になりそうだったので「二号店に行こう」と店の前を通り過ぎたら,ドアが開いて後ろから「だいじょぶよー」と声を掛けられた.グーループ客は二階に案内したから,一階でよければ客はいなくて空いていると言う.
席に着くと店員さんがメニューを持ってきたが,そもそもの目的が酒だから,あれこれ料理を選ぶのは面倒くさい.
それでメニューには記載がなかったが「ランチのコースはありますか」と訊いたら,二千円でできるとのこと.料理はそれに即決して,「あと,紹興酒をボトルでください」と注文した.時刻はちょうど午後一時で,「山東」では本格的な昼酒客は少ないらしく,店員さんの顔には少々驚いたような色が浮かんだ.
そりゃそうだろうね.中華料理店は居酒屋じゃないのだから.
でも,仕事に追われて老後の趣味を持てなかった団塊の爺たちが,今や定年で暇を持て余しているこれからの時代は,料理店においても昼酒がニッチからメジャーになりつつある.場合によっては朝酒のビジネス展開すらありうるとも言われている.誰が言っているかというと私だ.
新しい日本の昼酒黎明期を目前に,私たち二人が,横浜中華街のミシュランガイド掲載店「山東」にとって黒船であるかも知れぬ.時代の夜明けを「山東」従業員の皆さんと共に寿ぎたい.
さて前菜盛り合わせ (かなり盛りがよい) と瓶ビール一本でまずは乾杯し,それから直ちに紹興酒に移行する.
ネットで下調べした情報では水餃子が「山東」のウリであるらしい.確かに,なかなかの美味であったし,他にも定番中華料理である海老のチリソースなども結構なお味であった.
料理がうまいと話しも弾む.
だが昔会社員だった人々は,仕事がらみの昔話をすると,現役のときの社内序列,地位がどうであったかを避けて通れぬことが多い.
だから負け組の会社員だった私は昔話が嫌いだ.ヾ(- -;) こらこら
それで私たちはこの日,病気の話で大いに弾んだのである.ヾ(- -;) おいおい
ガンだの心筋梗塞だの,お互いの術後経過を話し終えたあとは,北朝鮮問題に話題が移ったのであるが,私たちが飲み食いを始めてからずっと隣のテーブルにかなり年輩の御老人がいて,私たちの話に耳を傾けていた.
初めは客かと思っていたのだが,そのうち御老人が料理を運んできたりしたところをみると,どうやら「山東」の人のようであった.かといって,オーナーは女性だと公式サイトに書かれているから御主人ではなさそうで,よくわからない.
結局この日の午後一時から日暮れるまで延々六時間,私たちは紹興酒のボトルを何本も空にして飲み続けた.料理はランチコースに少し追加したかも知れぬが記憶がない.
そろそろ帰ろうと勘定を済ませて道路に出ると,御老人が玄関の外に出てきて手を振って見送ってくれた.私たちは酔った勢いで,ありがとうござましたーおいしかったでーすと大きな声を上げ,「山東」を後にしたのであった.
横浜の中華街には,中小規模の店で時として極めて接客態度の悪い店があり,そんな店に入ってしまうと大変に不愉快な思いをすることがある.
ことがある,どころではなく,三十年ほど前は小さい店の半分は中国式接客の無礼な店だったと思う.釣銭を放り投げてよこすとかね.
「海員閣」は漫画『美味しんぼ』で傲慢な店として描かれたことで知られているが,その程度の店は他にいくつもあった.
私の経験では,ある日家族揃って某店 (今はもうない) に入り,ランチを注文したあと「薬を飲みたいのでお水をください」と言ったら,ふてぶてしい顔付きの女店員に「水だってただじゃないよ.うちはお金払えばお茶だすよ」と言われたことがある.
また関帝廟通りに面したS風楼なんか,初めて入った時に店員の無礼な態度にカッときて,皿を叩き割ってやろうと思ったくらいだ.こんな店に「食べログ」で高評価点を付けてありがたがっている連中の気が知れない.
横浜中華街は,飲食店の接客の点で非常に低水準であり,そんな有様だから,ミシュランガイドに掲載されているのは「山東」一軒しかない.
これまで大切な食事の際は,そこそこ安心できる老舗の大きな店を選んでいたのだが,小さな店でも「山東」のように良いところがあるとわかったのは収穫だった.また寄せてもらいます.ごちそうさまでした.
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