« 国難に起つ聖職者 | トップページ | 髑髏島の巨神 (四) »

2017年4月28日 (金)

紅茶摘む (笑)

 昨日,関東では日テレ (毎日放送制作) が放送している『プレバト』を観た.
 この番組の目玉は俳人夏井いつき先生が出演者の俳句を添削する「俳句才能査定ランキング」で,このコンテンツのおかげで同番組は二桁視聴率なんだそうである.

 さて昨日の「お題」は茶畑の風景写真だった.東名高速の牧之原台地辺りだろうか,道路にあるトンネルの上も茶畑になっているという,なんだか見たことがあるようなショットだった.
 それはともかく今回は宮澤エマさんが登場したのだが,夏井先生から最下位という厳しい評価をされてしまった.宮澤エマさんが夏井先生に提出したのは次の句.

春暑し 窓下げ踊る髪と茶葉

 まあそのなんだ,人間は俳句なんか下手でも何の問題もないのである.いわんや宮澤エマさんのごとき美女においてをや.
 それはさておき,夏井先生は当該句の添削に際して《「茶葉」は製茶したものをいいます.茶畑で風にそよぐ茶の葉は「茶葉」ではありません》という趣旨の発言をした.

 しかし「茶葉」の語義はそうではない.
 製茶する前の段階は「茶樹 (あるいは「チャノキ」) の葉」であり,製茶したものは「茶葉」だとする見解を,茶に関する知識の少ない人,例えば夏井先生が言っても面と向かって文句をつける人はいないだろう.しかしこれは夏井先生の独自研究であり,つまりあからさまに言えば間違いである.

 いくつかの例を挙げる.
 最初に (国立研究開発法人) 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所のサイトから,研究報告《「チャ品種「そうふう」「さえみどり」は機能性成分ケルセチン配糖体が多い 》の一部を引用する.

成果の内容・特徴
1.「そうふう」、「さえみどり」は「やぶきた」と比べてケルセチン配糖体を約2.5倍多く含む(表1)。2007年の二番茶の茶葉(一心四葉摘み)の場合、茶葉の40倍量の水で浸出(4°C、1時間)した場合100 mL中に12-13 mgのケルセチン(アグリコン換算)が含まれている。一般的なタマネギ100 g(新鮮重量)に含まれるケルセチンは約40 mg(アグリコン換算)。

 上の引用箇所において,「茶葉」は茶樹から摘んだ未加工の葉を意味している.
 この研究報告はほんの一例であり,茶の科学において,「茶葉」を製茶していない茶樹の葉の意味に使うことは一般的なのである.

 次の例は広辞苑第六版から.

ちゃ-ば【茶葉】 茶の木の葉。茶の原料となる葉。

 これも未加工の茶樹の葉だと書いている.

 さらに次は Wikipedia【茶】に掲載されている画像とそのキャプションである.

640pxtealeaves
摘採直後の茶葉。同じ木から摘んだものでも、葉の小さいものの方が重量当たりの価値が高い(インド・ダージリン)。(ブログ筆者註;この画像は自由な引用使用が可である)

 この画像の説明文にある《摘採直後の茶葉》は,画像を見れば一目瞭然,紛れのない正しい「茶葉」の用法である.

 まだまだあるが,これくらいにしておく.
 夏井先生は,大学卒業後の数年間を中学で国語教師として勤めたという.しかし国語教師としては,『プレバト』を観た限りでは,思い込みが激しいのか間違ったことを言うことが多い.番組収録の前に,歳時記だけでなく,辞書とか簡単な資料を調べてから発言をなさるべきであろう.

 夏井先生の知識レベルは,俳句才能査定ランキングで名人位にある芸人フジモン (藤本敏史) の句の査定で混乱ぶりを露呈した.フジモンは次の句を披露したが,これはインドの茶畑を連想した句だと本人の弁.

茶畑や 朝のサリーの色ぬくし

 だが夏井先生は,次のように添削してしまったのである.

紅茶摘む 朝のサリーの鮮やかに

 言うまでもなく紅茶は茶樹の葉の加工品である.日本だろうがインドだろうが,茶畑で紅茶を摘むことはあり得ない.
 しかるに夏井先生は,宮澤エマさんに,こともあろうにあの美しい宮澤エマさんには「茶葉は茶畑にはない」と言い切って最低点をつけておきながら,フジモンの句では,掌を返すようにして,茶畑で紅茶を摘む情景の描写に添削しちゃったのである.高田純次も驚くテキトーさに,私はヘナヘナとテレビの前の安楽椅子から崩れ落ちたのであった.
 暇な年寄りはテレビを観ながらブツブツと著名人に文句をつけるのが楽しみであるが,その点で夏井先生は,ツッコミを入れる対象として得難い人材である.ていうか,私は夏井先生の大ファンで,毎週『プレバト』を心待ちにしているのである.なぜなら沈香も焚かず屁もひらずという人間はつまらぬからだ.屁をこきつつも沈香を焚ける人間がよろしいと私は思うのである.

|

« 国難に起つ聖職者 | トップページ | 髑髏島の巨神 (四) »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 紅茶摘む (笑):

« 国難に起つ聖職者 | トップページ | 髑髏島の巨神 (四) »