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2017年3月 7日 (火)

ビジネスマンが書く日本史とは (八)

 前々稿《ビジネスマンが書く日本史とは (六) 》の終りに次のように書いた.

こうして国民の持つ昭和天皇のイメージが「平和を求めた悩める天皇」と「戦争指導者=大元帥」に分裂したとき,他ならぬ昭和天皇自身の口から,昭和天皇の本心が明らかになってしまった.
 それは,昭和天皇と皇后が米国訪問から帰国した昭和五十年十月三十一日,午後四時から約三十分間,初めての公式記者会見を行った時の天皇の発言であった.

 この昭和五十年十月に行われた天皇記者会見には,記者と昭和天皇の間で二件の重大な質疑応答があった.
 この重大な二件の質疑応答を両方とも撮影した記録映像は,数年前まではネット上にいくつも存在していたのであるが,私が検索した限りであるが,現在は次のウェブページ (動画投稿サイト Dailymotion) だけであるように思われる.他は二件のうちの片方 (広島への原爆投下に関する質問と答え) のみを記録したものである.

[動画タイトル]
昭和天皇初めての記者会見_ニッポン・ゼロからの70年

 この動画にはかなりややこしい事情があると考えられ,これを紹介するに際しては少し説明が必要と思われる.
 まず「報道の日」の説明から.
 Wikipedia【報道の日】にある記述は以下の通り.

『報道の日』(ほうどうのひ)とはTBS系列で、2011年より毎年12月下旬に生放送されている長時間報道特別番組である。

 この番組は過去に六回放送されている.第五回の内容を Wikipedia【報道の日】から引用する.

第5回『報道の日 2015 ニッポン・ゼロからの70年』
5回目にして初の単独構成。また、初めて日曜以外の放送となる。
司会:関口宏、雨宮塔子(フリーアナウンサー)
進行アシスタント:皆川玲奈(TBSアナウンサー)
ゲスト:恵俊彰、本上まなみ(女優)、岸井成格
JNNニュース(11:40 - 11:50) キャスター:蓮見孝之(TBSアナウンサー)
JNNニュース(17:10 - 17:30) キャスター:蓮見孝之・水野真裕美(共にTBSアナウンサー)
天気キャスター:河津真人(気象予報士)

 上に紹介した動画は,このTBSテレビの番組『報道の日 2015 ニッポン・ゼロからの70年』をそのままネットに上げたものである.
 テレビ番組を「正当な引用」として動画に編集使用することは,色々と複雑な問題はあるが,可能な行為であろう.
 しかしこの動画の投稿者が動画に付けたキャプションは極めて短いもので,しかも番組あるいは天皇記者会見に対するその人の意見は全く書かれていない.投稿者はこれで違法性を排除できると考えたようだが,常識的に考えて,これでは「正当な引用」とは認め難い.というか,「正当な引用」どころか,引用の体すらなしていない.
 つまりこの動画は著作権法違反の疑いが濃厚であり,TBSテレビに知られたら削除を求められること必至である.すなわち将来,リンク切れになる可能性がある.
 そのような問題がある動画ではあるが,この動画の中身であるTBSテレビの番組『報道の日 2015 ニッポン・ゼロからの70年』自体は,貴重な記録映像を放送したものであり,そのことを記したいがために,敢えてこの違法と思しき動画を紹介した次第である.

 さて本題に戻る.
 上述のように昭和五十年十月に行われた天皇記者会見では,記者たちと昭和天皇の間で二件の重大な質疑応答があった.その二件の質疑を,高橋紘著『陛下、お尋ね申し上げます 記者会見全記録と人間天皇の軌跡』(文春文庫;1988年3月10日 第一刷) から引用すれば次の通りである.(引用部分は《》内;ただし実際の発言そのままではなく,著者は言い回しを微妙に修正している.個人的意見としては,この本はレファレンスとして引用元になる可能性が高いので,会見における発言をそのまま記載して欲しかった)

(1).
中村譲二記者 (ザ・タイムズ) 《陛下は、ホワイトハウスの晩餐会の席上、「私が深く悲しみとするあの不幸な戦争」というご発言をなさいましたが、このことは、陛下が、開戦を含めて、戦争そのものに対して責任を感じておられるということですか。また陛下は、いわゆる戦争責任について、どのようにお考えになっておられますか。
天皇《そういう言葉のアヤについては、私はそういう文学方面はあまり研究もしてないので、よくわかりませんから、そういう問題についてはお答えができかねます。
(2).
秋信利彦記者 (RCC中国放送) 《陛下は、これまでに三度広島へお越しになり、広島市民に親しくお見舞いの言葉をかけておられるわけですが、戦争終結に当たって、原子爆弾投下の事実を、どうお受止めになりましたのでしょうか。
天皇《原子爆弾が投下されたことに対しては遺憾には思ってますが、こういう戦争中であることですから、どうも、広島市民に対しては気の毒であるが、やむを得ないことと私は思ってます。

 昭和天皇が本心を赤裸々にした上の発言に,日本国民の多くが呆然とする中,激怒の文章を公表した人物がいた.藤枝静男である.
(続く)

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