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2017年3月 2日 (木)

栞子さんの引退

 一年前の二月,私は鎌倉の長谷寺に散歩に出かけた.
 長谷寺の境内にある茶店「海光庵」で,大きな窓の遠くにきらきら光る鎌倉の海を眺めながら,昼から独酌するのが好きなのである.(《長谷寺の花 》)
 私はその日,海光庵で腹を満たしたあと長谷寺から鎌倉文学館に寄ったのであるが,そうしたら思いがけず「『ビブリア古書堂の事件手帖』イラスト原画展」をやっていたので,そのことをこの日の記事に綴った.

『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは,ライトノベルデビューは早かったものの,あまりぱっとしなかった三上延の出世作である.
 Wikipedia【ビブリア古書堂の事件手帖】から少し引用する.

社会的評価
2012年1月、発行部数がシリーズ累計103万部となり、メディアワークス文庫で初のミリオンセラー作品となった。
累計発行部数は2012年4月時点で200万部、第3巻が発売された同年6月時点で300万部を突破した。2012年の文庫部門総合ベストセラー第1位(トーハン調べ)で、2013年2月発売の4巻の初版発行部数が80万部であり、累計は600万部をこえた。
受賞や書評雑誌によるランキングとしては、第65回日本推理作家協会賞(2012年)短編部門に「足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)」(第2巻収録)がノミネート、2011年度本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン第1位に選ばれた。
2012年には本屋大賞にノミネートされた。文庫本のノミネートは初。また、同じく書籍関係者である図書館員が「来館者に手に取ってもらいたい本」を選ぶ「TRCスタッフが選んだ本2012」(図書館流通センターによる企画)では、第1巻が文庫部門の1位となった。

 私はビブリア古書堂シリーズの第一作が書店の店頭に並べられたときに,表紙を見ただけで買って,それ以来の読者である.直感で,これはおもしろそうだと思ったのである.
 この本が,それまでのライトノベル読者層を大きく離れて,私のように「おもしろそうだ」と多くの一般読者を引き付けたのは,表紙とカラー挿絵を描いた越島はぐのキャラクター造形力によるところが大きいと思われる.
『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズのファンが持っているヒロイン篠川栞子のイメージは,越島はぐがイラストに描いた栞子そのものであり,それ以外ではないことは,栞子ファンたちがネット上に書いた記事で明らかであった.
 越島はぐの描いた栞子イメージの訴求力があまりにも強かったせいで割を食ったのが,剛力彩芽さんだった.
 彼女はフジテレビ系列で連続テレビドラマ化された『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズのヒロインに抜擢されたのだが,彼女は言うまでもない超美貌ではあるけれど,しかし越島はぐの栞子イメージからかなり遠かったため,二次元美少女ヲタ層から強い反発を受けたのだった.
 結局このドラマは,キャスティングも脚本も原作から遠く離れたものであったために,原作ファンから非難を受けたただけに終わり視聴率的には惨敗したのであった.

 それじゃあ誰が栞子役だったらよかったのか.
 栞子が背中まで伸ばした黒髪 (ここが剛力彩芽さんに対するブーイングの主なものであった) であること,メガネが似合う控えめな美貌であることから,それは堀北真希さんしかないと言われた.誰が言ったかというと私だ.
 先月末に,『ビブリア古書堂の事件手帖 7 ~栞子さんと果てない舞台~』が刊行されて,シリーズは遂に完結した.
 そして昨日,堀北真希さんが芸能界引退を発表した.
 ビブリア古書堂シリーズは,作者がスピンオフ作品をこれからも書き続けると言明しているので,ファンはその点は喜んでいいが,しかしもはや堀北栞子を観ることはできなくなったわけで,これはまことに残念であるなあ.

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