飯の粒が立っている
一昨日 (3/23) 放送のテレビ東京『カンブリア宮殿』は《日本の食卓を変える窯元! 主婦殺到の"便利土鍋"の秘密 》と題して,三重県伊賀市の伊賀焼の窯元である長谷園が,如何にして大ヒット商品の土鍋を世に送り出したかを紹介した.
放送された内容は例によって例の如きいつものビジネス成功譚であって,とくにどうということはないが,放送の冒頭に「おいおい」と言いたくなることがあったので,以下はそれについて.
番組の導入部で,土鍋で飯を炊くシーンがあった.
飯が炊きあがり,土鍋の蓋を取って,しゃもじで飯をほぐすのだが,この時,高川裕也のナレーションが画面にオーバーラップする.
文字に起こせば以下の通り.
《確かにおいしそう.ふっくらつやつや.お米一粒一粒が》
この文言に続いてナレーターは言う.
《ほら,立ってる》
この《ほら,立ってる》の時の画面を撮影した画像を下に示す.
(録画データを静止画に加工することは違法ではないが,その静止画を個人的利用の範囲を逸脱してブログ等に掲載するのは明らかな権利侵害である.そこで,放送された画面そのものを引用する必要がある場合,私はテレビ画面を写真撮影して引用に供する.「正当な引用の範囲で」という条件下であれば,この手法に違法性はない)
立ってないですな.(笑)
しゃもじで飯をよくほぐした後であるから,飯粒が立っていたかどうか,全くわからなくなっている.
そもそも「炊きあがった飯の一粒一粒が立っている」とはどういうことか.
この番組の制作者は,まさかとは思うが,「おいしそうに炊けた飯」を「飯粒が立っている」と表現するのだと思っているのではあるまいな.「おいしそう=立っている」という日本語表現があると思っているならば,ものを知らぬにも程があるというものだ.
昔風の羽釜や鍋で炊飯すると,熱源に接しているのが底面だけであるため,炊飯時に羽釜なり鍋なりの中では対流が起きる.
このような対流が起きるようにして炊いた飯の食味が優れているというのは,官能試験研究もあって,今では定説だと言っていいだろう.
大昔の電気釜とか一昔前の炊飯ジャーでは,おそらく熱効率的に無駄のないようにするためであろう,炊飯容器本体 (内釜) は外気に触れないようにしてあった.
そのため炊飯時に対流が起きにくくなってしまい,これがために電気炊飯器より普通の鍋のほうが,うまい飯が炊けるとされてきたのである.
で,よく知られているように,羽釜の中で対流が生じていた状態は肉眼でわかる.
炊きあがった飯の上面を少し取り去ると,飯粒が縦方向に並んでいるのがわかるのである.
すなわちこの具体的な状態を昔の人は「飯の一粒一粒が立っている」と表現したわけだ.
テレビ番組を制作する人たちは若いだろうから,飯のうまい炊き方なんかは知らぬであろう.うまい飯の炊きあがりの状態をじっくり観察したことはない人が普通だろう.
だがMCの村上龍は作家である.日本語がデタラメに使われたら,制作側にクレームをつけて然るべきである.これは,文章で飯を食っている者の責任である.あー,文末に「飯」を入れようと少し工夫してみました.くだらないですか.わかりました.
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