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2017年3月22日 (水)

玉石混淆NHK (1)

(現在旅行など多忙につき,連載中の記事の更新は明日以降になるが,以下はそれまでのツナギである m(__)m)

 NHKのEテレに『モーガン・フリーマン 時空を超えて』(毎週金曜放送) というシリーズ番組がある.
 同局ウェブサイトに掲載されている番組紹介は以下の通り.

ハリウッド映画でおなじみの俳優モーガン・フリーマンがエグゼクティブ・プロデューサーと案内役を務める、大人の知的エンターテインメント番組。一緒に未知の世界に挑みませんか?だれもが疑問に思っているけれど、だれも明確な答えは出せていないテーマについて第一線の研究者らが持論を展開。様々な角度から掘り下げます。目からウロコの説の数々…深く考え始めると眠れなくなるかも!?ようこそ、思考のワンダーランドへ!

 これだけでは皆目わからぬが,NHKが米国から買い付けたテレビ番組に日本語ナレーションを付けて,日本向けに編集したものと思われる.
 で,この一週間というもの極めて多忙でブログ更新ができなかった私であるが,忙中閑あり,先週の金曜日に放送された『時空を超えて』の再放送「宇宙は生きているのか?」を録画しておいたので,これを鑑賞した.
 ちなみに,この番組のサイトにある過去放送分の内容紹介は次の通りである.

3月17日金曜 午後10時00分~午後10時45分
「宇宙は生きているのか?」
宇宙はひとつの生命体なのか?心臓のように膨張と収縮を繰り返す、量子コンピュータでものを考える、ブラックホールで子孫を生むなど、奇想天外な諸説に科学的に迫る。
宇宙は「巨大な生命体」なのか?生命体に必要な心臓の鼓動に関しては、宇宙はニュートリノの力によって膨張と収縮を行っているという説もある。これは宇宙の心臓の鼓動のなのだろうか。また、ブラックホールによって新たな宇宙が生みだされているという説を紹介。また、宇宙は、巨大なコンピュータによる計算であり、生命はそこから生み出された偶然の産物だという説など、宇宙の謎に大胆に迫る。(2016年7月初回放送)

3月10日金曜 午後10時00分~午後10時45分
「パラレルワールドは存在するのか?」
今回のテーマは「パラレルワールド」。現実と同じような、もうひとつの世界は存在するのか?自分と同じような人間はいるのか?最新の科学がミクロとマクロの視点から迫る。
地球と違う運命の地球が存在する?自分の“コピー”が別の世界に生きている?私たちの住む宇宙以外に宇宙が存在する?衝突したら何が起こる?いわゆる「パラレルワールド」の存在の謎を解き明かそうとする学説を紹介。鍵を握るのは「粒子が複数の場所に同時に存在することが可能」だとする量子力学。小さいものが同時に存在することが可能なら、より大きな「人間」も「宇宙」も同時に存在しうるのか?(2016年5月初回放送)

3月3日金曜 午後10時00分~午後10時45分
「海は思考するのか?」
私たちは人間以外の知的生命体を宇宙に探し求めてきたが、実は私たちの住む地球上に存在する可能性がある。それは、広大な海。海は思考するのか、その可能性を探る。
ある科学者は、水の分子の動きを研究。シンクロの選手にたとえながら、水は生きていると言えるのかを探る。「代謝」に着目し、海を巨大な生命体と考える生物学者もいる。もし海にも免疫システムがあれば、生き延びようという意思の元に、きわめて恐ろしい事態が引き起こされる可能性を指摘する。海に潜むさまざまな謎と絶大な影響力を探る。

 先週の「宇宙は生きているのか?」を観ながら私は爆笑したので,なんだこのしょーもない番組は,と思ってNHKのEテレのサイトを覗いてみた.すると上のように書かれていたのである.
 上の引用を読めばもう十分であるが,紛れもなくこの番組は,いわゆるトンデモである.疑似科学以前のガラクタである.
 例えば,前々回放送「海は思考するのか?」の《ある科学者は、水の分子の動きを研究。シンクロの選手にたとえながら、水は生きていると言えるのかを探る》は,総理大臣夫人にして森友学園の元名誉校長である安倍昭恵氏の長年の友人である江本勝が書いた有名なトンデモ本『水からの伝言』と同じオカルト思想に立つものだ.安倍昭恵夫人は,教育者を騙る詐欺師だけでなく,オカルト分野のペテン師にも交友関係があるようだ.

 前回放送「パラレルワールドは存在するのか?」の《鍵を握るのは「粒子が複数の場所に同時に存在することが可能」だとする量子力学。小さいものが同時に存在することが可能なら、より大きな「人間」も「宇宙」も同時に存在しうるのか?》に至っては,量子力学と正反対の大嘘である.これは百年も前の古典的SFのアイデアである.(笑)

 そして先週の「宇宙は生きているのか?」では,デール・モール人工知能研究所 (スイス) のコンピューター科学者であるユルゲン・シュミットフーバー (日本語版 Wikipedia【多元宇宙論】に彼の名があり,英語版 Wikipedia へのリンクが設定されているが,英語版 Wikipedia を参照してもその名前の項目だけが立てられていて記述はない) が登場し,生物とは,

自らを複製し,時と共に進化するものといった説明が一般的でしょう

と述べた.
 ここで私は大爆笑した.そんな定義は初めて聞いたからである.《といった説明が一般的でしょう》はどこから出てきたのだ.全く一般的ではない.

 「一般的な説明」はどうかというと,「生命とは何か」に関する思想的側面はさておいて,生物学上の生命観について,Wikipedia【生命】に次のようにある.

生物学における生命
……生命現象には様々な側面があるが、一般に生物学では、根本的な生命の定義に関わる部分は、その内部での物質交換と外部との物質のやりとり (代謝)、および同じ型の個体の再生産 (遺伝と生殖) にあると考えられている

 しかしこれは生命の性質を記述しているのであって,数学的な意味での「定義」ではない.
 だからそもそもこの「定義」に当てはまる存在があったとしても,その存在と,それが生命であるか否かということは無関係な問題である.その存在が生命であるかどうかは,「定義」との合致ではなく,科学的検証手段によって行われる.生命科学は言葉遊びではないのである.
 そしてこの Wikipedia【生命】の《生物学における生命》に書かれていない嘘を,シュミットフーバーは語った.それが

時と共に進化するものといった説明が一般的でしょう

の箇所である.
 後述するが,この部分はシュミットフーバーという人物が,進化の概念も理解していないことを示しているのである.
 このように,一見もっともらしい話の中に巧妙に嘘を混ぜるのが疑似科学だ.
 Wikipedia【多元宇宙論】におけるシュミットフーバーの名も,疑似科学の文脈で語られているのである.
(続く)

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