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2017年2月20日 (月)

ビジネスマンが書く日本史とは (四)

 先月の記事《ビジネスマンが書く日本史とは (二) 》に私は次のように書いた.

一昨日の記事に書いた出口治明という人物は,会社経営者の余技なのかどうか知らぬが,歴史について幾冊かの本を上梓している.
 出口氏がどんな思想の人なのか,週刊文春の短い連載コラムを毎週待っているのも気の長い話なので,既に出版された氏の著書を購入して読んで見る方法もあろうとは思うのだが,アマゾンで購入した人たちのレビューを摘み読みしてみたところ,買って大損という可能性もあり,どうしようかと迷っている.そこで,買って失敗しても損害が少ない安い出口氏の著書はないかと探すと,『世界史としての日本史』が見つかった.出口治明氏と半藤一利氏の対談本だ.アマゾンのレビューで星五つという読者絶賛本である.

 私は《買って失敗しても損害が少ない安い出口氏の著書》として『世界史としての日本史』(小学館新書) を購入 (Kindle 版) したのだが,少ない損害とはいえ,買って損してしまった.
 とはいうものの本は,買って読んでみないと中に何が書かれているかわからないのであり,本を買ったために蒙る金銭の損害は,致し方ないところではある.
 さてこの『世界史としての日本史』という書籍は,作家の半藤一利氏と,ライフネット生命保険会長である出口治明氏の対談をまとめた本である.
 表紙には《今を生き抜く、真の「教養」が身につく歴史入門》と惹句が書かれているが,元々は週刊ポスト誌に掲載された対談から始まったものらしく,そのためか内容は週刊ポストの記事レベルであり,いわば半藤,出口両氏による,まとまりのない雑談といっていい程度のものだ.《真の「教養」が身につく》はいくら何でも言い過ぎだ.
 ところでこの本には,読んでいると「おいおい」と言いたくなる箇所がいくつもある. 下に例を引用する.

半藤 …… 『坂の上の雲』は素晴らしい日本の歴史教科書のように思ってる人がたくさんいて、そういう人たちから言わせると、「半藤の野郎はけしからん」となって、「あいつは左翼だ」と。最近では格上げされて、私は「極左」なんだそうですよ(笑)。
 出口 半藤さんのような、バランスの取れたニュートラルな方を極左と呼ぶ精神のほうが、むしろ歪んでいると思いますね。

 今から三年も前の話であるが,『昭和天皇実録』(宮内庁編集;東京書籍株式会社) が公式に刊行 (2015年から公式刊行開始) される前,数人の民間人が特別にこの実録の内容を事前閲覧することができた.
 その事前閲覧の許可自体は宮内庁の裁量であるからして問題視する必要はないと思われるが,特別待遇を受けた一人が半藤一利氏であったことはよく知られている.(このことに触れたブログにはこれがある)
 さて半藤氏が実録の事前閲覧をした際に,マスコミのインタビュー (私が目にしたのは朝日新聞の記事だったと記憶している) に対して半藤氏が自分自身を公然と「臣一利」と称したことに世間は大変驚いた.(「臣○○」とは,自分は天皇の臣下でありますという意味の戦前の言葉である)
 それ以来,半藤氏は「臣一利」と自称し続けているが,ああ,この人は戦後何十年経っても,心底に皇国史観があるのだな,軍国少年のままなのだなと私は思った.でなければ「臣一利」などと言う筈がないからである.
 戦後の著名人で自分を「臣」と称したのは吉田茂の「臣茂」が有名であるが,それ以来,時代錯誤に「臣」と自称しているのは,私の知る限り半藤氏だけである.(半藤氏には軍隊経験がない.私の父親世代のような戦地での死ぬか生きるかの体験があれば,半藤氏は「臣」と自称することはないはずだ)
 このような半藤氏が書く「昭和史もの」には,昭和天皇を美化するバイアスがかかっていると思うべきである.
 私に言わせれば半藤氏は充分に右寄りである.半藤氏は《最近では格上げされて、私は「極左」なんだそうですよ》と発言しているが,それは氏を「極左」と呼ぶ連中がネトウヨだからである.半藤氏程度の右寄りなら,ネトウヨから見れば確かに「極左」なんだろう.(笑)
 しかるに出口氏は上に引用した箇所で《半藤さんのような、バランスの取れたニュートラルな方》と発言している.これがもし半藤氏に対するヨイショでないのであれば,出口氏の心底にも皇国史観が潜んでいると考えてよい.「臣一利」と自称する人物が《バランスの取れたニュートラル》であるわけがないからである.
(この項,続く)

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