« ビジネスマンが書く日本史とは (三) | トップページ | 言っちゃったー »

2017年2月15日 (水)

福島第一原発,そして東芝

 新聞各紙が報道したところによれば,東芝は昨日,米国における原発事業の損失額が7125億円に上り,2016年4月~12月期連結決算が4999億円の当期赤字となるとの見通しを発表した.
 この結果,東芝は昨年12月末時点で株主資本が1912億円の債務超過になる.
 同時に,債務超過の原因となった原発事業(*下記註) を統括してきた志賀重範会長が今日15日付で辞任することも発表した.

(*註) マスコミでは,東芝の米国における原発事業の企業名をウェスティングハウス (WH) とだけ簡略に書いている場合が多いのでややこしいが,正確にはウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー (Wikipedia【ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー】参照) であるらしい.(以下,私もマスコミに倣ってウェスティングハウスと書くが,かつての名門電器会社ウェスティングハウスとは,無関係ではないが実質的には別ものである)

 これで我が国でも古い歴史を有する企業が一つ,消滅することになるだろう.
 東芝は志賀会長の辞任を発表したが,もちろんこれから株主代表訴訟によって責任の追及が行われることになる.
 しかし訴訟で取締役等の責任は明確になっても,表立っては追求されない「戦犯」の存在が囁かれている.
 ウェスティングハウスを東芝に買わせたとされる経産省である.これはいずれ週刊誌メディアが解説してくれるだろう.

 さて「電力コスト」という考え方には馴染まないことを承知で書くのだが,日本の電力事業は,官民合わせて,原子力発電によって,これまでに一体どれくらいの国富を失ったのだろう.
 まず今回の東芝の巨額損失と,東芝の解体によって生活を狂わされるであろう人々が失う人生の価値.
 そして東電福島第一原発の事故がもたらした,計算しようがないほどの巨大な損失.被災した人々が失った,思い出や将来の夢や生き甲斐,掛け替えのないたくさんのもの.
 他にも原子力発電の暗部は色々とあるだろうが,今に至るまで一つも成果らしきものを上げられず,これからも損失を垂れ流し続けるであろう国策「核燃料サイクル事業」もその一つ.

 《NHKスペシャル 東日本大震災「それでも、生きようとした~原発事故から5年」 》が伝えたところによれば,原発事故で福島県外に避難している人々に,自ら命を絶つ例が増加しているのだそうだ.
 番組中で紹介された悲しいエピソードの一つ.避難先から故郷に帰って農業を再開することを切望していた男性が,一時帰宅して目撃したのは,自分の農地に隣接して見渡す限り野積みされた汚染土の黒い袋であった.
 この一時帰宅から戻って程なく,男性は自殺した.農業再開の望みが絶たれたからであった.汚染土の山の隣で作った野菜や米を一体誰が買ってくれるだろうかという絶望が彼から生きる力を奪ったのだ.
 そして番組は,もう人々が原発事故被災者との「絆」を忘れつつある現状を報告し,これから孤立した原発事故被災者の自殺リスクが高まるのではないかと述べていた.

 東京電力福島第一原発1~4号機の周囲に造られた凍土遮水壁は,現在もまだ遮水効果が発現しないまま時間が無為に過ぎている.(東京新聞 1/14)
 原子力規制委員会は当初からこの凍土遮水壁を「スダレのようなもの」と酷評し,効果はないだろうと予測していたが,その通りになりつつある.もしかするとこの凍土遮水壁作業は,うやむやのうちに中止されるかも知れない.

 また,福島第一原発を廃炉するには東芝の技術が不可欠だったのだそうである.
 その東芝が消滅する.廃炉の工程に赤信号が灯ったのだ.
 安倍晋三は,東京五輪招致の際に,福島第一原発事故はコントロール下にあると世界に向けて大嘘をついたが,それ以後,凍土壁が失敗しそうなことに関しては黙して語らない.そして汚染地下水は今日も増え続けている.

 ちなみに,コンスタントに福島第一原発の現状を報道し続けているのは東京新聞である.
 朝日読売などの全国紙は,読者が知りたいことは有料記事にしている.これが「社会の木鐸」の実際である.

|

« ビジネスマンが書く日本史とは (三) | トップページ | 言っちゃったー »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 福島第一原発,そして東芝:

« ビジネスマンが書く日本史とは (三) | トップページ | 言っちゃったー »