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2017年2月 8日 (水)

金正日に次ぐ世界最強のゴルファー

「男の顔は履歴書である」は大宅壮一の名文句として知られる.
 これのバリエーションの一つに「男の顔は履歴書 女の顔は請求書」があるのもよく知られている.
 ところが,この名文句の初出が,つまりいつ発行された何という雑誌に出ていた文句なのだろうかと調べているのだが,はっきりしない.
 私が中学生の時には既に人口に膾炙していた記憶があるから,おそらく昭和三十年代の言葉だろう.
 なんでそんなことを調べたかというと,あるブロガーが次のように書いているからである.

当初から疑問に思っていたのですが、「男の顔は履歴書」は大宅先生が言ったのでなく、大ヒットした映画の題名にひっかけて、「女の顔は請求書」と、当時の大宅先生がいったのじゃないかと最近は思っています。
そのほうが、この言葉の妥当性があるような感じを最近持ちはじめました。
それにしても主役を演じた、故安藤昇氏は、男気と才覚に溢れた人物みたいですね。

 映画『男の顔は履歴書』(監督加藤泰,出演安藤昇,伊丹十三他) は劇場公開が昭和四十一年 (1966年) で,大宅壮一の「男の顔は履歴書」をタイトルに借用した作品である.
(ちなみに撮影は,松竹にこの人ありと知られた高羽哲夫)
 上に記事を引用したブロガーは,「男の顔は履歴書」は元々が映画のタイトルで,これを大宅壮一がもじって「女の顔は請求書」と言ったと書いているのだが,大間違いの妄想甚だしいとはこのことである.
「男の顔は履歴書」は大宅壮一の言葉に間違いない.年寄りはみんな知っていることだ.
 ただしバリエーションの方の「女の顔は請求書」は,大宅壮一の門下生の誰か,たぶん草柳大蔵が付け加えたものである.このことは吉行淳之介の随筆に書いてあったと思うが,肝心の随筆集の書名を忘れた.
 ちなみに,ずっと後に藤本義一が『女の顔は「請求書」』(PHP研究所,1981年) を書いたが,これは剽窃に近い.出版されたとき,おいおいパクリかよ,と思ったのを覚えている.

 で,件のブロガーを「ちゃんと調べてから書けバカヤロー」と罵倒しようとしたのであるが,いざ自分で調べても,よくわからんということになってしまった.
 ただまあ,いくらなんでも「男の顔は履歴書」は映画の題が先ということはない.そんな新説を唱えるのであれば,それなりの根拠を示さねばならぬ.「私はそう思う」では妄想甚だしいと言われても仕方ない.

 さて「男の顔は履歴書」だが,強欲を絵に描いたようなトランプ大統領の顔は酷い履歴書だ.
 人間は見た目で判断してはいけないというのは正論であるが,しかし正論にも限度はある.やはり「男の顔は履歴書」の方が諸兄納得できるところであろう.
 権力者の周りには必ず,権力に阿る輩がいる.それ故,権力を手にしたらそのような連中を遠ざけないと道を誤るという.これまた正論である.
 ではあるが,その権力が桁違いだと,正論なんか無力になるのが実際のところだろう.

 世界最強の権力者といえばトランプ大統領 (とプーチン) だが,トランプ大統領はゴルフが好きらしい.それは結構なことだが,大統領のティーショットは,大きく左に外れようが右にとんでもなく逸れようが,視界から消えたあたりにまで歩いていくと,不思議なことに必ずボールはフェアウェイ上に発見されるのだそうである.(ニッポン放送上柳昌彦談)
 そんなインチキゴルフのどこが楽しいのか私には理解不能だが,権力者というのはそういうものなんだろう.人間は見た目で判断してはいけないとか,権力に阿る側近を遠ざけよとか,そんな正論は無力なのである.

 ゴルフで誰もが思い出すのは金正日総書記であろう.Newsweek 日本版に次のような記事《金正日、7つの爆笑エピソード 》がある.

その後はスポーツの分野で並外れた能力を発揮。94年に初めてゴルフクラブを握った際には、北朝鮮唯一のゴルフコースで11回のホールインワンを記録し、38アンダーという驚異的なスコアをたたき出した。証人は17人のボディーガード。これを最後に、金はゴルフから引退したという。

 CNNには,金正日総書記とトランプ大統領のゴルフの腕前を比較する記事を報道して欲しいものだ,

 昨日の報道によると,トランプ大統領はワシントンで日米首脳会談を行ったあと,安倍総理大臣とゴルフを行って親睦を深める予定である.
 大丈夫か安倍晋三.トランプは,たとえ隣のコースにボールを打ち込んでしまっても,そのボールは自動的に必ずフェアウェイに戻ってくるという天才的なゴルファーなのだ.日米同盟の今後のためにも,トランプに金正日のごとく連続ホールインワンをキめられるような負け方はしないでほしい.
 そして日本の報道陣は,このようなトランプ首領様大統領の奇跡のゴルフを目撃しても,安倍首相に見解を求めてはいけない.
 なぜなら「コメントする立場にない」と安倍は言うだろうから,というのは昨日のラジオで上柳昌彦が言ったジョークである.(爆)

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