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2017年1月27日 (金)

王樓賀韋華傳

 伊藤雅文『邪馬台国は熊本にあった! ~「魏志倭人伝」後世改ざん説で見える邪馬台国~』(扶桑社新書) を昨日から読んでいるのだが,本書 Kindle 版の位置 No.492 に唐突に《王樓賀韋華傳第二十》が一部引用されている.『王樓賀韋華傳』にルビは振られておらず,どのような書物であるのか何の説明もない.

 そこで百科事典を調べると,『三国志』の巻四十六から巻六十五までが「呉書」であるが,その呉書中の,呉の武将である王蕃,樓玄,賀邵韋曜華覈の伝記 (すなわち王蕃伝・樓玄伝・賀邵伝・韋曜伝・華覈伝) を集成した列伝集のそのまた第二十というものであるらしいが,これは中国史において何と読むことになっているのか,皆目わからない.

 各武将を百科事典で調べてみたが,樓玄については,Wikipedia では【楼玄】の項目が立てられている.読みは「樓」「楼」いずれも「ロウ」でよいとして,中国史では旧字体「樓」と書くのが普通なのか,新字体「楼」でも構わないのかを知りたいところだが,Wikipedia に解説はない.
 また「王樓賀韋華傳」をテキトーに「オウロウガイカデン」と読んだら「いえ,慣用では○△□※#と読みます」なんて言われたりするおそれもある.
 学術論文ならいざ知らず,読者に買って読んで欲しい (著者が収入にしたい) 本を書くということは,読者ファースト (小池百合子風) でなければならない筈だが,著者伊藤雅文氏にそんな気は全くないようだ.
 もっと基本的なことであるが,地名人名を旧字体で表記するか,あるいは新字体で表記するかの基準がこの本には書かれていないし,実際に不統一である.この種の本で凡例を書くのは,最低限必要なことであると思うのだが.
 それに,著者は書名『王樓賀韋華傳第二十』をネットの検索サイトからコピペしたと馬鹿正直に書いている (位置 No.467) .
 インターネットには文字コードの問題があって,固有名詞であっても旧字体新字体が不統一にならざるを得ない場合があるのだが,『邪馬台国は熊本にあった!…』は紙に印刷した書籍であるから,その制限はないはず.従ってネットからのコピペであっても,書籍にする際に修正を行うべきである.
 それともこの字体不統一は Kindle 版だけに生じているのか.それならば「『邪馬台国は熊本にあった!…』初版に基づいて制作しましたが,一部の字体が異なります」と断り書きがあって然るべきだが,説明はない.難儀な本だ.

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