邪馬台国論争最強の新説か!
何が不毛だといって,不毛な論争の代表格は邪馬台国論争だろう.
amazon で何かおもしろい本はないかと探していたら,伊藤雅文『邪馬台国は熊本にあった! ~「魏志倭人伝」後世改ざん説で見える邪馬台国~』(扶桑社新書) が目についた.
これは去年の秋に出版された本で,帯に《古代史最大のミステリーへようこそ。1716年、新井白石の「古史通域問」に始まった邪馬台国論争300年目の新説登場!》とある.amazon の読者レビューで星4.5 という絶賛本だ.
邪馬台国論争が楽しいのは,「魏志倭人伝」に書かれている帯方郡から邪馬台国への行程において,「魏志倭人伝」に記述されている方角と距離を「方角が間違っている」「距離が間違っている」と勝手に辻褄を合わせ,自分が「邪馬台国はここにあって欲しい」と思う土地まで,強引に邪馬台国比定地を引っ張ってくるのが可能であるところにある.
その気になれば,邪馬台国の比定地は,皇居でも福島第一原発でも自由自在だ.
「邪馬台国は大戸島だった!」でも「卑弥呼はアンゴルモアの大王だった!」でもいいのだが,そうしないのは論者たちにわずかな羞恥心が残っているからに過ぎない.
それでも今までの論者は「魏志倭人伝」を一応の根拠にしてこれを改竄することに努力を傾注してきたのであるが,この伊藤雅文氏は,そもそも現在私たちが知っている「魏志倭人伝」そのものが,既に改竄された偽書であるという説らしい.
これは着眼点が新しい.すばらしい.この伊藤雅文説を敷衍すれば,「魏志倭人伝」は陳寿のフィクションであるとすることが可能で,「邪馬台国はなかった!」という本を書くことができることになる.すなわちこれまでの邪馬台国論争を木端微塵に粉砕できるのだ.
そこで私は,邪馬台国論争におけるたった一つの根本資料「魏志倭人伝」を否定し,従来の論争に終止符を打つこのトンデモ本は読んでみる価値があると思い,Kindle 版を購入した.
ところが,この本は,子供でも読める簡単な地名にはルビを振っておきながら,ルビが必要な地名には「敢えてルビを振らない」という方針だと書かれていた.
もしかすると著者はすげーめんどくさい性格の人なのかも知れないが,ともかく私は自分で索引を作りながら読み始めた.この本,嘘がうまくできていたら書評を書くことにする.(笑)
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