鎌倉のパエリア (十三)
料理店の商品は料理である.従って料理店は,店に来て食事をする客に料理の品質を保証しなければいけない.
料理店が行なわねばならない最低限度の品質保証とは,食品衛生だ.いくら美味でも食中毒のおそれがあっては端から論外なのだ.食べて安全安心な食事であってこその,うまいまずいに違いない.
Brasserie 雪乃下のなんちゃってバーニャカウダのことだが,何が目的で「食べられない煎り大豆」に生野菜のスティックを挿して鉢植えの花に見立てるという盛り付けをしたのか,その必然性が不明だ.厨房の人間の基本姿勢に問題がある.
また同レストランの雪乃下パエリアは,レシピを作った本人が試食していないのではなかろうか.
税込み千八百五十円なら,もっとずっとまともな料理が作れるはずだ.例えば大手のファミレスが「スペイン料理フェア」を企画したら,もっとコスパの良い料理を提供できると思う.
小町通りや若宮大路の飲食店にはこんな店が多いのだが,なぜこんな店がはびこるか.
つまるところ鎌倉の繁華街は観光地であって,顧客満足度が低くても,一見客だけでやっていけるからだろう.
〈レストランへの階段〉
〈バーニャソースをテイクアウトしたのは,容器に表示が適切に書かれているかどうかを確認するためである.結果は全然ダメだった (笑)〉
ちなみにフランス料理店を名乗りながら釜揚げシラス丼だのハヤシライスだのをメニューに載せている料理人がどんな人物かと興味が湧いたので,同店公式サイトの料理人紹介を見てみたら次のように書かれていた.
《料理専門学校卒業後、単身スイスへ渡り5年間の修業を経て帰国。その後、神奈川・東京を中心に11年間料理人を務めた後、現在の【Brasserie雪乃下】に料理長として就任。》
フランス料理を勉強するならフランスに行くだろうから,スイスで修業したことがフランス料理店 Brasserie 雪乃下の無国籍化に大いに寄与したのであろう.なるほど.
余談だが,藤沢駅の近くに「イタリアン居酒屋」と称する居酒屋「トラットリア ピラータ~TRATTORIA PIRATA~」がある.
いかにもわざとらしくイタリアっぽい名の店のシェフの経歴は,同店のサイトにこう書かれている.
《高校卒業後、飲食店でバイトを始め、その後磯料理屋にて修行!》
磯料理屋でイタリア料理を覚えたという非常に興味深い経歴である.おもしろそうなので出かけてみようかと思ったが,公式サイトは「女子会向き」の店だとアピールしていて,爺さんには敷居が高そうなので諦めた.(笑)
ま,そんなこんなでこの日の昼飯は大変に不満足なものであったと長々と書いてみたが,この日鎌倉に出かけたそもそもの目的は「松本竣介 創造の原点」展だったのだ.書いているうちに忘れそうになった (笑) が,こちらはとても良い絵画展であった.会期残すところ十日.まだのかたは是非.
| 固定リンク
「外食放浪記」カテゴリの記事
- ロウカット玄米の混ぜご飯(2022.12.08)
- 焼きおにぎらず(2022.11.12)
- 鶏とクスクスのグラタン(2022.06.22)
- ちりめんと紫蘇の実漬のご飯(2022.06.13)
- 生キクラゲを食う初体験(2022.06.13)
「冥途の旅の一里塚」カテゴリの記事
- ちょっと心配 (続)(2020.01.29)
- ちょっと心配(2020.01.26)
- 東京都美術館のケーキ(2019.12.05)
- まさかのお一人様ディズニー (三)(2019.06.09)
- まさかのお一人様ディズニー (二)(2019.06.07)
コメント