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2016年12月 1日 (木)

鎌倉のパエリア (八)

 私が接客係の娘さんに雪乃下パエリアとバーニャカウダを注文し,さてとばかりに周りのテーブルに目をやると,既にあらかたの席はうまっており,そして私の席から見える限りそのすべての席に老若の女性客が着いていた.つまり爺さんの私が本日たった一人の男性客のようだった.
 まあ平日の小町通りのレストランは婦人客で満員になるものなんだろうなあ.そのあいだ男たちは外回りの営業に出たり,工場で機械の整備なんぞを忙しく立ち働いているわけだが.
 てな感慨にひたる間もなく,雪乃下パエリアの前菜が運ばれてきた.ランチの献立はすべて前菜とセットになっているとメニューに書かれているのだ.
 その前菜は,木製のトレイに小鉢が二つと,コーヒーカップよりもかなり小さなカップが載せられていた.
 そして笑顔が素敵な接客係のお嬢さんは「前菜のサラダとピクルスとスープになります」と言った.
 「スープ」はポタージュで,量は五十ミリリットルほどであった.まるでおままごとのようで,幼少時に隣家のさっちゃんとおままごとをして遊んだ記憶が脳裏に浮かんで懐かしい思いがした.
 小鉢の「ピクルス」はサイコロくらいの大きさにカットした大根が三つで,食べてみると,私には大根を調味液に漬けた浅漬けとしか思えなかった.
 ピクルスというのは,根菜などを乳酸発酵させたもので,風味はこの前菜の「ピクルス」とは全く異なるものだ.何かの間違いで,賄い用の大根の浅漬けとピクルスとを間違って出してしまったのだろう.きっとそうに違いない.
「サラダ」の小鉢には,ニンジンの「敷きづま」が一つまみ入っていたが,それだけで他に何も見当たらない.これはいったいなんだ.
 ちなみに「敷きづま」とは,大根またはニンジンを極細に切ったもので,刺身の下に置くものをいう.スーパーで売っている刺身のパックは,発泡スチロールトレイに大根やニンジンの「敷きづま」を並べ,その上に大葉を載せ,刺身を大葉の上に置いたら,菊の花や海藻をあしらって包装してあるのが普通だが,アレが敷きづまである.
 詳しくはこのサイトを参照頂きたい.
 
 そのニンジンの敷きづまが私の前の小鉢にあるのだが,よく見るとドレッシングがかかっている.ということは,これがこの店では前菜の「サラダ」なのかも知れない.
 余談だが,大根やニンジンの敷きづまは,安価な専用の道具が販売されているので簡単に作れる.一例として千葉工業所製の「回転つまきり君」を紹介する.これは実に見事に刺身のつまが作れる道具だが,しかし刺身のつましか作れないという大きな問題があるので,家庭で購入するのは控えたほうがいいだろう.

 で,笑顔が素敵な接客係のお嬢さんは「前菜のサラダとピクルスとスープになります」と言ったが,いつまで待ってもこの「サラダ」はサラダになりそうもなかったので,仕方なく,刺身を食べ終わったあとの皿に残った敷きづまを名残惜しくつまんでいるような寂寥感漂う「サラダ」を食べた.名古屋の「モーニング」のサラダみたいなものを出せとは言わぬが,しかしもう少しなんとかならなかったものか.
 そして大根の浅漬け風「ピクルス」とおままごと風「スープ」も食べたところで,ドドーンとバーニャカウダが登場した.
(続く)

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