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2016年11月22日 (火)

鎌倉のパエリア (四)

 藤沢駅―鎌倉駅のバスは,高徳院の脇を過ぎたあと長谷観音前丁字路を左折し,鎌倉文学館の前を通過してずっと道なりに行き,下馬交差点で若宮大路に入る.
 この交差点でまた左折してJR横須賀線高架線路の下をくぐると,この辺りではよく知られた焼鳥屋「秀吉」が右に見える.この「秀吉」は駅からちょっと歩かねばならないところにあるのだが,観光客に人気がある.しかしまあ内容的にはただの焼鳥屋である.店内は狭いので,焼いてあるのを買って外で立食いする人が多い.腰かけて食べたければ十一時の開店と同時に入るとよろしい.もちろん朝酒という具合になる.

 焼鳥の「秀吉」はどうでもいいとして,その隣にある鎌倉市農協連即売所がこれまた観光客に知られたところである.何がよく知られているかというと,ここは「鎌倉野菜」の直売所なのである.観光客向けサイトを一つ紹介しておく.
 テレビの食べ歩き番組なんかを見ていると,割と頻繁に「鎌倉野菜」なる言葉を聞く.
 私の知る限り,○○野菜なる言葉の始まりは京都府下で古くから栽培されてきた一群の伝統野菜である「京野菜」である.ただこの京野菜とは何かというのは漠然としているのだが,Wikipedia【京野菜】に一般的な解釈が載っているので引用してみよう.

特徴
京野菜の定義は曖昧で、明確には定められていない。京都で品種が確立したもの、または京都独自の生産技術によって生み出された品目などを総称するが、場合によっては京都府内でほとんど生産されないユリ根なども含まれる。一般的には明治時代後半以降に日本に導入された野菜は含まれず、5世紀 - 12世紀頃までに中国や朝鮮半島から日本に伝わったサトイモやダイコンなどの野菜などが京野菜の対象とされるが、20世紀になってから海外品種との交配で作出された万願寺とうがらしが含まれるような場合もある。その一方で、伝統野菜だけでなく、広義には京都で作られる野菜全てを京野菜とみなせる、という京都市の見解もある。
京野菜は現代の交雑品種などに比べて、生産性や形状の規格など広域流通の便が高くないため、20世紀半ばには生産が減少したが、京都府や京都市による品種の調査・保存やブランド京野菜の推進などにより、1990年代以降は生産・消費が拡大している。1990年の調査によれば、一般的な改良品種に比べて京野菜はビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含むという。なお、京都府農林水産部では毎月15日を京野菜の日とし、PR活動を行っている。また、2008年から京野菜検定が開催されている。他にこのような伝統野菜として、大阪府のなにわ野菜、奈良県の大和野菜、石川県の加賀野菜などがあり、各地で保存伝承の試みが行なわれている。

 上の引用中,《一般的には明治時代後半以降に日本に導入された野菜は含まれず、5世紀 - 12世紀頃までに中国や朝鮮半島から日本に伝わったサトイモやダイコンなどの野菜などが京野菜の対象とされる》が妥当な見解だろうが,農業における見境ない商業主義が流行し,栽培者が何でもかんでも「京野菜」と言い始め,「京野菜」は食文化史的な意味を失った単なるブランドと化した.
 このデタラメな (つまり消費者が認めた価値ではなく生産者が自称したに過ぎない) ブランド崇拝が各地に普及し,鎌倉市周辺で栽培される野菜を鎌倉野菜というブランドに仕立てたのである.もちろん日本の伝統野菜ではない.
 ではあるが,まずい野菜かというとそんなこともない.フツーにおいしいから,鎌倉市農協連即売所に出かけて珍しい栽培品種を探してみるのも一興だと思う.

 とまあそんなことを考えたので,「松本竣介 創造の原点」展を鑑賞する前に,早めの昼飯は「鎌倉野菜を食べられる」を店の売り文句にしている Brasserie 雪乃下 にしようと思いついた.
(続く)

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