続・ゴキブリ缶 (四)
前稿《続・ゴキブリ缶 (三) 》の末尾に私は次のように書いた.
《このように食品の製造工程で異物が混入することはまれなことであるため,品質保証担当者は事故の対処経験を積みにくく,そのため食品の品質保証に関する見識の低い (=責任者の能力が低い) 会社は対処を誤ることがある.(異物混入の経験豊富という会社は,それはそれで困ったものである〈笑〉)》
品質保証担当者の経験値が低いとして食品業界で笑われた例を一つ挙げよう.「はごろもフーズ」と同じく静岡県の缶詰製造業者「清水食品」(現エスエスケイフーズ) の起こした事件である.
十六年前の夏 (2000年7月),三重県鈴鹿市の主婦が,清水食品がタイから輸入販売したミニトウモロコシの缶詰「ヤングコーン」を開けたところ,ヤモリの死骸が混入していた.
驚いた主婦は清水食品に苦情連絡をした.しかし電話を受けた同社の品質保証担当者は,缶詰の中にヤモリが混入するなどとはあり得ないと一笑に付して相手にしなかった.クレーマーだと思ったのであろう.
しかしこの主婦はクレーマーではなく,ヤモリの混入は事実であった.
清水食品の電話応対に怒った主婦は,地元の三重県鈴鹿保健所に届け出た.鈴鹿保健所は本件を静岡県中部保健所に転送した.保健所間の広域協力はかなりしっかりしていて,静岡県中部保健所は清水食品を指導し,同社は主婦に謝罪すると共に,同じ日に製造された缶詰約二万六千個の自主回収を行った.
しかし実は本件は,必ずしも自主回収には相当しない事案だったのである.
というのは,ヤモリはゴキブリなどと異なって,食品工場内で集団で繁殖する生き物ではないからである.(後述)
このヤモリのヤングコーン缶詰への混入は偶発的な事故だった可能性が高く,実際,回収された二万六千缶にはヤモリの混入はなかったと聞いている.
しかるに清水食品が自主回収せざるを得なくなったのは,ひとえに主婦からの電話に応対した担当者の不遜な態度が原因だったのである.
次にもう一つ例を挙げるが,こちらは自主回収しなかったものである.
(続く)
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