鎌倉のパエリア (一)
今年の一月末に神奈川県立近代美術館の鎌倉館が閉館したあと,その事業を引き継いだ鎌倉別館にも葉山館にも足を運んでなかったのだが,先月から年末まで「松本竣介 創造の原点」展をやっているので,久しぶりに鎌倉に出かけてみた.
あとでわかったのだが,鎌倉別館は年明けから暫く休館するという.普通の展示替えなのか建物のメンテなのかはわからない.鎌倉別館のサイトにも現在のところ説明が掲載されていない.
さて一昨日,いつものように藤沢駅南口から鎌倉行のバスに乗り,大船駅近くの深沢経由で梶原,常盤を通って鎌倉駅まで行った.
現在使われている高校教科書がどんな内容かは知らないが,私の高校時代の教科書には,日本史に梶原景時の名があり,古文の教科書にはその嫡男景季のことが書かれていた.
この二人,いずれも大学受験生は教科書の記述を丸暗記してでも覚えなければならぬ重要人物であるからして,現在の高校生も必ず承知のことと思われる.
古く十一世紀,今の藤沢市から鎌倉市のあたりに拠った桓武平氏の流れをくむ一族が,その領地の名を取って鎌倉氏と称した.
高校教科書には名前が出てこないかも知れないが,平安時代後期の武将,鎌倉景正 (平景正) は,私の住む辺りでは歴史好きな中学生なら知らぬ者はいないだろう.
その鎌倉氏から分かれたのが大庭氏や梶原氏である.
梶原氏は,鎌倉景通の嫡男の梶原景久が相模国鎌倉郡梶原にて梶原氏を称したのが始まりである.
Wikipedia【鎌倉氏】に掲載されている系図を下に示す.
村岡良文
┃
忠光
┃
貞通
┃
忠通
┣━━━━━━┓
鎌倉章名 三浦為通
┣━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┓
景成 景村 景通 良名
┃ ┃ ┃
┃ 景明 梶原景久
┃ ┣━━━━━━━━━━┓ ┃
┃ 大庭景宗 長尾景弘 梶原景長
┃ ┣━━━━━┓ ┣━━━━┓ ┃
┃ 懐島景義 大庭景親 長尾為宗 長尾定景 梶原景時
景政(景正)
┣━━━━━━┳━━━━━┳━━━━━━━┓
大庭景継 景秀 景経 安積景門
┃ ┃ ┃
┃ 高政 古屋景縄
┃ ┃
┃ 香川家政
┃ ┃
┃ 香川経高
┣━━━━━━┳━━━━━┓
長江義景 板倉重時 長尾景行
┃
桑良景行
鎌倉の梶原氏で最も有名な人物は梶原景時であるが,それは景時が,石橋山の戦いで敗走した源頼朝を窮地から救ったからである.そのときのことは『吾妻鏡』や『源平盛衰記』に活写されていて大変に有名な場面である.
Wikipedia【梶原景時】から抜き書きしてみよう.
《生涯
頼朝への臣従
梶原氏は坂東八平氏の流れをくむ鎌倉氏の一族であり、大庭氏とは同族である。曾祖父、または従曾祖父に後三年の役で源義家のもとで戦い武勇を謳われた鎌倉景政がいる(梶原氏の祖・景久の従兄弟)。梶原氏は大庭氏らとともに源氏の家人であったが、平治の乱で源義朝が敗死した後は平家に従っていた。
治承4年(1180年)8月、源頼朝が挙兵して伊豆国目代・山木兼隆を殺した。景時は大庭景親とともに頼朝討伐に向い、石橋山の戦いで寡兵の頼朝軍を打ち破った。敗走した頼朝は山中に逃れた。
大庭景親は追跡を続け、山中をくまなく捜索した。『吾妻鏡』によると、この時、景時は飯田家義ともども頼朝の山中の在所を知るも情をもってこの山には人跡なしと報じて、景親らを別の山へ導いたという。
『源平盛衰記』ではより詳しくこの場面が述べられている。敗軍の頼朝は土肥実平、岡崎義実、安達盛長ら6騎とししどの岩屋の臥木の洞窟(現在の湯河原町)へ隠れた。大庭景親が捜索に来てこの臥木が怪しいと言うと、景時がこれに応じて洞窟の中に入り、頼朝と顔を合わせた。頼朝は今はこれまでと自害しようとするが、景時はこれをおし止め「お助けしましょう。戦に勝ったときは、公(きみ)お忘れ給わぬよう」と言うと、洞窟を出て蝙蝠ばかりで誰もいない、向こうの山が怪しいと叫んだ。大庭景親はなおも怪しみ自ら洞窟に入ろうとするが、景時は立ちふさがり「わたしを疑うか。男の意地が立たぬ。入ればただではおかぬ」と詰め寄った。大庭景親は諦めて立ち去り、頼朝は九死に一生を得た。》
その梶原景時の嫡男が景季であるが,その名が後世に伝えられたのは『平家物語』中でも最もよく知られているシーンの一つ「宇治川の先陣争い」による.
原文と現代語訳の一例を紹介しておく. 読めば高校生時代を懐かしく思い出すかたも多かろう.
さてバスは次は梶原の次に常盤を通って行く.
常盤と聞いて,常盤御前と常盤貴子のどちらを思い浮かべるかで人間は二つのタイプに分類できるといわれている.誰が言っているかというと,私だ.
ただ,鎌倉の常盤は,各地にある常盤という地名の一つで,常盤御前とは関係ないようだ.常盤貴子はどうかというと,彼女は鎌倉市に隣接する横浜市の出身であるから,御先祖を辿るとなにがしかの関係があるかも知れないが,ここでは断定を避けておく.あるといいな.
(続く)
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