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2016年11月 6日 (日)

続・ゴキブリ缶 (三)

 先月 (10/27),「はごろもフーズ」は同社サイトに社告を掲載し,同社製「シーチキンLフレーク」にゴキブリの死骸が混入した品質事故があったことを公表した.
 ただし,消費者から通報があったのち,ゴキブリが製造工程で混入したことが確定したのは広告の二週間近く前のことであった.
 同社社告から事件の概要を以下に引用する.

10 月13 日にお客様から「製品に虫が混入している」とのお申し出があり、調査したところ、製造工程で混入した可能性が高いことが判明しました。
弊社といたしましては、製造日から1年10 ヶ月を経過し、他のお客様からのお申し出がないことから、連続性はなく、現在販売している製品につきましては、安心してお召し上がり頂けると判断いたしております。
現時点では連続性がないことから、「食品企業の事故対応マニュアル作成のための手引き」に準じて対応を行い、またお申し出いただいたお客様への対応を最優先させていただいたため、結果として公表が遅れたことをお詫び申し上げます。
なお、当該工場に対し、整理整頓、清掃の徹底に加え、防虫対策、専門業者による消毒の徹底を指示し、既に実施しております。
今後、万全を期すため、継続的に異物混入防止対策、防虫対策を講じ、品質管理体制をさらに強化して参ります。
何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 上の引用について,説明する.
 食品に異物が混入しているとの通報が,その製品の製造会社または行政 (保健所) にあっても,必ずしもその異物が製造工程で混入したものであるとは限らない.
 消費者が当該食品の包装を開封したのちに混入する事例があるからである.公表された詳しい調査データはないので私の長年の経験に基づく印象を書けば,異物混入通報のほとんどはこの消費者の責任によるものである.

 某社のマーガリンを購入した消費者からあった特殊な異物混入通報例を一つ挙げよう.
 そのマーガリンを使っていたら,中にかなり大きな金属片が入っているというのである.
 消費者から当該製品がパッケージ丸ごと宅配便で送られてきたので,その会社の品質保証部署の担当者が,マーガリン中に入っていた金属異物を注意深く取り出したところ,それは平たいヘラのような形のバターナイフであった.
 ただちにネット上にあるそのバターナイフの画像を見つけて調べ上げたところ,それは国産品ではなく,ある輸入品雑貨店で販売されたものであることが,その日の深夜になって判明した.
 製品が送られてきた翌日,消費者に画像と共に「発見された異物は一般的なものではなく,特定の輸入雑貨店で販売されたバターナイフであり,これが製造工程で混入する可能性は極めて低い.そのバターナイフに心当たりはないでしょうか」という旨の回答をしたところ,次のような返答があった.
 「あのバターナイフはうちの息子がイタズラで埋め込んだものでしたよ,あはは」

 もう一つ.
 某社の食品を購入した消費者から「食べていたらガリッと音がして,五ミリほどの大きさの金属塊が出てきた,どうしてくれる」という怒声の電話通報があった.
 その消費者から送られてきた金属塊を調べたところ,虫歯の治療で充填される金属であることが判明した.
 歯科医に確認の上「金属塊は虫歯充填物であるが,これが製造工程で混入する可能性は極めて低く,また製造にあたった従業員で虫歯充填物が紛失した者はいなかった」旨の回答を行ったところ,それ以後,消費者からの連絡はなかった.虫歯充填物はその消費者本人のもので,咀嚼中に脱落したものであると考えられた.実は虫歯充填物が脱落して異物混入と誤認される例は多いのである.

 上に二例を挙げたが,異物混入通報のほとんどは消費者の誤認によるものである.
 また食品業界で名を知られた「消費者」の常習的悪意に基づく捏造もある.
 このように食品の製造工程で異物が混入することはまれなことであるため,品質保証担当者は事故の対処経験を積みにくく,そのため食品の品質保証に関する見識の低い (=責任者の能力が低い) 会社は対処を誤ることがある.(異物混入の経験豊富という会社は,それはそれで困ったものである〈笑〉)
(続く)

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