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2016年11月 2日 (水)

現実と虚構 (八)

 間違いかも知れないので断定はしないが,今の高校では「生物」は確か必修科目ではなく選択科目ではないか.
 ネットで調べた限りでは,理系大学に進学するクラスでは「化学」が必修で,これに選択科目である「物理」または「生物」のいずれかを加えた二科目で大学受験するのだと思われる.
 ところが昭和四十年代,大学進学を生徒の進路とする高校の理科クラスでは「物理」「化学」「生物」はどれも必修科目であった.その後,「生物」が選択科目になるときには一般には反対意見が多かったと記憶しているが,当時の文部省は教育界の反対を押し切って「生物」を必修から外してしまった.たぶん「ゆとり教育」かなんかの影響だったろう.
 このようにして「生物」が選択科目となり,生物に関する初歩的な知識の欠如した大学生が大量に生まれた.現在もそうであろうと思われる.(反対に理系でありながら「物理」の知識が全くない世代が一方に存在する)
 昨日の記事に《「資料を調べもせずにテキトーなことを書いた」サイト》の例を挙げたが,そのブログの筆者は,高校で生物に関する基礎知識を学ばなかった世代の人だろうと思われる.
 昆虫において幼虫が成虫になる際,卵→(孵化)→幼虫→(蛹化)→蛹→(羽化)→成虫 という段階を経るものがあり,これを完全変態というのであるが,上のブログ筆者の頭の中では「卵はチョウの第0次形態,イモムシは第1次形態,蛹は第2次形態であり,このようにしてチョウは世代交代を介さずに進化するのである」となっているのであろう.(爆)
 いや笑いごとではない.「シン・ゴジラ」ネタバレサイトを閲覧していると,深刻な事態が進行している (進行してしまった) と考え込んでしまうのである.

 よく知られているように,米国南部の州の学校では1925年から1967年まで,州法で進化論を教えることが禁じられ,まともな「生物」教育が行なわれていなかった.聖書の記述を一字一句信じ,この世のすべての生き物は神が短時日に作り賜うたものであるとして,生物の進化を頑迷に否定する福音派キリスト教徒が全人口の四分の一を占めていることの影響である (福音派キリスト教徒は共和党の支持基盤だ).
 実際,米国の有名なコミック「原始家族フリントストーン」では,原始人が恐竜と同時代に暮らしているのだ.
 この米国人の体たらくに比較すれば,かつて遥かに教養レベルが高かった日本人 (園山俊二「ギャートルズ」で,クロマニオン人たちと暮らしているのは恐竜ではなくマンモスだ) も,いずれ米国人並の知性の国民に堕すると考えられる.
(続く)

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