焼入れについて
テレビの情報バラエティ番組の中には随分と内容がデタラメなものがあって,筆頭はテレビ朝日「林修の今でしょ!講座」,次が日テレ「世界一受けたい授業」だろうか.この二番組,全面的に嘘ばかりというわけではないが,事が食品分野や健康関係になると,聞いて呆れるようなことを放送することがある.
毒にも薬にもならないのがテレビ東京「ソレダメ!~あなたの常識は非常識!?~」で,時間つぶしにちょうどいい.
先日の記事で「和風総本家」をほめたが,この番組は内容が空疎な日本讃美ではないということのほかに,取材がしっかりしていることにも好感が持てる.
しかし,私が「和風総本家」を録画保存するようになってから初めてのことだが,先日の放送で明らかな誤りがあった.
定番企画「世界で見つけたMade in Japan」(8/25) に,兵庫県三木市で左官が使用する鏝 (柳刃鏝) を製造している佐武幸吉さんが登場した.
誤りがあったのは,佐武さんが旋盤に似た機械で成形した鏝の原型品に焼入れをする場面のナレーションとテロップである.今日時点まで,ネット上にこの内容の誤りが指摘されていないようなので,ここに書いておく.
まず,鏝を熱する場面で次のように説明が画面に出た.これは間違いではない.
次に高温に焼かれた鏝を冷却用の油に入れるところで次のように文字とナレーションで説明された.
焼入れというのは,説明するまでもないが,鋼などの金属を所定の高温状態から急冷し,材料を硬くし,耐摩耗性などの向上を目的とする処理をいう.
焼入れ加工する中間製品を炉などで高温に加熱したあと,冷却剤に加工品を投入して冷却する.
この時に用いられる冷却剤としては,水,油,食塩などの水溶液,加圧ガスなどが使用される.
上に挙げた「和風総本家」の放送で《焼き鈍し》と説明されたのは間違いで,油で冷却するのは焼入れの工程 (冷却) なのである.
焼なましは焼入れとは正反対の処理である.どうしてこんな初歩的間違いがなされたのか不明であるが,いつもは良い番組なのに残念なことであった.
ちなみに,かつて日本の伝統的な野鍛冶,農鍛冶は,焼入れに菜種油を用いた.現在では鉱物油系のものが使用されていると聞く.
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