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2016年9月29日 (木)

環境破壊雑感 2016/9/29

前稿に

大手の工場の PCB は,PCB 系熱媒体の製造者 (鐘淵化学〈現株式会社カネカ〉など) が回収したと聞いているが

と書いた.
 これについて,もう十数年前に亡くなったのだが,植物油製造会社の工場幹部だった某氏から私が聞いた一つの伝聞がある.
 カネミ油症事件後,その人が勤務していた工場では,熱媒体として使用していた PCB を製造設備から可及的に抜き取り,それはメーカーが回収した.しかし PCB に汚染された設備 (熱媒体加熱器,配管類) は引き取らなかったというのである.
  PCB は油に溶けるから鉱物油などを用いて設備機器を洗うことはできるので,そうすれば洗浄された機器は鉄屑として処分できる.しかし PCB が溶け込んだ大量の洗浄廃液はどうすればいいのか.
 何かすればするほど, PCB に汚染された機器や廃液が増えていくのである.
 この事態に追いつめられた某氏は,PCB 汚染された設備機器を工場敷地に埋めることを決断したという.それが,某氏が亡くなる直前に私に伝えた話である.
 私は《環境破壊雑感 2016/9/20 (1)》に,企業は自社所有地に産廃を自由に埋めることのできた時代があったと書いた.
 上に書いた某氏の行為は法的な責任は問われない (自分の所有する土地への産廃投棄を取り締まる法自体がなかった) が,道義には悖る.某氏は私に,かつて環境汚染に直接関与したという苦い体験の記憶を,胸にしまったままあの世に持って行きたくないと語った.懺悔だったのかも知れない.
 カネミ油症事件後,全国で公共水域に違法に投棄された PCB,工場敷地に埋められた PCB はどれくらいあったのだろう.関係者がほとんどすべて死去したいま,それを調査することは不可能である.ただ私は,そういうことがこの国にかつてあったと,懺悔を聞いた者としてここに記すのみである.

 さて PCB 問題の現状につき,Wikipedia【ポリ塩化ビフェニル】から一部引用する.

日本の状況
日本では、1972年に行政指導という緊急避難的な措置として製造・輸入・使用を原則として中止させ、翌1973年には、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律を制定 (発効は1975年) し、法的に禁止している。PCBを含む廃棄物は、国が具体的対策が決定するまで使用者が保管すると義務付けられたが、電気機器等については、耐用年数を迎えるまで使用が認められたことから、PCBを含む機器の所在や廃棄物の絶対量の把握が曖昧なものとなった。
1980年代以降になるとPCBの危険性に対する認識が風化し、保管されていた廃棄物が他の産業廃棄物と一緒に安易に処理されるなど、行方不明になる例が報告されるようになった。厚生省は1992年と1998年に保管状況の追跡調査を実施したが、調査を通じて大量のPCBを含む大型トランスやコンデンサが、わずか6年の間に台数比で4.1%もの機器が行方不明になる実態が明らかにされている。1972年からの紛失率を考えた場合には膨大な量になることは明らかであり、一刻も早い抜本的な処理体制の確立が急務となった。

一方で、処理体制の模索は絶えず続けられてきた。1976年には通商産業省の外郭団体として電機ピーシービー処理協会 (現:電気絶縁物処理協会) が設立され、高温焼却処理施設の設置が模索されてきたが、PCBの危険性を危惧する住民運動により全て頓挫。日本ではその後約30年にわたる長い間、PCBを含む廃棄物の具体的な処理基準や処理施設は公に定められないままであった。1990年代以降は、新たに安全な処理方法の検討が行われた結果、処理方法の多様化が認められ、2000年代に入ると一部の企業においては、商業的な処理技術の立証を視野に入れた実験的処理が行われるようになった。
2001年6月、日本はPOPs条約 (後述) の調印を受けPCB処理特別措置法を制定し、併せて環境事業団法を改正して、2016年までに処理する制度を作った。
こうした対策は進んでいるものの、依然として日本国内ではPCBを使用した機器があふれており問題視されている。一例では1999年に青森県の高校、東京都八王子の小学校にて、相次いで照明器具 (蛍光灯) 内のPCBを使用したコンデンサが老朽化のため爆発、生徒や児童に直接PCBが降りかかるといった事故が発生。それらに続いて全国各地で同様の事故が発生し、2001年 (平成13年) に閣議了解で同年末までに交換を終える決定が為されたにも関わらず、2013年に至っても北海道の中学校で同様の事故が発生するなど、公共施設をはじめ多くの場所で使用され続けている。1970年代以前のコンデンサー類の全てでPCBが用いられているとは限らないが、今となっては使用状況が正確に把握できないこともあり、眠る爆弾として衛生面、環境面から恐れられる存在となっている。

 さらに,この記述にリンクしている Wikipedia【ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法】からも下に引用する.

制定の背景
ポリ塩化ビフェニル (PCB) は、1968年のカネミ油症事件などで毒性が社会問題化し、PCBの製造・輸入は1972年から行政指導によって製造が中止され、化審法の制定 (1973年) によって事実上禁止された。またPCBを含む機器・複写紙あるいは廃棄物 (ウエスなど) は、事業者により自己保管することとなった。
1976年の廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (廃棄物処理法) の改正よりPCBあるいはPCBを含む廃棄物は特別管理産業廃棄物に指定され廃棄方法として高温焼却による処理を認められたものの、事実上、処理・処分ができなかった (ごく限られたPCB廃棄物のみ実験的に処理が許可された) ため、PCB廃棄物は30年に渡り、ほとんど廃棄処分されずに事業者により保管され続けていた。
一方、厚生省はPCB使用機器保管状況調査結果を1993年および2000年に公表したが、保管中のPCB廃棄物が多数紛失していることが判明し社会問題となった。
そこで、2001年に保管されているPCBの確実かつ適正な処理の確保のため、PCB処理特別措置法を制定した。

規制と罰則
PCB廃棄物の保管事業者は、平成39年度までに処理することを義務づけている。また罰則も規定されている。
平成39年3月31日までに適正処理を行わず、環境大臣または都道府県知事による改善命令に違反した場合:3年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金まはた併料。
PCB廃棄物を譲り渡し、または譲り受けた場合 (環境省が定める場合を除く) :3年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金まはた併料。
PCB廃棄物の保管および処分について届け出を行わなかったり、虚偽の届け出をした場合:6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金。
PCB保管事業者の相続、合併または分割により事業を継承した法人が承継の届け出を行わなかったり、虚偽の届け出をした場合:30万円以下の罰金。
このほか規制と罰則には、廃棄物処理法にも規定がある。同法による内容は、具体的には以下の通り。
PCB廃棄物を不法に投棄した場合:法人には1億円以下の罰金。
PCB廃棄物の収集運搬や処分を無許可で営業したり、措置命令に違反した場合:5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金まはた併料。
許可を受けていない収集運搬・処分業者に委託した場合:5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金まはた併料。
マニフェストに虚偽の記載をした場合:50万円以下の罰金
PCB廃棄物の管理責任者を置かなかった場合:30万円以下の罰金

 カネミ油症事件後,PCB による環境汚染に対して立法も行政も手をこまねいたまま数十年が経過した.そして事件は風化し,国民は PCB のことを忘れた.法は罰則を定めたが,それにより責任を問われるべき者たちは既に世を去っている.

 もう一つ,気になることがある.天変地異災害によって生じる PCB 環境汚染はどうなるのだろう.
 阪神・淡路大震災や東日本大震災により,被災地域に保管されていた PCB は環境中に拡散したと思われるが,行政はこれにどう対処したのか.そのことを取り上げたメディアを,私は知らない.

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