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2016年9月20日 (火)

環境破壊雑感 2016/9/20 (1)

 ところで,そもそも築地市場の移転に関してこんな問題が起きたのは,東京ガスが豊洲の工場敷地に産業廃棄物を投棄したからであるが,その点に関してテレビも新聞も追及しないのはなぜか.

 企業に環境の保全という概念がなかった明治から昭和の終わりに至るまで,「企業が自分の土地には何を捨てても自由だ」という思想がこの国を支配していた.国もそれを放置していた.なぜなら,産業廃棄物処理施設を個々の企業が保有することはかなり難しく,また処理コストも高いからである.そんなことに費用をかけるよりも埋めてしまえという思想が一般的であり,環境の保全よりも経済成長が優先の時代だったのだ.
 それどころか,大気中や河川や,自分の土地ではないところに,企業が環境汚染物質を投棄した結果が「公害」ということだった.若い人たちは知らないかも知れないが,四日市も水俣も,そんなに遠い昔の話ではないのだ.

 日本の法律は道徳をうたわないが,その代わりに公共の福祉という概念がある.さすがに公害の激化により,企業の野放図な環境破壊を取り締まる必要が出てきたのだが,そのときに行政は,自由な企業活動は公共の福祉に反しない限り認められるという理念下に,企業活動を制約した.
 これで大気や河川や自分の土地以外に廃棄物を投棄することは禁止できたが,しかし企業が,その所有する土地に環境汚染物質を投棄することは制限できなかった.(その土地から汚染物質が外部に流失した場合は取り締まれるが)
 なにしろまだ日本社会にコンプライアンスという概念がなかった時代である.
 当時,多くの企業は,利益のためなら違法行為を厭わなかったのである.
 そこでこれに対抗して行政は,たとえ自社所有地であっても,産業廃棄物の投棄には産業廃棄物処理業の許可が必要であるとした.環境破壊をやりそうな企業には,廃棄物処理業の許可を与えなければいいのである.
 こうしてようやく,企業による環境汚染物質の自社所有地への投棄は行われなくなった.
 これがいつのことかというと,水俣以来幾星霜,情けないことに平成の時代になってからなのである.

 しかし,違法行為を屁とも思わぬ企業は,今でも自社所有地に産廃投棄を続けている可能性がある.
 例えば,廃棄物処理業者を装った会社が,自分の土地に産廃を山のように積み上げておき,ある日行方をくらます.その後,また別の土地を購入して同じことを繰り返すなんてことが普通に行われているのである.

 それはさておき,豊洲のことに戻ると,東京ガスは過去,豊洲の工場敷地に色んなものを埋めてきた.
 先日テレビの情報番組に出演した環境専門家が,豊洲の東京ガス工場跡地でサンプリングした膨大な数の土壌試料の分析結果を,敷地図面にプロットした資料を示した.
 それによるとベンゼンなどは敷地全体に分散しているが,シアン化合物やヒ素・重金属のように,明らかに産廃を特定の敷地箇所に埋めたと思しき分布を示しているものもあった.
 実はこれと同じ状態が,今現在も日本中の工場敷地に存在しているのだ.
 すなわち工場敷地,工場跡地というものは,多かれ少なかれ環境汚染物質が埋められていると思ってよい.
 それはほとんど日本の常識と言っていいが,ならばなぜ東京都は,そんな土地に生鮮市場を建設しようとしたのか.東京ガスは,なぜ長年にわたり産廃を埋め続け汚染しつくした土地であることを承知で都に売ったのか.豊洲の土壌環境を破壊した東京ガスの責任,それを知りながら跡地を買った東京都の意図の裏にあったもの,それこそが現在起きている事件について問われねばならぬことなのである.

 ちなみに,私がかつて勤務していた会社も,本当に酷かった.
 私の会社員時代の最後の十年ほど,それまでの品質保証の統括業務に加えて,関東から九州に至る全社の環境保全を統括する立場に就いたのであるが,その時点でまだ工場内の空き地に穴を掘って廃棄物を埋めている工場があって驚愕した.
 以来,私は各工場を毎月巡回して,品質保証と環境保全分野における違法行為の摘発に努めたのであるが,おかげで社内では憲兵のごとく嫌われた.良心の呵責なく違法行為を働く後輩たちがどんどん執行役員になっていく一方,コンプライアンスの旗を振る私を支持してくれた取締役はたった二人だった.
 その会社を退職してからもう何年も経つ.つい四ヶ月ほど前,取締役まで出世した同期入社の男と会ったのだが,そいつは私に「君は当社にはもったいないご立派な品質保証部長兼環境部長様だった」と嫌味を言った.そいつが生産本部長だったときに,異物混入やら表示違反やらの食品衛生法違反で何度か,私の権限で自主回収をやったからである.二人とももう会社を辞めて何年も経つのに,まだ恨んでいるのかこいつは,と思って,絶縁を決めた.もう年賀状もださないことにした.(笑)

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