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2016年8月 3日 (水)

幕末大豆 (一)

 私のブログで,よく閲覧されている記事に《西部開拓豆料理 》と《カウボーイとアルミニウム 》がある.
 前者は,西部劇の中でカウボーイたちがよく食べているベイクドビーンズについて書いた.
 たくさんのブログで,ベイクドビーンズは大豆の料理であると書かれていることに対し,それは間違いであること指摘したものである.(食べてみれば大豆でないことはすぐわかるのに,なぜそんなことを書くのだろう〈笑〉)
 後者は,やはりカウボーイたちがベイクドビーンズなどの食事をするときに,食器にアルミの皿を使っていたとブロガーたちが書いていることについて,それも誤りであると指摘したものだ.

 ブログはブログから作られる.
 というのは言い過ぎかも知れないが,他人が書いた記事を,さも自分の知識経験や調査に基づくかのような書き方 (受け売り,孫引き,引用であることを示さない etc.) をする筆者が多い.
 こういうブロガーたちは,元の情報に関して自分で確認をせずにそのまま書く傾向があり,そのため伝言ゲーム的に情報の歪曲が広まり,最後は大嘘になってしまうのである.
 ベイクドビーンズが大豆料理かどうかなんてことは,嘘記事を書く前にちょっとの手間をかけて Wikipedia【大豆】を読んでから書けば,恥をさらさずに済むことなのである.
 では以下に Wikipedia【大豆】から引用する.

ダイズが伝播後19世紀にかけては、アジア圏以外では重要な作物とはみなされておらず、緑肥や飼料作物としての生産に留まっていた。20世紀に入り搾油用の需要が拡大していった。ヘンリー・フォードは、油脂の採取、繊維・プラスチックの開発目的で大豆農園を経営していた。作物 (油糧作物) として注目されるようになったのは1920年代以降であり、ヨーロッパで食料として初めて収穫されたのは1929年とされる。アメリカで本格的にダイズが栽培されるようになったのは、1915年にワタミハナゾウムシの侵入によってアメリカ南部の綿花が大打撃を受け、それまでアメリカの製油業の中心であった綿実油が不足してからである。ワタに代わる新たな製油材料として、それまでも徐々に栽培を拡大させてきたダイズは一気に脚光を浴びることとなった。1920年代には製油用や飼料用としての需要の高まりにより、さらに大規模に栽培されるようになった。

 ここに簡単に書かれているのは,北米大陸に大豆が伝播したのは十九世紀 (後述) ではあるが,栽培されるようになったのは《1915年にワタミハナゾウムシの侵入によってアメリカ南部の綿花が大打撃を受け、それまでアメリカの製油業の中心であった綿実油が不足してから》だという事実である.
 しかも重要なことは,北米で大豆の栽培が始まった二十世紀以降も,大豆は大豆油の原料または家畜飼料として栽培されてきたということである.アメリカ人にとって大豆は,豆として料理に使う食材ではなかったのだ.(今でもそうである)

 西部劇 (特に昔のテレビ番組) について書くブロガーたちの記述を読んでいると,その一定部分は,実は西部劇の時代,西部開拓時代がいつだったか知らないのではなかろうかという気がする.
 アメリカ独立戦争 (1775年4月19日から1783年9月3日),南北戦争 (1861年4月12日から1865年6月) そして南北戦争直後に始まる西部開拓時代 (1860年代に始まり1890年のフロンティア消滅までの時代区分) は中学校で習う基礎知識中の基礎知識だ.
 そしてこの西部開拓時代が西部劇の主な舞台なのである.

 ちなみに,教科書にはないけれど,ワイアット・アープら市保安官たちとクラントン兄弟によるOK牧場の決闘 (1881年10月26日) がいつの時代の話なのかは古い映画ファンなら知らぬ者はいない.
 これは日本でいうと清水次郎長が当時の「賭博犯処分規則」により静岡県警に逮捕された明治十七年 (1884年) の三年前のことである.(この年の四月に天田愚庵が『東海遊侠伝』を出版している)
 清水次郎長は明治の人物であり,アメリカでいうなら西部劇の時代の人だったと言うと驚く人がいる.このように幕末から明治にかけては,日米の歴史を突き合わせて勉強するとなかなかおもしろいのである.

(続く)

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