ルノワール展
人生ハウツー本とでも言うのか,「成功する人は何事も先送りにせず今すぐやる人だ」とか「お金持ちになる十の生活習慣」とかいうタイトルの本が,電車の車内広告なんかでよく目につく.大抵は紙の書籍ではなく電子本だ.そして著者はどんな人なのか,聞いたこともない名前だ.
いや,そういう本や著者を貶そうというのではありませぬ.中身を読んでないからね.
たぶん嫌になるくらいホントのことが書いてあるのだろうと思う.
先送りにしないことが成功の秘訣って,その通りだと思う.
雑学テレビ番組の雄,「今でしょ」で有名な林修先生もそんなことを言ってた.
しかるに私はというと,何事もすぐやることのできない人間なのである.
国立新美術館で開催されているルノワール展は,四月から始まってこの八月二十二日までだ.明後日の月曜日で終わる.
この期間中,会場がどれくらい混雑していたかということが,「混んでます」というツイート数でおよそわかるようなのだが,そのデータを見ると,展示が始まってから暫く経った五月と六月はそれほど混んでいなかったようだ.
あとから考えれば,そりゃそうだよね,という結果である.
それなのに,私はずるずると先延ばしにして観にいかなかった.
そしてはっと気が付いたら終了の一週間前になっていた.
これはいかんと思って先日の火曜日,朝イチで国立新美術館へ行ってきた.国立新美術館は火曜日が休館日だが,このあいだの火曜日はルノワール展終了間際だからであろうか,開館されていたのである.
結果からいうと,混雑してはいなかった.絵を観るにはまあまあ快適の部類の込み具合だった.
例えば『ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会』の前にはロープが張ってあり,絵のすぐ前は「一列に並んで立ち止まらずに歩きながら観る人たち専用のレーン」で,ロープの外側 (絵から少し離れた位置) は遠くてもいいからじっくり鑑賞したい人たちの場所という具合に分けられていたのだが,「立ち止まらないレーン」はスカスカに空いていたのである.
「じっくり鑑賞エリア」に立っていても,「立ち止まらないレーン」は人がいないのだから鑑賞の邪魔にはならない.それで私は「じっくり鑑賞エリア」で長いこと立ってこの名画を観たのであった.
そんな状況だったから,会場内は逆行可能で,一度観た絵のところにまた戻って観たりもできて,通常休館日の火曜に出かけたのは正解だったかもしれないなと思ったことであった.
さて今回のルノワール展の公式サイトに書かれている惹句を引用すると以下の通り.
ルノワールの全貌を代表作とともに辿る!
印象派時代の最高傑作
《ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会》初来日!
《都会のダンス》&《田舎のダンス》
45年ぶりにそろって来日!
円熟期の代表作
《ピアノを弾く少女たち》もやってくる!
最晩年の知られざる大作
《浴女たち》初来日!
ということで,見応えある絵画展であった.
それなのに,夏休み中の女子中学生たちは,有名な作品の前をスマホに目を落として入力しながら,絵の前を一顧だにせず通り過ぎていくのであった.美術の先生に,観にいくようにと言われたから来ただけなのかな.
ま,君たちはまたいつかその気になればパリに行けるからいいんだけどね.
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