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2016年7月 1日 (金)

ソウルフード (五)

 信濃の国は古くから蕎麦が旨い土地として全国に知られて来た.
 私の知人で,大学に受かって東京に出てきて,初めてうどんを食べたという男がいる.それくらい圧倒的に,長野県人はうどんよりも蕎麦を好むのであるらしい.
 一方,信濃の隣国である上州は,県の北部は蕎麦の産地であるから,県央県南の地域でも蕎麦も食わないことはないが,日常食べるのはうどんの方が多い.うどんは,関東地方全体の食文化の一つであるとしていいだろう.
 ところで群馬県の前橋市から桐生市にかけての一帯では,全国的には珍しいといっていい,平打ちのうどんを昔から食べてきた.これがいつ頃からあるものかは定かでないが,そのうどんを「ひもかわ」という.
 Wikipedia【ひもかわ】から下に引用する.

ひもかわまたはひもかわうどんとは、幅が広く薄い日本の麺、ならびにその麺であり、群馬県桐生地域の郷土料理である。一般的なうどんとは形が異なり平たい形状ために平打ちうどん (ひらうちうどん) とも呼ばれる。麺の幅は5.0mmから15cmを超えるものまで様々なものが存在する。日本農林規格 (JAS) 上ではうどんの一種とされ、干麺に関しては後述のとおり、特別に「ひもかわ」と記述してもよいとされている。平たいうどんは日本に数か所存在し、各所で名称が異なるものが存在しており、代表的な例として愛知県の「きしめん」や岡山県の「しのうどん」などがある。

 この「ひもかわ」は,愛知の「きしめん」よりもう少し幅広で,かつ厚みが薄いのが特徴である.食べ方としては,元々は「おっきりこみ」に入れて煮込んで食べたものである.
 Wikipedia【ひもかわ】には《うどんと比較してコシは非常に弱い》と書かれているが,加水量と塩の加減で,「きしめん」のようにコシの弱いものにもできるし,コシを強くもできる.
 これが「ひもかわ」のざっとした説明である.見た目はこれを御覧頂きたい.

 さて,どこにも奇を衒う人はいるもので,この「ひもかわ」という郷土食が,現在はこんな妙なものに変えられてしまったのである.
 関東のうどんの歴史からすれば,創業わずか四十年とかいう新参の「ふる川」という桐生市にある店が,元来は幅が15mmくらいだった「ひもかわ」を,十倍ほど広い幅の麺帯にしてしまった上に,これも「ひもかわ」であると勝手に称して商うようにしたのである.
 またこの食べにくい妙な食い物を,もてはやす軽薄な者が群馬には多く,今では「ひもかわ」というと,この馬鹿みたいなものが有名になってしまったのである.

 県観光行政が「おっきりこみ」を売り出し,焼きまんじゅうを笹の葉に盛りつけて商売するやつが現れ,桐生あたりの愚劣な商魂の店が「ひもかわ」を全く別物に歪めてしまった.群馬県人としては県民性の愚かさを嘆くしかない.
(続く)

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