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2016年7月23日 (土)

大輪の花 大輪の花火

 先日の木曜日のテレビ番組,毎日放送『プレバト』を観たら,この番組にほとんどレギュラー講師として出演されている俳人夏井いつき先生の「俳句の才能査定コーナー」のお題は「花火大会」であった.
 ほかの芸能人の句は省略するが,査定される出演者の一人,ミッツ・マングローブの作品は

大輪の轟き 焼けて 夏が散る

だった.
 この句の「大輪」について,夏井いつき先生は繰り返し「だいりん」と発音した.
 言うまでもなくミッツ・マングローブは,打ち上げ花火の「菊」や「牡丹」を,生花に見立てて「大輪」と表現したのである.
 であるとすればその読みは「たいりん」の一択である.
 しかるに夏井先生はこれを敢えて「だいりん」と読んだ.

 周知のように「大」は,続く語が何かで読みが変わる.
 大英帝国や大宇宙のように呉音が続く場合は「だい」と読むのが普通である.
 また大安や大気汚染のように漢音が接続されていると「たい」と読むことが多い.
 上のことは,「一般的に」の話であり,そう読まねばいけないというルールがあるわけではない.
 しかも「輪」は呉音も漢音も「りん」だから,「大輪」は「たいりん」でも「だいりん」と読んでも構わないことになる.
 にもかかわらず私たちが「大輪の花」を「たいりんのはな」としか読まないのは,それが習慣だからである.(「だいりんのはな」との読みを挙げている小型国語辞典がないわけではないが)

 では夏井先生が,花火を表現した「大輪」を敢えて「だいりん」と読んだのはなぜだろうかと考えてみた.
 そうしたら,夏の夜空に打ち上げられて大きなどーんという音と共に開いた雄々しい菊花火や牡丹花火は,「だいりん」と呼ぶのが相応しいかもしれないなあと思えてきた.
 ミッツ・マングローブの一句,夏井先生による添削は

轟きの大輪 焼けて 夏が散る

であった.
 とどろきのだいりん やけて なつがちる.
 すなわち「轟き」という大きく強いニュアンスの語から続く場合の読みは「だいりん」がよろしかろうというのが,夏井先生の感性と思われたのである.

 しかし,菊や牡丹の花火の星が轟き開いて数秒後に,ちりちりと焼ける音と共にはかなく火球が消えていく情景こそが,ミッツ・マングローブが「夏が散る」とした句意と思われ,それ故に私は,ここは花火をやはり生花にたとえて「たいりんのとどろき」と言いたい気もするのである.
 「大輪」をどう読むかということ.娯楽番組とはいえ,なかなか面白いことであるなあと思ったことだった.

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