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2016年6月25日 (土)

ソウルフード (二)

 焼きまんじゅうとは何か.
 言葉で説明するほどのものではない.画像一覧を見ればどんな食い物か,一目瞭然とはこのことだ.
 小豆餡の入っていない酒饅頭「のようなもの」四個を串に刺して焼き,これに濃厚な味噌ダレを塗ったものである.
「のようなもの」とは,普通の酒饅頭はふんわりとしたものであるが,焼きまんじゅうに用いる酒饅頭は,かなりもっちりとしている.これについて Wikipedia【焼きまんじゅう】には次のようにある.

焼きたての温かいうちは軟らかいため食べやすいが、冷めると水分が抜けてしまい、噛みちぎれないほど固くなる。このため、焼きたてで冷め切っていないものが珍重され、お土産用等も、焼く前のモノに別にパッケージしたタレを添えて、自宅で焼く事を前提とした形で販売している。

 確かに冷めると「噛みちぎれないほど固くなる」といって差し支えないが,そもそも焼きまんじゅうは,昭和三十年代から四十年代にかけて前橋市や高崎市などローカルな都市部全域に存在した「焼きまんじゅう屋」(人気コミック「孤独のグルメ」に登場することは以前書いた) の店に入り,焼きたてを食べるものだったのである.従って冷めたらどんな食感になるかなんぞは最初から考えてなんかいないのである.
 ちなみに,「焼きまんじゅう屋」は食堂ではない.この点を「孤独のグルメ」作者は誤解しているようだ.
「焼きまんじゅう屋」で商うものは他に,申し訳程度のキャベツしか入っていない焼きそばや菓子パン,ラムネ,夏にはかき氷などであった.子供が集まる駄菓子屋で婆さんが焼いて食わせていることもあった.
 従って上の引用に《焼きたてで冷め切っていないものが珍重され》とあるのは大嘘である.焼きたてを食べるのが大前提の食い物であり,焼きたてでなければとても食えた代物ではないのであり,つまり焼きたてが当たり前であるからして,「珍重」とはまた何をたわけたことを書いているのか.この箇所の筆者は群馬県人ではないか,あるいは日本語を知らぬか,どちらかである.
お土産用等も、焼く前のモノに別にパッケージしたタレを添えて、自宅で焼く事を前提とした形で販売》とあるが,昭和四十年代の前橋か高崎に知恵者がいて,焼きまんじゅうを化粧箱に入れてきれいに包装した土産物を,前橋市の繁華街にあったデパートで売り出したのである.
 私が大学生時代に帰省した折,前橋在住の姉から土産用焼きまんじゅう発売の話を聞き,あんなものを土産にしてどうするのかと驚いた記憶がある.
 どうやらこの頃から,焼きまんじゅうは,群馬のソウルフード化の途を歩み始めたようなのである.

 随分前のことになるが,大阪出身の推理作家高村薫さん (昭和二十八年生まれ) が新聞紙上のエッセイで,たこ焼きが大阪の食べ物の代表格のように言われるがそんなことはないと書いていた.ごく普通の家庭に育ったらしい高村さんは,たこ焼きなんか買い食いしてはいけないと親に躾けられ,実際に子供の頃は食べたことがなかったそうである.
 そんなマイナーな怪しい食い物がいつの間にか大阪のソウルフードになってしまった.

 東京の「もんじゃ」もそうである.私は実見していないが,東京人の知人が言うには,小汚い「もんじゃ屋」あるいは駄菓子屋の店内に置かれた,油が黒く焼きついた鉄板で,子供たちがわいわい遊びながら食ったものであるという.それがいつの間にか小奇麗な「もんじゃ屋」が月島あたりに立ち並んで,テレビのグルメ番組に取り上げられて観光客がやってくるようになってしまった.
 たこ焼きや「もんじゃ」のように全国区ではないが,焼きまんじゅうもいつの間にか群馬ローカルのソウルフードに成り上がったのであった.
(続く)

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