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2016年6月11日 (土)

「あたたかさ」という企業イメージ

 今では余り耳にしなくなったけれど,かつて「優しさ」という流行語があった.
 この「優しさ」が一体何を意味しているのか,流行の最中でも曖昧なままであった (だからただの流行語だったのだ) のであるが,例えば「ただ,あなたの優しさが怖かった」(南こうせつ「神田川」) のように,とりあえず「優しさ」と言っておけば中身のない歌が一つできてしまうというところがあり,商業主義的ソングライターが愛用したものだ.

 「優しさ」ほどのはやり言葉ではないが,「泣ける」というのも「優しさ」と意味的に近いところにある.
 ネット上を散策していて最近目にしたことに,「泣けるCM」がある.
 何のことかというと,味噌の大手であるマルコメが暫く前から放映しているアニメCMである.
 同社のCMでは「料亭の味 カップみそ汁 夜食篇」が評判を呼んだが,今放送中の新作「料亭の味 液みそ 上京篇」が泣けるCMとして大変に好評のようである.(これまでの同社CM作品はここで閲覧できる)

 それらが本当に「泣ける」かどうかというと,それらのCMのストーリーがありがちな話であることもあって,まあそれほどでもない.
 しかし,CM制作にあたってのコンセプトが実に明快であることは確かだ.

 同社のサイトから「料亭の味 カップみそ汁 夜食篇」のキャプションを以下に引いてみる.
みそ汁は、“あたたかさ”という情緒的な価値を持っていることを、娘を思う父の姿を通して表現しているアニメーション作品です。

 同じく「料亭の味 液みそ 上京篇」はこうだ.
これまでのCM同様、みそ汁の持っている“あたたかさ”という情緒的な価値を、息子と母の姿を通じて表現したアニメーション作品です。

 つまりここでマルコメ株式会社は,個別商品の宣伝広告を通じて,同社の企業イメージは「あたたかさ」であると言っているのである.
 そしてそれはきちんと成功していると思われる.天野祐吉が存命なら高く評価したのではなかろうか.

 商品CMの総体が企業イメージであることは論を待たない.
 であるからして,マルコメと同じ業界の永谷園が自ら消費者に訴える企業イメージは「汚らしさ」である.
 このCM↓をみれば,この会社の経営者がどれだけ下品な音に鈍感であるか,一目瞭然である.
 生みそタイプみそ汁あさげ「あさげ時々めし」篇
 飯を空気と一緒に吸い込んで口に入れ,すぐに味噌汁をズブズブと汚らしい音を立てて啜り込み,咀嚼して油ぎったオヤジのように「あー」と声を上げる.
 そんな豚の如き食い方をするのなら,最初から味噌汁ぶっかけ飯にしろ,飯食ってるときに「あーっ」て言うなっ,この下司野郎っ.はあはあ.

 味噌汁を汚らしく啜り込んだ挙句に「あーっ」と言うことを良しとする点では,味の素株式会社も永谷園といい勝負である.
 《小栗旬 ほんだしCM

 そもそも味の素という会社は,食品業界のトップ企業でありながら,これまでロクなCMを遺してこなかった.
 たった一つの秀作が,後に美空ひばりの代表曲を生むきっかけとなった
「美空ひばり 愛燦燦」篇 
であるが,今ではこんなCMを企画できる人材は同社にいないだろう.

 余談であるが,味の素の元社員と飲んでいたら,「ほんだし」のCMには
♪かつお風味のふんどし~
という替え歌があったそうである.
 褌が鰹風味なのである.どんな褌だ.風呂に入れと私は言いたい.

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