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2016年5月 5日 (木)

孤独のグルメ

 昨日『孤独のグルメ』を話題にしたので,Kindle 版のコミックを買って少し読んでみた.

 よくわからない作品だというのが感想.
 食い物を正面から題材にした薀蓄漫画といえば『美味しんぼ』だが,これは巻数を重ねるに従って説教臭くなり,さらにはフードファディズム的なあほらしさも加わって全くおもしろくなくなった.
 食い物薀蓄漫画とは少し趣向が異なるのは『深夜食堂』.これはテレビドラマの評判がよかったと思う.
 その他にも食い物漫画は数々あるが,『孤独のグルメ』はそれら多くとは異なり,原作者の食い物に対する「熱」が全く感じられない奇妙な味の作品だ.
 主人公の井之頭五郎は,店で何を食べても,別段食レポをするわけでもなく,淡々と飯を食ってそのまま店を出ていくのだ.

 作画は谷口ジローで,絵は弘兼憲史調.ただし井之頭五郎は,やたらと腹を減らしてばかりの風采の上がらぬ個人事業主である.弘兼の島耕作は,見た目はいいが頭は悪く,仕事はできないが世渡り上手で出世階段を登り詰め,女にモテて下半身がだらしない男だが,井之頭五郎はそういう人間には全然見えない.五郎は好感度抜群だ.こらこら.

 なのに第5話「群馬県高崎市の焼きまんじゅう」では,小雪 (「さゆき」と読む) という女優 (女優なのにまるっきりのオッサン顔で気持ち悪い〈←新装版 p.49 の右肩のコマ〉) とパリで別れたりしていて,似合わないことこの上ない.もう少しいい男に描かれれば,女にフラれても様になるだろうが.というか,オッサン顔の女優を先に何とかして欲しい.

 さて,この「群馬県高崎市の焼きまんじゅう」で井之頭五郎は,「やきそばクリタ」という店に入る.この店の入り口の横には「焼きまんじゅう」と書かれた立て看板がある.
 これを見て井之頭五郎は

しかし妙だぞ……立て看板は焼きまんじゅうなのに……本看板は焼きそばとはいったいどっちがメインなんだろう? 焼きそばと焼きまんじゅう……不思議な組み合わせだ よし! その組み合わせを試してみるかな

と思う.
 ところがこの店は看板と異なり,おかみさんの体調が悪くなったために人出が足りなくて,焼きそばは作れないと店の主人が言うのであった.

 と言う具合に話は進行するのだが,それは横に置いて,焼きまんじゅうと焼きそばの組み合わせを私は懐かしく思う.ここでいう焼きそばは,中華料理の焼きそばではない.キャベツしか入っていない,高校生が小遣いで気軽に食べることのできる軽食のソース焼きそばのことである.
 私が高校生だった昭和四十年頃の群馬県前橋市.
 あちこちの中学や高校の前にはよく生徒相手の食べ物屋が商売をしていた.牛乳や菓子パンや,夏になればかき氷が売り物であったが,焼きまんじゅうと焼きそばは定番であった.学校の前だけでなく,市内の商店街や公園の中の茶店にも焼きまんじゅうと焼きそばを売る店はあった.
 焼きまんじゅうと焼きそばの組み合わせには,両方とも軽食であるという以外には何ら共通する意味も趣向もないのだが,しかしだからといって,関係のない食い物を同じ店で売るのは不思議だという井之頭五郎の感覚は私には理解し難い.そんなことをいったら大衆的な蕎麦屋にカツ丼があるのも不思議だということになる.それのどこがいけないのかわからない.
 もっとヘンなのは,井之頭五郎が頭の中で

それに……あのまんじゅうの中にはアンコが入っているわけで……まんじゅうとアンコという組み合わせがなんだかデタラメすぎて……頭が混乱する

と考える場面だ.
 まんじゅうとアンコという組み合わせがなんだかデタラメ,とはどういうことだ.まんじゅうにアンコが入っていて何が悪い.頭が混乱するのは読者のほうだ.

 というわけで,買ってはみたが『孤独のグルメ』は読み進むのが辛い作品である.

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