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2016年5月 6日 (金)

藤沢 かつや南口店

 先月末のこと.財布の中の不要なレシートをゴミ箱に捨てようとしたら,その中に有効期限が四月三十日の「かつや」の百円割引券があるのを見つけた.
 たぶん一ヶ月くらい前に,かつやでカツ丼を食ったときにもらったものだ.期限切れの日に目にとまったのは,これも何かの御縁であろう,かつや藤沢南口店へ昼飯を食いに出かけた.

 先日,辻堂のすもも食堂で昼飯を食べたときに味噌汁を豚汁に変更してもらった.すもも食堂の豚汁は味噌汁とあまり変わらない量であり,その時に思ったのは,豚汁は大きな椀とか丼で食べたいものだということ.せっかくの具沢山汁なのだから,普通の味噌汁椀では私は物足りない.

 最近の首都圏の定食屋,例えばやよい軒大戸屋のような業態の店では「豚バラ生姜焼き定食」とか「おろし鶏から揚げ定食」など,店側が設定した定食をたくさん献立に並べ,その中から客が選択する形である.
 しかし昔の定食屋は,店内の棚に並べられたおかずを客が勝手に組み合わせて盆に載せ,オリジナルの定食を作るのが普通だった.だから,塩鮭と刺身と焼いた鱈子をおかずにして,これに丼飯とお新香を付けて味噌汁なし,なんてこともできた.貧しい学生の場合は,飯と味噌汁とお新香ということもあった.これが赤貧青年の最終兵器「お新香定食」だった.

 話は横道に逸れるが,お新香定食で思い出したことがある.
 阪急デパートが開店してすぐの昭和五年頃,世間は大不況 (昭和恐慌) で,大阪梅田の近辺で働いていた会社員は,デパートの大食堂にきて昼飯を食うときにライスだけを注文し,これにテーブルに置いてあるウスターソースをかけて食べていたという.
 これに困った大食堂担当の幹部が,この手の客を締め出そうとしたところ,阪急社長の小林一三は反対し,逆に付け合わせの福神漬けを増量して「ライスだけのお客様歓迎」と書いた貼り紙を食堂入口に出させたという.これは小林一三の顧客志向を物語るエピソードとしてよく知られ,花森安治の『一銭五厘の旗』にある.
(余談だが,NHK朝ドラの影響でか,トンデモ系ライターの船瀬俊介が花森安治関係本を出した.船瀬があまりにも機を見るに敏なので悲しいくらいだ)
 昔の定食屋のおばちゃんは,まるで小林一三みたいに,貧乏学生が食べるお新香定食にはお新香を増量してくれたりした.昭和四十年代,東京の高円寺に住んでいた頃の思い出である.

閑話休題
 昔の定食屋では,何を食うかの自由度が高かったという話だ.
 そういう店では,豚汁は御馳走なおかずの一品であり,豚汁と丼飯と漬物で立派な食事になるのであった.
 この画像一覧を見れば一目瞭然であるが,豚汁は味噌汁ではなく,おかずなのである.
 だが残念なことに,藤沢駅周辺でこのような正調豚汁は,かつやにしかないようである.
 それが,これだ.
 大ぶりの椀に盛られた豚汁にヒレカツが二枚も付いて,たったの税込七百二円.
 しかも割引券使用で百円が引かれて,六百二円になる.
 コスパの良さも嬉しいが,大きな器に盛られて湯気の立つかつやの豚汁は,たいへん満足感が大きかった.かつやで飯を食うときは次回も豚汁定食にしようと思う.

20160507a

 ところで,かつやはレジで代金を払うと次回の百円割引券をくれる.
 つまり一日三食をかつやで食う常連客は,三百円も一見さんよりお得なのである.一ヶ月なら九千円,一年なら一万円以上も得をする勘定である.かつやに住み込みの客になる勇気がある人はどうぞ.

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