« 永谷園が嫌いだ | トップページ | 会津の旅 (十二) »

2016年4月15日 (金)

仁和寺

 テレビ東京の『和風総本家』で時折,料理人を志して地方から上京し,ホテルのレストランや料亭の厨房で修行に励む若者の姿が紹介されることがある.
 それを観ていると心底思うが,ちゃんとした料理人の世界は苛酷なものである.会社員の趣味がこうじて始めた暇な蕎麦屋なんぞとはわけが違う.

 料理人の修行時代は,あからさまに言えば労働基準法もへったくれもなく,朝は普通に仕事を始めるとしても,夜は客の食事時間帯が過ぎる九時十時になるまで働き続けだ.
 時間外労働のことについては労基署の立入が心配になるが,一人前になれば「料亭○○で修行した」腕と経歴は一生ものの財産になるのだから,お上に「おそれながら」と訴え出る見習い職人はいないのだろう.

 私自身の会社員時代のことを振り返ってみると,三十代の時は月に二百時間くらいの時間外労働は平気だった.しかしこれが四十代,五十代になると気力も体力も右肩下がりで,いつしか「お先に~」と言って部下より早く帰るようになった.時代が某ドリンク剤のCM「24時間戦えますか」ではなくなっていたこともあるが,やはり,辛い修行や長時間勤務に耐えるには若さが必要なのだと思う.

 さて四年近く前まで仁和寺 (京都市右京区) 境内の宿泊施設「御室会館」で働いていた元料理長の男性 (五十八歳) が,過酷な労働で精神疾患を発症したとして仁和寺に慰謝料と時間外手当の支払を求めた訴訟の判決があった (京都地裁,4/12).
 詳細は新聞各紙の報道に譲るが,仁和寺によってこの男性が強いられた労働は極めて異常なものである.三年前に労災認定もされているし,若者でも耐えられない労働条件である.ブラック企業でもこれほど酷くはないだろう.今回の判決が男性のほぼ全面勝訴となったのは当然と思われる.

 しかし勝訴とはいえ,若い時の修行ならともかく,元料理長の男性は人生働き盛りの十二年間を過酷な労働で失い,後遺症が残った.
 すなわち仁和寺は寺にあらず.鬼の住みかである.必ずや仁和寺に仏罰あるべし.

|

« 永谷園が嫌いだ | トップページ | 会津の旅 (十二) »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 仁和寺:

« 永谷園が嫌いだ | トップページ | 会津の旅 (十二) »