幼児退行してきました
今週月曜日の記事《幼児退行 おいおい》に,私は次のように書いた.
《辻村さんの煽り《私たち人間が重ねてきた時間の重みを舐めるなよ!》に私は浮き足立って,『新・のび太の日本誕生』を観たくなった.》
《二十年前,うちの息子や娘が大きくなって,もう親と一緒になんか映画を観に行かなくなってしまったあと,私は一人で藤沢の映画館へジブリの作品を観に行った.『もののけ姫』だったかな.そしたらチケット窓口の女性に「これは子供の映画ですけど,いいですか?」と言われた. (--;)屈辱.
そういうトラウマがあるので,観に行こうか行くまいか今悩んでいる.ネットでチケットを買っても,しかしモギリのお嬢さんはいるから,その眼が「なにこのじじい」とか言ってたりするだろうと思うと怖くて行けない.》
それでここ数日,辻堂のテラスモールにある 109シネマズのチケット販売状況をチェックしていたのだが,火曜日まで売れていたチケットが水曜日,木曜日と,売れ残ったようであった.
どうやら満席の子供たちの中で『新・のび太の日本誕生』を鑑賞しなくても済むようだったが,それでも用心して木曜日の夜,翌金曜日最初の上映回 (10:00~) のチケットをネット購入した.
昨日朝十時少し前に 109シネマズに行ったら,ロビーには開演待ちの人たちが十数人,所在無げに立っていた.
やがて上映案内があり,掲示パネルにシアター番号が二つ表示された.すると待っていた人たちがゲートにぞろぞろと移動を始めた.
おお,二つのシアターが同時に開場だ.これならロビーにいる他の観客の視線を浴びずに何食わぬ顔で『新・のび太の日本誕生』に入館できる.
ところが,ゲートに立っているモギリのおねえさんにチケットを渡すと,彼女は横に置かれた箱から何かゴソゴソと取り出して,私に手渡した.
どうやら 109シネマズは,ドラえもん映画を見に来た不審な爺が何食わぬ顔で入館するのを,他の観客にもわかるように識別告知する方針であるらしかった.
これが不審爺識別アイテムだ! 防犯カラーボールみたいなものか!
後に並んでいたカップルに見られたぞ!
さて『新・のび太の日本誕生』が上映されるシアター6に入ると,観客は私だけだった.
午後になると,半日授業を終えた小学校低学年の子供が来るかも知れないが,さすがに朝一番ではそんなことはないのだ.
と思ったら,三歳児くらいの小さな子を連れたママさんが入って来た.そして私が購入したシートから一つ間をあけて座った.
ガランとしたシアター6の観客は私を入れて三人しかいないのに,私,空席,三歳児の女の子,ママさん,という横並び状態なのである.
そのママさんは,こんなにたくさんあるシートの中で,どうしてその席を買ったのか!
もしかして私に好意を持っているのか!
違うような気がするが!
で,物語のクライマックス.
ドラえもんは二十三世紀から来た歴史改竄者ギガゾンビと戦う.そして,あのヨーダとシスの暗黒卿ダース・シディアスの戦闘シーンを彷彿とさせる場面で,ドラえもんは叫ぶ.
偽物の歴史は 本物の歴史に勝てないんだ! (言い回しは少し違うかも知れない)
おお,このドラえもんの台詞こそ,辻村深月さんが週刊文春に
《強敵ギガゾンビとの最後の戦いに注目して欲しい。私たち人間が重ねてきた時間の重みを舐めるなよ! と言わんばかりの脚本に、劇場で鳥肌が立ちました》
と書いたことなのであった.
ラストシーン.
のび太が,一緒に戦ったペットのペガサス,グリフォン,ドラゴンたちと悲しい別れをするところで,三歳児の女の子はとうとう泣き出した.
上映が終わって照明がついてもママさんは席を立たず,シクシク泣いている少女の肩を抱いてなぐさめていた.
のび太はやさしい子だから,君がずっとのび太のことを忘れないでいるといいね.
そう思いながら私は,あふれる涙をこらえつつシアター6を後にした.
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